第7話

速いもので今日から夏休みである。

3年生と言う事で高校受験の為の大事な夏休みなのだが、勇者10%マジ優秀。

模試を受けたら余裕で合格判定Aで、志望校も以前の俺なら無理目のここら辺で一番頭のいい高校に変更。

「「私たちが一緒に勉強してるんだから当たり前でしょ」」と天音&智に言われた。

二人とも天然チートでした。

勉強に関して言えば討伐特典の10%要らなくない?と思うほどである。

智が転校してきてから以前の勇者パーティーよろしく3人で行動することが殆どとなった。

学校中の男子から嫉妬しっとで燃やされる勢いの怨嗟えんさの念が送られてくる。

目線だけで人殺せたら多分俺は1000回を超える程殺されているだろう。

一度靴を隠されるという嫌がらせを受けたが、智が「こんな陰湿いんしつなことする阿保あほは大っ嫌い」と下駄箱で叫んで以来、特に何もなく平凡な学校生活を送れている。

「智様、様様です!!」と言ったら「もっとたたえていいんだよ!!」と中学生とは思えないご立派なオーパーツを突き出していたが、本当に感謝で一杯である。



今日は夏休み初日と言う事で、3人で宿題を終わらせることとなっている。

多分、四日で終わるだろうと2人から言われたが、「俺、今まで夏休みの宿題を四日で終わらすとかしたことないぞ」と言ったらみんなですることとなった。

俺の家で宿題をすることとなったが、今、2人との待ち合わせ場所のコンビニへ向っている。

前方より顔見知りが歩いてきた。

貴干紗姫たかちさき、幼馴染で元恋人、今はどうでもいい隣の家の幼馴染。

町田何某なにがし、未だに下の名前を覚えられないし興味もない幼馴染の友人A。



「あ・・・茂武・・・何処どこか行くの?」

「ちょっとそこまでな」



え?あれだけの事されて許したの?とか思う人いるかもしれないが、無関心でも幼馴染、日常会話位するし、謝罪を受け入れた以上無視したりしないぞ、狭量きょうりょうの俺でもそれぐらいの度量どりょうはある。


「そうなんだ・・・この後時間ある?」

「あ~予定は入ってる」

「そうなんだ・・・」

「おう、宿題やる予定」



貴干さんがそれに食いついた。



「私達も今から宿題する予定なんだ、一緒にしない?」

「俺も他の人とする予定だし、俺一人で決めらんない。人数多くなると場所がな~」

「そうなんだ・・・」



そこで更に貴干さんが言いつのる。



「何処でする予定なの?」

「俺ん家だけど?」

「茂武の家ならリビング広いよね。みんなでやれない?」



いやいや何故そうなると思うが、かつて知ったると言うヤツで俺ん家の間取り構成は幼馴染の把握はあくするところである。

ここは天音&智を理由に断るのが一択であろう。



「だから先客がいるって言っただろ?俺一人の一存では決められない。」

「じゃあ、その先客が認めればOKなんだね!!」

「そうは言ってないが・・・」

「じゃあ聞いてみればいいじゃない!!」






何故こうなった・・・天音&智を迎えに行き、ただの幼馴染とその友人Aがコンビニまでついて来て2人に交渉し一緒に宿題をすることとなった。

俺には着いて行けない別次元の高等な交渉が行われたのだろう。

俺はコンビニ来たついでにダーツなアイスを購入しチビチビと食べながら交渉の行方を見守っていたが何故かそうなってしまった。

まぁ直ぐに決まったようで4人もそれぞれ好きなアイスを買いに行った。



今、俺ん家のリビングで皆でテーブルを囲み宿題に没頭している。

妹に頼まれたダーツのアイスを渡すと彼女たちををチラリと見て「アオハルだね~お兄!!おかあさ~ん、お兄が複数の女の子を連れ込んでる」と人聞きの悪いセリフを大声で叫び母に伝えた。

母はその様子を見に来て「シゲやるじゃん!!」と親指を立てて俺に笑顔を向ける。

下品なのでやめなさい。

母は「それでどの子が本命さんなのかな?」と爆弾を落とし去っていった。




何でだろうか?母の捨て台詞の後位から変な汗が流れる。

これは異世界で不死の墓標ぼひょうと言う名のアンデッドパラダイスへ特攻した時以来の危機を感じる。

あのエリアのヤバさはモンスターの湧き方が異常な上に不死属性の上級格の4体のボスと最凶格の1体の裏ボスがいる事だった。

ここは安全な日本の自宅の筈なのにこの謎のプレッシャーに押しつぶされそうだ。

あの時は100%勇者なので耐えられたが今は10%である。

今日俺は死ぬのかもしれないと直感が叫ぶ。


「茂武、ここが解らない」

「ここはこうしてああしてそうすれば解けるはずだ」

「茂武、ここは?」


「忠野君、ここ教えて」

「ここはこの方程式を当てめて・・・」

「忠野君、ヒント頂戴ちょうだい

「ここのこれは何かを代入すれば・・・」



幼馴染とその友人Aが執拗しつように俺に質問してくる。

他の2人に聞けよ。

天音&智は天然チートなので俺より成績優秀なんだぞ。

そうこうしている内に時間は立ち2時間ほど経過した。


「茂武、休憩しようよ!!ついでに何か面白い漫画を所望する!!」

「OK解った。部屋から持ってくるな」

「あ~それなら私が直接見て選ぶよ」

「そうか~まぁそれの方が良いか。智、部屋行くぞ」


智が休憩を懇願こんがん&漫画を要求してその漫画を選びたいから部屋に行くと言って俺が立ち上がろうとすると、残り三人に掴まれる。



お茶を飲みにでも降りて来たであろう妹がそれを目撃し「お兄、修羅場?」と尋ねてくる。

何処でそんな難しい言葉を知った?それとも今時の小学5年生はそれ位容易に理解するのか・・・

「お兄がシュラバー」と母の下に報告へ向かう妹よ辞めてくれ。



結局は全員で俺の部屋に漫画を探しに行くこととなる。



「これ面白そうね。茂武、これ借りて行ってもいい?」

「いいぞ。面白いから読んでみてくれ。天音が読み終わったら感想とか語り合おうぜ」

「私、これ借りるね。読み終わったら話そうね」

「おう、これなら智のドストライクだと思うぞ」



などと話していると、貴干さんが俺に問いかけて来た。



「仲が良いのは知ってたけど、下の名前で呼び合ってるんだね」

「何か変か?まぁ貴干さんには関係ないだろ」

「紗姫って昔みたいに呼んでよ!!そんな他人行儀な言い方・・・」



そう言って泣き始めた。

あ~面倒臭い。

関係性は壊れたから距離置いてたし、裕斜が彼氏になったと思っていたからあえて名字にさん付けにしてるのに・・・

面倒なので解ったと言ってまた以前の紗姫と呼ぶこととなった。



「私だけ名字にさん付けとか可笑しくない?」



今度は町田何某が皆と同じように下の名前で呼び捨てで呼ぶようにと強要してきた。

本当に面倒臭い。

もう本当に面倒なので了解して下の名前呼びをしようとしたが・・・

下の名前を知らないことに今気が付いた。

よく考えてみたら下の名前を知らないままで心の中で何某か紗姫の友人Aと呼んでいた。



「花子・・・」

「え・・・下の名前覚えてない?」


町田何某にギャン泣きされた。

様子を見に来た妹が「あ~お兄が女の子泣かせた!!イーケナインダ、いけないんだ、お母さんに言ってやろ~」と歌いながら俺を指さし、「お母さ~ん、お兄ちゃんが女の子泣かせてる~」とまた母へ報連相ほうれんそうを行っている。

紗姫に目線で聞くと教えてくれた。

町田まちだ 清美きよみ


「ごめん・・・清美、今度はちゃんと覚えたから」


清美はグズグズと鼻をすすりりながら「ありがとう」と言った。

四日間このメンバーで宿題を終わらせることとなったが、残り三日。

この調子では夏休みを乗り越えられるか心配になった。


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★


俺は大親友の彼女を寝取った。

最初はしぶっていた彼女も途中からはノリノリで俺との逢瀬おうせを楽しんでいた。

しかし、ある日彼女の浮気がバレてそれを隠すために逆に浮気されたこととして噂を流した。

最初は成功したように見えたが最終は酷いもので全ての噓が俺にね返ってきた。

それからは針のむしろ状態で学校に俺の居場所は無くなった。

何故、親友が嫌いになったのだろう。

些細ささいなことだったのかもしれないし、大きな出来事だったのかもしれないが、もう覚えていない。

何時の間にか泣きっ面を見てやろうとか負の感情しか持たなくなった。

表面的には友好に裏では嫌悪けんおしていた。


親に頼んで別の学校へ転校したがこの屈辱くつじょくは消える事は無い。

事情を知った親が転校だけはさせてくれたが事件を契機に距離を置かれるようになった。

家に居辛い為、夜の公園のベンチで一人時間をつぶすことも多くなっていた。

そんなある日、黒いスーツに黒い帽子、黒いワイシャツに黒いネクタイ、黒い靴にと兎に角真っ黒な格好の男が目の前に立ち話し掛けている。



「ぐふふふふっ~そのどす黒い感情はたまりませんね~」

「お前は誰だ?」

「ああ、私はこういう者です」



ポケットから無造作に1枚の名刺を取り出し片手でヒョイと俺に渡してきた。





【悪魔】



名刺には大きく悪魔の文字。

他は何が書いてあるかも解らない。


「悪魔って・・・」

「信じる信じないはあなた次第ですよ。契約するならあなたの今の状況を変えてあげましょう!!」

「本当か?」

「はい、悪魔は嘘つきませんよ。神や天使はルールの下に、悪魔は契約の下にですよ、はい」

「分かった・・・契約しよう」

「ぐふふふふっ~速い決断ですね。それだけ切羽詰せっぱつまっているのでしょ?」

「その通りだ・・・それでどんな契約になるんだ?」

「いいですね、いいですね、実にいい、話が早くて助かります。早速、契約内容を話し合いましょう。契約は等価交換となりますから、あまりに欲をかくと大変ですけどね。まぁその分契約は必ず履行りこうされますけどね。」



本当にこの男が悪魔なのか分らないが、この時の俺はわらすがったのかもしれない。



★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★

修正

「これ面白そうね。【茂武来れ】借りて行ってもいい?」→【茂武、これ】

家に【いずらい】為、夜の公園のベンチで一人時間をつぶすことも多くなっていた。→【居辛い】

天音&智は天然チート【の】俺より成績優秀なんだぞ。→【なので】

これは異世界で不死の墓標ぼひょうと言う名の【アンデットパラダイス】へ特攻した時以来の危機を感じる。→【アンデッドパラダイス】

幼馴染とその友人Aが【必用】に俺に質問してくる。→【執拗】

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