第5話

【学校裏掲示板】


俺が画像を投稿したのは生徒だけアクセス出来る学校掲示板で、ここは学校の裏情報を皆が覗く場所として知られている。

流石神、サスカミである。

絶妙にプライバシーは守られつつも知る人が見れば直ぐに誰か解り、どんなことをしているか分かると言う神編集の画像を用意してくれていたので数枚投下した。

神が編集したので神編集と言った冗談はさて置き、内容としてはソフトなものだ。

2人が手をつないで歩いている画像、キスしている画像等々である。

流石に「アンアン、パンパン」している最終兵器は掲示板では使えないだろう。

まぁそれはいいとして、投稿した画像の問題なのはそれが行われた日付だろう。

画像の下の部分に撮った時間と日付がバッチリ表示してある。



何時もの時間に登校し教室へ入ると、騒めいていたクラスメイト達が一斉に押し黙り静寂せいじゃくの時が訪れた。

無視してそのまま席へと座る。



数分後、町田何某なにがしが教室へと「おはよー」と言いながら入って来たが、俺を見るなり「あっ」と言って下を向き自分の席へと向って行った。

他のクラスメイトは俺の事を一番責めていたのが町田何某なにがしだと知っているので、ヒソヒソと話しながら俺と町田何某なにがしを交互に見ている。


それから更に数分後、裕斜ゆうたが教室へと入って来て俺を見るなり速足で近づいて来た。



茂武しげたけやってくれたな!!」

「ほ~今日は珍しくちゃんとした名前呼びか」

「う、うるさい!唯のモブが!!」

「まぁいい、俺が何をやったって?」

「掲示板の画像だよ!!どうせ画像処理でも使って偽の画像でも作ったんだろ!!」

「あ~ハイハイ、画像編集、画像編集っと」

「やっぱり編集したんだな!!」

「原本画像の方がよかったか?プライバシーに配慮はいりょしてモザイク等入れたが必要なら編集前の物もあるぞ?」

「うっ・・・調子に乗るなよ!!」



今日も裕斜ゆうたは元気だった。

悔しそうに顔を歪めながら自分の席へと去っていった。

紗姫は今日学校へは来なかった。

HRで「貴干たかちは体調不良で休みだ」と担任の御吏ごり先生が皆に告げた。

本当に体調不良か判らないが、紗姫さきが居ようと居なかろうと俺にはまったく関係ない無関心ここに極まれりである。



授業間の休みの時間はお通夜状態と化していた。

誰も話そうとはしない。

俺が席を立ちトイレへ向かうと明かにホッとした顔をするクラスメイトが見受けられた。

まぁ冤罪みたいなもので無視決めてたクラスメイトと言う名の赤の他人に特に思うところは無い。

雰囲気が悪いのも別に俺は気にしない。

最近は勉強が面白く感じて来て一人コツコツと学習している。

1カ月ほどするとテストがあるのでそれに向けて頑張っている。



昼休み何時ものルーチン通り生徒会室に向い「コンコン」「どうぞ」「失礼します」と何時もの様にドアを潜ると天音に怒鳴り散らす裕斜がそこに居た。

俺はトイレに寄ってから来たので少し何時もより来るのが遅かったが、その間に裕斜が生徒会へ怒鳴り込んでいたようだ。



「あ~丁度良かった。茂武、掲示板に挙げた画像なんだけど消して欲しいそうよ?」

「掲示板は生徒会管理だったな。消しても良いが、条件がある。」

「何かしら?」

「先ず、裕斜たちが掲示板に書き込んだ俺が浮気したり・二股だったりと根も葉もない書き込みを消してくれ」


裕斜がこちらを睨み何か言おうとしたが、天音が「まだ何も言うな」的睨みで裕斜を黙らせた。

流石、中位格モンスター位なら睨みだけで硬直っせていた聖女様。

聖女10%と言っても中学生位なら余裕の一睨みで黙らせる。



「それで、他には?」

「噂自体はデマも良いところなんだから、その噂を撒いた裕斜とその仲間たち含め謝罪と撤回を掲示板に投稿してくれ」

「そう、それでいいのね?」


俺が頷くと「それで如何するの?」と目線で天音は裕斜へ回答を促した。

何故、裕斜が怒鳴り込んで来たのかと言うのは先に述べたように、掲示板が生徒会管轄だからである。

この掲示板は生徒会管轄なので匿名性を排除しているので誰が書いたか解るようになっている。

ただし、生徒の自主性を尊重すると言う事で、何を書いても載せても不問とされている。

犯罪行為やその他問題のある場合のみ削除するが、それでも管理者と記載者に合意が必要で勝手に消せない仕組みとしている。

仮に問題を持ち込んでもそれも自分で解決した上で削除依頼を生徒会に上げろという完全自己責任型の自主性尊重掲示板なのである。

なぜこんな掲示板を作ったのかと疑問かもしれないが、現代社会においてネットで掲示板に投稿するとかごく当たり前の行動である。

そんな掲示板に誹謗中傷ひぼうちゅうしょうとか載せれば訴訟ものである、要はネットに誹謗中傷とか色々悪いことをすれば酷いことに成るぞ、だからするなよ、それをこの掲示板で学べと言うある意味まっとうな理由をもとに作られている。

だからこそ外部遮断の生徒だけの利用で生徒会管理なのだ。


裕斜は顔を歪めながら俺を睨み話し始めた。



「事実だろ・・・仮に事実で無いとしてお前が浮気してないって証明をしろよ!!」

「うわぁ~出たよ悪魔の証明・・・裕斜お前分ってて言ってるだろ?行っていない事実の証明は殆ど無理。逆に聞くけど、お前と貴干さんが浮気していた証拠は挙げたが俺が浮気している証拠はあった上でお前らは俺を誹謗中傷したのか?」

「うううう・・・」

「うーうー言ってないで答えろよ。それに、俺はお前らに文句や誹謗中傷何て一言も書き込んでないぞ!!ただ画像を数枚アップしただけだ!!」



裕斜が沈黙する。

溜息を吐き天音が返答を促す。



「沈黙は肯定と見做すけど良いわね?先ずはあなたを含め茂武を誹謗中傷した人物を集め話し合いなさい。そして、三日以内に生徒会へ回答をしなさい。その上で、後日、茂武へ謝罪。謝罪と撤回の文章はまた後日掲示板へ投稿する事となるでしょう。勿論その場合は生徒会で一度不備が無いか確認して載せることとなります。茂武もそれで良いですね?」



俺は頷いたが、裕斜は項垂うなだれて下を向いているだけで何も反応しない。

また溜息を吐きつつ天音が裕斜へと告げた。


「為野君、もし三日以内に回答が難しいようであれば少しの期間は考慮しますが、全く回答が無い場合は誹謗中傷した人たちにそれなりのペナルティーを課す様に生徒会から校長に稟議りんぎを上げますのでそれを踏まえて行動しなさい。」



返事は無い。



「分かった?返事は?」

「はい・・・」

「そう、それなら良いわ」



流石、『セイント天音』である。

実は校内で『セイント天音』と呼ばれている。

1年の時、彼女は生徒会の書記をしていた。

問題行動をしたヤンキー生徒を注意したところ、逆上して殴りかかって来たのをカウンターパンチで一発KOしたのだ。

天音の見た目に騙されてはいけない。

彼女は空手を小さい頃から叩き込まれた拳闘士セイントなのである。

ついたあだ名が名前の聖から『セイント天音』、流石に流〇拳とか放たないだろうが、異世界でもガントレットを嵌めモンスターと闘う姿から『撲殺聖女ぼくさつせいじょ』と呼ばれていた。

この学校で生徒会長の威光だけではなく武力の面からも歯向かう生徒は先ず居ないだろう。


★~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~★

修正

「沈黙は肯定と見做すけど良いわね?先ずはあなたを含め茂武を【誹謗中そう】した人物を集め話し合いなさい。→【誹謗中傷】

【行っていない】事実の証明は殆ど無理。→【言っていない】

逆上して殴りかかって来たのをカウンターパンチで一発【OK】したのだ。→【KO】

誰も話そう【としな】。→【とはしない】

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