第8話

天音あまねとも紗姫さき清美きよみの4人は四日間毎日やって来た。

最初はギクシャクしていたように感じるが、4日目ともなると和気藹々わきあいあいと仲良く勉強したり、勉強の合間に楽しく会話していた。

4人が来る度に妹が「お兄のハーレムメンバーが来た。お母さ~ん、ハーレムメンバーのおねえたち来たよ~」と母に報告する。

母も挨拶あいさつに出て来て「あらあら誰が本命になるのかしら。楽しみだわ」と女性陣を見まわして言うので4人とも恥ずかしそうにしている。

母はおばさんと呼ばれるのが嫌だったようで、名前呼びをする様に女性陣に言っていた。

おばちゃんと言うよりお姉さんと言った方がしっくりくる見た目であるのは認めるが、何だろう下の名前呼びを言った瞬間のプレッシャーは異世界で経験したどんな危険よりも恐怖を感じたのは何故だろうか。

母の名前は【麗香れいか】なのでみんな「麗香れいかさん」と呼ぶようになった。

妹もこの短い期間で4人と仲良くなりちゃん付けで呼ばれるようになった。

妹の名前は【舞香まいか】なのでみんな「舞香まいかちゃん」と呼ぶ。

妹はみんなをおねえをつけて呼ぶようになった。

仲良きことは良きかなである。



4日目の勉強の休憩中の事である。

天音が俺に聞いて来た。


茂武しげたけ、明日空いてる?」

「明日は特に予定はないぞ」

「そうそれは良かったわ(ニコッ)」



一瞬部屋の温度が下がった様に感じたが気のせいだろうか?



「明日買い物に付き合って欲しいのよ」

「おう、良いぞ」

「「「ちょっと待った!!」」」



結局4人の話し合いが持たれ5人でお出掛けとなった。

仲良きことは良きかな、良きかな。

やぶを突いてとあるが、異世界でやぶを突いたらタイラントバイパーと言う巨大な蛇の魔物に一飲みされ死ぬ思いをした。

それ以来藪蛇やぶへびは危険ということを知った。

俺はお茶を飲んで心を落ち着け外をながめた。

明日も天気は良さそうだ。


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★


私は幼馴染で元恋人だった茂武しげたけに酷いことをしてしまった。

今考えても何故あの時あんな行為に及んだのかと聞かれれば、私の心のスキとしか言いようがないだろう。

そして心のスキを突かれそのまま欲望にれた。

最初は罪悪感に苦しんだが、次第に普通の事になってしまった。

そして、その不貞ふていがバレてふられた。

産れた時から隣に住んでいて姉弟のように育った。

中学に入学する位までは恋人未満友達以上の関係だったが、中学1年生のGW《ゴールデンウィーク》前に茂武の方から告白されてそれに私がOKしたので、それから別れを告げられるまで恋人だった。

別れを告げられた時の茂武の一切興味が無いような冷めた目線は一生忘れられないだろう。


もう元の関係に戻れないだろうと思いつつ遠くから眺めるだけの生活になってしまった。

悪いのは私だと理解はしているが、無くなって気付くことは多く、茂武の優しさや何気ないやり取りの楽しさ、他にも沢山のことに気が付く度に本当に馬鹿なことをしてしまったと後悔だけが残った。

そのことで巻き込んでしまった仲良しの清美とも一時は絶縁されてしまったが、謝罪を後日すると「あの時は気持ちが高ぶってしまって勢いで平手打ちと絶縁宣言してしまった。冷静になると誰に指示された訳でも紗姫から言われた訳でもないのに、忠野君にからんでいた。それなのにごめんなさい」と泣きながら私のことを許してくれた。

二人してギャン泣きしながら抱きめあったのは2人の秘密とすることにし、以前よりも仲良くなれた。


夏休み初日に清美と宿題を一緒にすることにした。

飲み物やお菓子など必用な物を買いに近くのスーパーへ清美と一緒に行きその帰り道で茂武とばったりと出会った。

駄目元で「宿題を一緒にしよう」と誘おうとしたが先約があるとの事だった。

胸がチクリと痛んだ。

諦め切れずに言い募ると茂武が一緒に勉強する人たちが納得すればOK的な流れとなったので待ち合わせのコンビニまで一緒に行って交渉することとなった。

何故か清美も反対はしなかった。


コンビニに行くとやはり、最近、茂武と仲良くしている2人の女性がいた。

私は容姿に自信を持っている方だが、この2人、ひじり会長とワイズマンさんはけた違いである。

2人が並んでいると華やかで何だか空気まで華やいでいる様に錯覚さっかくする。

全てにおいて私はこの2人に負けているし、茂武には酷いことをした私・・・

でも何でだろうか?負けられないというような変な対抗心が出て来てしまう。

交渉の末と言うより、ある意味簡単に一緒に勉強することとなった。

歯牙にもかけていないのだろう。

少し落ち込んだが、また茂武と普通に話せて勉強できるだけで喜びだった。


少し前までは普通に通っていた茂武の家なのに今は入るのが少し怖い。

しかし、麗香さんも舞香ちゃんも昔みたいに普通に接してくれて嬉しかった。

驚くことに茂武は昔より格段に勉強が出来るようになっていた。

テストで学年2位となっていたので勉強が出来るようになっていたのは知っていたが、教えるのも凄く上手かった。

劇的にテストの順位が上がったのでカンニングを疑われて学年主任の先生に呼び出された時に「失恋の痛みを勉強に全力投球した頑張った結果です」と言って逆に失恋に同情され、そして、成績をめられたらしいが、今まで茂武の足枷あしかせに私がなっていたんじゃないかと思い落ち込んだ。


休憩の時にワイズマンさんが茂武の漫画を借りたいと言い出した。

2人で茂武の部屋に行くようだ。

気が付くと茂武の服を掴んでいた。

清美とひじり会長も茂武をつかんでいる。

結局全員で漫画を選びに茂武の部屋に行くこととなった。

ほんの少し前まで当たり前の様に入っていた茂武の部屋を凄くなつかしく感じる。

ふと見ると茂武が2人の事を下の名前を呼び捨てで呼んでいる。

もやっとした瞬間、口から言葉がれ出してしまった。

最近、茂武は私のことを「貴干さん」と呼ぶのだが凄く不満だった。

不満が言えない立場なのは理解しているつもりだったが、この時は名字でさん付けで呼ばれたことと「関係ない」の言葉で感情があふれ昔みたいに「紗姫」と呼んで欲しいと泣きながら懇願こんがんしてしまった。

茂武は本当に面倒臭そうな顔をして、了承してくれた。

そんな時、清美が自分だけ名前呼びしないのは可笑しいと言い始めた。

また茂武はまた面倒臭そうな顔をしたが次の瞬間戸惑とまどった顔をして「花子」と口にした。

清美は号泣し始めてしまった。

多分茂武は清美の名前を覚える気すら無かったのだろう。

私に目線を送って来たので教えて欲しいのだろうと思い清美と彼女の名前を伝えた。

清美もまた茂武のことを好きになったのだろう。

茂武の魅力にみんなが気が付き始めた。

私は本当の宝物を捨てた大馬鹿ものだ。

でも、どうしてもまたこの宝物を手に入れたいと無理でも挑戦してみようと今日この時決めた。


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★


私は忠野ただの君にひどいことをしてしまった。

親友の紗姫が恋人の忠野ただの君に隠れ浮気をしていた。

それも忠野ただの君の親友であろう為野ための君とだ。

私はその事実を知らず何度も何度も忠野ただの君へ突っ掛かっていった。

女に親友とか無いという人もいるが、私にとって紗姫は親友と呼べる存在だ。

そんな親友を傷付けて平気な顔をしていると思うと許せなくて口だけではあるが酷いののしりをしていた。

実際は立場が逆だったので忠野君が責められる理由は全く無いのに私は事実確認せずに状況だけで判断した。

今なら凄くおろかなことと思う。

事実を知り親友とも一時絶縁してしまったが、考えてみると紗姫は何も語っていなかった。

為野ための君・・・いや為野の策略にうまくってしまった自分が悪いのだ。


私のしたこと、紗姫のしたことは許さなくても当たり前の行為だ。

私なら絶対に許さない、ののしってののしってののしまくるだろう。

忠野君は簡単に謝罪を受け入れた。

簡単に許したのは彼が私たちに無関心でどうでもいい存在だからだろう。

それも仕方ないことである。

それから迷惑にならない様にと彼に近づかない様に心がけた。

でも罪悪感からだろうか?彼のことをよく考えるようになったのはこのころだろうか?


偶然、夏休み初日に忠野君と出会った。

丁度、紗姫と夏休みの宿題をする時にまむお菓子や飲み物を近くのスーパーに買い出しに行った帰り道だった。

紗姫は彼も誘ったが先約があると言う事で断ってきた。

それでも言いつのって一緒に宿題をしようと言う紗姫。

一緒に勉強する人たちが納得すればOK的な流れとなったので待ち合わせのコンビニまで一緒に行って交渉することとなった。

でも、一緒に勉強する人たちって、最近、忠野君が仲良くしているひじり会長とワイズマンさんだろう。

彼女たちが納得すればOKなんて彼は一言も言っていない。

彼にとって迷惑なのは分かっているのに止めなかった私は自分で自分に困惑した。

ひじり会長とワイズマンさんはあっさりと一緒に宿題することに同意した。

5人そろって宿題をしていると紗姫が忠野君に解らないところを聞いている。

聞き耳を立てると私も少し解らない所であった。

説明を聞いていると非常に解り易い。

いつの間にか私も彼に解らない部分を質問していた。

休憩中にワイズマンさんが忠野君に漫画を読みたいので貸して欲しいと言ってきた。

彼は了承し、ワイズマンさんは直接選びたいらしく忠野君の部屋に一緒に行くといった。

その時何故か忠野君をつかんでしまった。

見ると紗姫とひじり会長も彼を掴んでいる。

何でだろうモヤモヤする。

結局はみんなで忠野君のお部屋にお邪魔することとなった。

私の読んだ事のある漫画も数作品ある。

私は「今度話をふってみようかな?」と密かに思う・・・何だろうこの気持ち。

そうこうしていると紗姫が自分のことを名字にさん付けで呼ばれることに不満をらした。

昔みたいに紗姫と呼んで欲しいのだろうが・・・

彼は本当に面倒臭そうに了承した。

何でだろうまたもモヤモヤする。

つい私も平等を主張して自分から下の名前呼びをしてもらえる様に主張した。

この時私の顔は真っ赤っかだっただろうと自分でも思う。

しかし、彼は「花子」と言った。

そう言えば彼は私の名字も知らなかったのだから下の名前を知らないのも無理はない。

だって彼は私に興味は無いのだから・・・

私は涙をおさえる事が出来ず号泣してしまった。

そして、紗姫に教えてもらったのだろう。

「ごめん・・・清美、今度はちゃんと覚えたから」と言ってくれた。

この時、私は自分が忠野君を好きなのだと理解した。

そして、私はグズグズと鼻をすすりながら「ありがとう」と笑顔で言った。


★~~~~~~~~~~★


修正

・最近、茂武は私のことを「【貴千】さん」と呼ぶのだが凄く不満だった。→【貴干】

・そして、成績を【褒めらた】らしいが、→【褒められた】

・そんな親友を傷付けて平気な顔をしていると思うと許せなくて【口だけのではあるが】酷いののしりをしていた。→【口だけではあるが】

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