幼馴染NTRた彼は元召喚勇者です(仮)

生虎

第1話

学校の屋上で黄昏たそがれる俺【忠野ただの 茂武しげたけ】は昨日、人生最大の凶事に見舞われた。

その凶事の名を『NTR』と言う。

幼馴染で恋人【貴干たかち 紗姫さき】と大親友【為野ための 裕斜ゆうた】が彼女の部屋で組体操をしていた。

紗姫さきとは家が隣同士で家族同然の付き合いをしているのでフリーパスで彼女の自宅訪問を幼少の頃からしている。

勿論、彼女も同じく家にやってくる。

昨日は紗姫の部屋に忘れ物を取りに行った。

そこで彼女の部屋より淫靡いんびな声と音が聞こえてきた。

「あん、あん、パン、パン」とことに及んでいる事は間違いないので、この時点で彼女の浮気確定。

誰かと浮気しているか確認する為、急ぎ自宅へと戻り彼女の家の玄関が見える位置で待機すること1時間と半程度、玄関先から出て来た間男君はであった。

玄関先で紗姫さき裕斜ゆうたがキスをして別れるところまで見て膝から崩れ落ちた。

ショックで学校を休もうとしたが、母上様より「病気、忌引き、不慮の出来事以外での休みは認めん」と言われ「不慮の出来事です」と言って状況説明したら、「紗姫さきちゃんがね~まぁ学生のうちは特に過ちもある。誘惑も多いしね~子供だしね~でも、許すか許さないかは自分で考えて選択しな。でも不慮の出来事としては認めない」と言われ渋々学校へ来たが、同じ学校の同じクラスに所属する二人がいる教室へ行く気力は無く屋上で黄昏ている。





「神は死んだ・・・」


答えるものは誰も・・・



「死んでません!勝手に殺さないように!!」


居たよ、おい




振り向くと奴がいた。

ビシッと決めたスーツを着込んだ美青年がそこに立っていた。




「あ~私こういう者です」

「あ・・・どうもご丁寧に」



彼は黒い皮の名刺入れより1枚の名刺を取り出し両手を添えて丁寧に俺に渡してきた。




【神】



名刺の真ん中には大きく神の文字、その文字の上に小さく英語で「GOD」かみと記載がある。

他に幾つか文字らしきものが書いてあるが読めない。



何この人?

「人ではありませんよ。神です」

え?俺、しゃべってないが・・・

「読心術とでも思ってください」

あ~ハイ、解りました。解らんけど・・・

「了解したと言う事でお話進めますね。あなたは今、傷心でこの世界に居たくないでしょう?」

・・・

「無言は肯定と捉えます」

いやいや、ずっと無言ですが?

「心読んでますから(ニコッ)」

ああ、もういいです。ハイハイ居たくないです。居たくないです。

「重要なので2回言いましたね。そんなあなたに朗報です。この度あなたに異世界旅行をプレゼントします!!何と勇者待遇のオマケ付き!!」

「はぁ~~~!!」

「やっと言葉を発されましたね(ニコッ)」

「え、如何いう事?」

「では今から詳しくご説明します」




神を名乗るこの男が言うには、彼の管理する異世界で魔王と言う名のバグが発生したらしい。

魔王は現地人での対応が難しい為、勇者召喚法なる神々のルールに沿って勇者となる人材を派遣できるらしい。

少し前は勝手に召喚したり、死亡確定者を連れて行ったりしていたらしいが、不備が多すぎると言う事で、現在、勇者召喚法なる神々のルールに乗っ取って召喚者に説明し了解した者だけを召喚しているらしい。



「勿論、魔王討伐の成功の際には報酬を用意しております」

「お受けしたいのですが、期間はどれ位ですか?」

「こちらでの時間ですか?向こうでの時間ですか?」

「どういう事ですか?」



現地の時間は魔王を倒すまでとなる為、何年掛かるか本人次第で平均5年~8年とのこと。

そして、こちらの世界での時間は成功報酬の一環として幾つか選べるらしい。

召喚10分後がお勧めだが、最大で1年前に戻せるらしい。

勿論、向こうでの年月と同じだけ時間を進めた状態で戻ってくることも可能だが、その間行方不明となる為、一番お勧めできないとのこと。

10分後戻しの特典として召喚先異世界で得た能力の10%の能力付与と記憶の改竄かいざんをしない事らしい。

過去に戻す際は記憶の改竄かいざんして神と会ったことや勇者召喚の事を消すらしい。

失敗した場合は体から再構築して10分後に同じく記憶消して元通りの生活らしい。

デメリットはほぼ無いと言ってよさそうだ。

記憶操作とか怖すぎるのでお勧めを選択して俺は神を名乗る美青年に見送られながら異世界へと旅立っていった。

「アルバイトみたいなものですよ」と神は言うが、絶対に違うと思う。



「良い傷心旅行を、それと魔王討伐アルバイトも忘れない様に!!」




神が最後に述べたセリフを最後に俺の姿は掻き消えた。




10分後、俺は帰ってきた。

結局、魔王討伐アルバイトは20年の月日が掛った。

魔王が事さらに強かった訳ではなく、向こうでの冒険に俺がドはまりしてそれ程の歳月を掛けてしまった結果である。

時間が掛かり過ぎと言う事で途中で聖女と賢者と聖騎士の3名が追加召集されてきたことはご愛敬あいきょうである。


「俺は戻って来たぞ!!」

「お帰りなさい(ニコッ)」


神がお出迎えしてくれた。

時間が掛り過ぎとのお叱りを受けたが、他にも召喚案件を片付けていたらしく結果には満足しているとのことでお褒めの言葉をいただいた。

追加のボーナス特典として、幼馴染の元彼女と元大親友の浮気の証拠一式を授けられた。

流石に20年間のブランクがあることを危惧したが、勇者の10%の能力はそれをモノともしないとのことで安心するようにとのお言葉をいただいた。


「それではお疲れさまでした。これで雇用契約を解除しますが、大きな能力を得た事により色々と状況は変わりますのでご注意の程を!!では!」


神は忽然こつぜんと消えていった。

手に残る浮気の証拠と俺の記憶だけが神の存在を証明している。

20年の歳月ですっかりとNTRの傷は癒えたので、復讐とかよりも興味が無くなってしまったが、あいつ等の相手をするのは面倒臭いので証拠は有効活用させてもらうかもしれない。


「おし!冒険も楽しんだし、今度はアオハルするぞ~」


俺は晴れやかな気持ちで奴らの居る教室へと足を向けた。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ご報告です

主人公を裏切った大親友の名前の文字が誤字でしたので修正入れます。

偽野→為野


イチモンジ・ルル(「書き出し大切」企画)さんよりルビの振り方教えて頂いたので順次入れて行きます。


修正

そこで彼女の部屋より【隠微いんび】な声と音が聞こえてきた。→【淫靡いんび

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