第6話

裕斜ゆうたからメッセージアプリ等で連絡が回され関係者一同が集められた。

人数はクラスだけに止まらず、中々の大人数になった模様。

議題は勿論、俺への誹謗中傷の謝罪、書込みを削除、謝罪文の掲載等々の生徒会室で話し合われた内容である。

会議は紛糾ふんきゅうしたらしい。

裕斜はかたくなに「俺は悪くない」と言ったらしいが、貴千たかちさん(もう赤の他人として名字さん付け)が号泣しながら自分たちの方がNTR行動をして浮気していた事実をゲロったのだ。

中でも町田何某なにがしは裕斜に詰め寄り罵詈雑言ばりぞうごん、貴千さんにはビンタをかまし絶縁宣言と大暴れしたらしいがどうでもいい、閑話休題おしまいである。

裕斜は「モブ《茂武》がムカついた」「幼馴染で恋人を寝取ってやって気分最高だった」等々最後は開き直って俺への恨み言等々を吐きまくり、会議の場からご退場となった模様。

結果、全会一致ぜんかいいっちで俺への誹謗中傷の謝罪、書込みを削除、謝罪文の掲載等々を行うとのことで、俺の完全勝利となった。

クラスカーストトップの為野ためのに中位から誹謗中傷で最底辺に落ちた俺が勝利したことで一部から今回の出来事を『モブの変』と呼ばれているようだ。

「三日天下になってしまえ」と最近、天音と仲良くなった俺に嫉妬しっとした男子どもが絡んでくる様になった。


裕斜がひど過ぎたのか一部貴干たかちさんに同情する者もあらわれた様だが、俺からすればもうどうでも良いことだ。

本当に終わった関係だなと傷心異世界旅行に招待してくれたあの異世界の神に感謝しかない。

まぁもう会う事は無いのだろうが、今度会ったらお礼を言おう。



今まであった全ての問題が片付いたようで俺の生活はいでいた。

変化したのは、完全に居場所が無く完全ボッチ飯を堪能たんのうしていた裕斜が転校していったことだろう。

「昨日、為野は転校した。本人の強い希望で事後報告のみとなった」と御吏ごり先生がHRで伝えた。

それにしても、この先生言いながらマッスルポーズとか取るのだがキャラが鋭過ぎて対応に困り皆スルーしている。

それから、貴千さん・町田何某は一応復縁したようだが、俺に微妙に絡んでくるようになった。

正直言ってしまえば目の前でハエが飛んでいる位鬱陶うっとうしいが、マジ謝罪して来ても無関心な俺にとっては「はいそうですか、謝罪は受け入れました。ではそういう事で」って感じだった。

もう今更の話で俺にとっては清算された過去でしかない。

一応は今回の問題の調停者として天音が謝罪の場等に立ち会っていたが、「無関心過ぎて笑った。やっぱり時間が解決するって事は大きいんだね~」と異世界召喚事情を知る彼女はそんな感想を述べていた。

他の者が来たら「?」だっただろう。






一位 聖 天音

二位 忠野 茂武

以下省略



待ちに待ったテストの成績発表で上位成績者が張り出された掲示板をながめている。

学年中位をキープしていた俺は大躍進である。

カンニングを疑われるレベルであったが、呼び出し時に「失恋の痛みを勉強に全力投球した頑張った結果です」と言うと、逆に同情され「よく頑張った」と学年主任の先生にほめめられた。

横で一緒に結果を見ている天音は「おー凄い、凄い」と俺を褒めるが、天然チートの彼女は入学当初からずっと学年トップを維持している。

調子に乗って「今回は俺がトップになるから天音の記録もストップだな」と言ったら勝負することとなった。

結果、俺は敗北したので後日「一つ御願いを叶える」を実行することとなっている。

勿論出来る範囲での縛りはあるが、何をお願いされるか少し怖い。





夏休みが目前に迫るある日転校生がやって来た。

クラスではこの話題で持ち切りである。


「男か女かどっちだろう」「可愛い女の子に期待」「イケメン男子来い!!」等々とクラスメイトはワイワイと騒ぎながらHRを待っていると、御吏ごり先生が教室へ入って来た。

今日も安定のポージング、フロントダブルバイセップスボディビルのポーズを生徒に背を向けながらしているのだがそれで良いのか国語教師。



「今日は転校生が居ます。今から紹介するから刮目して見よ!!」


ポージングがサイドチェストボディビルのポーズになりこちらに顔を向けた。

この先生変なんだが皆慣れてスルー決め込んでいる。



「では入って来て自己紹介よろしく!!」




ガラガラと音を立てて教室の前扉が開き転校生が入場してきた。

教室の真ん中に立つと黒板に名前を書き自己紹介を始めた。




「智・F・ワイズマンです。こんな中途半端な時期ですが、個人的な理由で転校してきました。仲良くしてくださいね」





あ~目が合ってニッコリと微笑まれた。

俺の周りの男子が「目が合った」「微笑んでくれた」とか言っている。

あ~多分俺への微笑だろうな~知っている奴なので仕方ない。


異世界召喚者第三弾の賢者様

ともFフローラ・ワイズマン】

腰丈まである銀髪、青と金のオッドアイ、スタイル抜群、美少女とキャラが立ち過ぎてて何処のラブコメから投入されたんだろうと思ってしまう。

見かけによらず中々のオタク趣味で、よく異世界でアニメ談義などしたものだ。

観れないからこそ余計観たくなるって感じだったな~

仲良くなってからはよく「茂武は私のこと好きになるわ。全てはFになるのだから!!」と某作品の言葉をもじって俺にアプローチしてきていた。

凄く情熱的なアプローチをするが、恥ずかしがり家なので言った傍から赤面していた。

そんなことを考えていると、いつの間にか俺の隣にいる。

隣にいた男子がいつの間にか消え智は俺の横にいた。




「隣がいつの間にか智になってる・・・」

「変わってもらったの。茂武会いたかったわ」



智はあごの下をスリスリしながら「ひげの無い幼い茂武もまた良し」と小さな声でささやいた。

まぁ智が召喚されたのは天音が来てから大体一年後、俺が26歳の容姿の時だ。

中坊の俺が若いのは当たり前である。

「どんな関係だ」「俺もスリスリされたい」「キャー聖会長にライバル出現」とか色々とクラスの皆が注目し盛り上がっている。





時間は過ぎ去り昼休み。

もう行く必要はないのかもしれないが、習慣の生徒会室へ智を連れて向う。



「天音久しぶりね」

「智・・・とうとう来たのね・・・」



何だろう目の錯覚だろうか?背景に龍と虎が睨み合っている。

目をこすって再確認するとそんな景色は無かったので見間違いだろう。

お互いに「ふふふふふ~」「ははははは~」とは行の連呼をしてニコニコと笑顔で向き合っている。

仲の良いことである。


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★


私はともFフローラ・ワイズマン、半分ほど外国人の血が入っている世間一般的に言うハーフである。

自分でも容姿は良い方だと思うし、髪色も好きなキャラクターと同色で気に入っているし、青と金のオッドアイも中二心を刺激する。

家で一人「この左目の・・・」とか言って一人語りしていたのは誰にも話せない。

家庭は裕福な方で私立のお嬢様中学へと通っている。

今日は天気が良いので速めに学校へ来て中庭で軽めの朝食を取りつつ新刊の漫画を読もうと考えている。

中庭には東屋あずまやがあり、そこで私はこうした時間を設けるのが好きだった。

今日は先客がいる。

見たことない人である。

女性でスーツを着ていて眼鏡を掛けている。

容姿は驚く程整っているがキャリアウーマンと言う奴だろうか?出来る女性って感じだ。

その女性を眺めていると挨拶あいさつをしてきた。



「おはようございます(クィッ)」

「おはようございます・・・」

「お座りにならないんですか(クィッ)」

「あ~はい、座ります・・・」

「少しお話しませんか(クィッ)」

「え~~と良いですけど何を話すんですか?」

「異世界とかご興味ありますか?(クィッ)」



話す度に眼鏡を少し持ち上げる動作をするのは何故だろうか?



異世界か~漫画や小説の題材で好きなジャンル。本当に行けるなら行ってみたくはあるよね~

「そうですか、ご興味があると」

?・・・

「行けるなら行ってみたいんですよね?」

私、言葉に出してないよね?

「心を読んでいるだけですからご安心ください(クィッ)」

はぁ~~~心を読む????

「はい、考えていることと言えばいいんでしょうか?・・・あ・・・申し訳ありませんでした、自己紹介がまだでしたね。私はこういう者です」




【女神】



彼女は赤い革の名刺入れから1枚の名刺を取り出し丁寧に私の方に差し出してきた。

受け取って見てみると真ん中に大きく『女神』と書かれている。

上に英語で『Goddessめがみ』の文字が小さく書かれ、他も文字だと思うが読めない。



「女神ですか・・・」

「はい、異世界で女神をやってます(クィッ)」



こんなチャンスは見逃せないと詳しく話を聞き色々と面白い話が聞けた。

異世界に魔王が現れたので魔王を倒す、王道だ。

勇者候補は居るので賢者として同行しないかと言われた。

話している途中に「勇者が異世界へ旅立ちました。如何しますか?」と聞かれたが報酬の帰還時の時間を考えてしまい少し時間を掛けてしまった。

結局はお勧めを選択した。

「今からだと勇者召喚から凡そ11年後位に召喚されます。」と告げられたが、ほんの先ほど討伐までは大体5~8年が平均と言われたのでどうしてか聞くと、「彼は異世界を満喫してそっちのけで冒険してます」と告げられた。

面白い!!私も同じ立場なら同じことをする可能性が高いと感じ俄然がぜん勇者に興味を持った。

実際、茂武に会ってみて仲間として行動すると色々と波長が合い、男性に少し苦手意識があった私が彼とは気さくに話している。



『帰らずの森』と言う名の魔境に連れて行かれ、モンスターパレードに突撃させられた時は流石に「こいつマジか?」と思ったが、彼との冒険は有意義であった楽しかった

魔王討伐後に元の世界でも会いに行くことを約束した。

私は今日念願の茂武のいる学校へと転校する事が出来た。

これからの私はまたあの時異世界での日々の延長を楽しむような気分でウキウキしている。

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