第120話

学校の正門前に行くと金剛先生と栖山クラス委員がビラ配りをしていた。

男子生徒に渡しているようで栖山は俺を見るとニンマリとした笑顔で近付いて来きてビラを渡しながら話し掛けて来た。



「やあおはよう、え~と忠野君で間違いなかったよね?」

「ああおはうよう」

「部を立ち上げたいんで協力よろしくお願いします」



そう言って栖山はニッと笑うと歯がキラリンと光った様な気がするが錯覚かな?

受取ったチラシを見ると「筋肉部を作りましょう!!」と言うタイトル・・・

この学校では5人以上で同好会が設立でき10人以上で部に昇格出来るか生徒会に稟議を上げられるらしい。

同好会は顧問も必要なのだが後ろにいる金剛先生が顧問を受け持つのであろう。

相も変わらずポージングを決め校門前で動く銅像と化している。



「同じクラスの誼で如何かな?」

「え?俺?」

「そうだ、良い筋肉を持ってるようだしね」



笑顔でそう言ってくる栖山はまたニッと笑うがまたキラリンと光った幻影が見える。

ニコニコしながらも圧が強い。



「俺も色々忙しいから・・・部の設立を願っているよ」

「ははははは~必ず部を立ち上げて筋肉甲子園に出場するのが夢なんだ!!」

「何それ?」

「お、興味を持ったかな?是非それについて語り合わないか?2人っきりで!!」



何だろうかインチキセミナーの勧誘的な雰囲気なのだが・・・

俺は即座に撤退を決め「今回は遠慮しておくよ、じゃあな」と言ってその場を駆け足で離れた。

チラシを見ると高校生を主体としたボディービルの大会があり、そこを目指すとのことを目標とするとの趣旨が書かれている。

とうとう我が校も筋肉に汚染され始めたようだが個人的には応援している。

自分は加わる予定はないが頑張って欲しいものである。


クラスへと行くと俺を見捨てて先に教室へと来ていた天音たちが楽しそうに話している。

女子には関係の無い話だし、少し話し込んでいたので仕方ないが助け舟を出して欲しかった。

まぁそんな事は言っても仕方ないのは解るので言わないが・・・



「何とか逃れて来たみたいね」

「まぁな・・・」

「話しくらい聞いてあげたんでしょ?」

「ああ、話しだけな」



そう言いながらチラシを天音に渡すと、「筋肉部・・・」と言って天音も固まった。

そして、内容を読んで「筋肉甲子園・・・そんなものがあるのね」と言っていた。

後日知ったがこの日だけで10人の男子生徒を騙し・・・訂正、勧誘し部への稟議を生徒会へ上げたが現段階では予算が用意できないことを言われた為、本年度は同好会止まりとなるようである。

この筋肉同好会が体育祭で旋風を巻き起こすまで後僅かなのかもしれない。


HRで鳴ちゃん先生が連絡事項をしている傍らでポージングをする2人をがいる。

鳴ちゃん先生も金剛先生に物申したい視線を投げかけたが「ああ、気にしないで連絡事項をお願いします。ちゃんと筋肉で聞いてますから、なぁ栖山」「勿論です、筋肉にちゃんと聞かせてますから安心してください」と訳の分からないことを言われ鳴ちゃん先生は諦めた様で、空気としてみなすことを決めたようだ。

連絡事項は体育祭のについての事で、白組紅組の振り分けが行われることとなるようだ。

GW前に一度それぞれの組に分かれ色々な話し合いが持たれたりするらしいのでその時に体育祭の詳細は聞いて欲しいとのことだった。

クラスでは「同じ組になれると良いね」「景品は何だろう?」等々の声がしている。

皆それぞれに楽しみにしている様である。

抽選の結果、俺の仲の良い面々は白組に智、清美、タツ、朱莉さん、蛭田。

赤組が俺、天音、紗姫、京と別れた。

因みに越近も赤である。

後程他の学年の仲の良い知り合いたちの組み分け状況を聞くと、白組に涼子さん、乙女、小町が入り、赤組には一美さん、杏子、花が入っていることを知った。

そして、先生たちもそれぞれに赤白に別れて先生たちも競い合うとのことだ。

俺たちのリーダー的先生は釜田かまだ先生と言う乙女のクラス担任とのことを聞いた。

何でも金剛先生と釜田先生とはライバル関係で、事あるごとに競い合うらしいのだが・・・

乙女曰く、釜田先生は心は乙女、体はマッチョとのことなので何となくキャラの濃さが察せられる。

「凄く良い先生だけど・・・」と乙女・一美さん・涼子さんが微妙な苦笑いで言うのだがその無言の先の言葉を聞くのが怖いぞ。

そして、予想通りと言えば予想通りかと思うが、ライバルの金剛先生は白組のリーダー的先生となるようだ。

何にしても体育祭は盛り上がることであろう。



登校中の雑談でマッスルコーヒーの事を京に面白い喫茶店があると言う事で話しのネタに話してみたら行ってみたいと言われ皆でマッスルコーヒーへと来ているが、何故か栖山も来ている。

京に聞いてみると、昨日のクラス委員の集まりの時に雑談でマッスルコーヒーのことを栖山に話したそうだ。

凄い食い付きで一緒に連れて行って欲しいと懇願されたことで今一緒に来ている。



「ここが桃源郷マッスルコーヒーか」

「いや、ただの喫茶店だからな」

「いや、ただの喫茶店と言うのは失礼だ。あの店長の筋肉を見ろ」



店長を見ると、何時もの筋肉ムキムキの紳士がそこでポージングを決めている。

こちらの視線に気が付いたようでニッコリと微笑みながらこちら向きでポージングを決めている。



「見ろ、あの曲線美と筋肉の躍動を!!」

「あはははは~栖山君は筋肉同好会だから店長さんと気が合いそうだね~」



智がそう言うと栖山は顔を横に振る。

何でか解らないが理由を聞こうかと思っていると栖山の方からその理由を口にした。



「いや、あんな素晴らしい筋肉の持ち主に対等に話すなど恐れ多い事だ」

「え?金剛先生とも仲いいよ」

「本当か!!今度先生に紹介してもらうか・・・」

「いやいや、今紹介しようか?」

「え?良いのか?ワイズマンさんだったな、頼む紹介してくれ!!」



智がドン引きしている。

引き攣った笑顔とも言えないような笑顔で応対する智は珍しいが、その気持ちは見ていて解るので智に任せよう。

君子危うきにはである。



「店長、ちょっといい?」

「はい、ご注文ですね」

「あはははは~注文は少し待ってね。今日はここに是非来たいと言う同級生を連れて来たんだけど紹介しても良いかな?」

「勿論ですよ。若しかしてそちらの彼ですか?」



そう言って店長が栖山の方を見ると、そこには緊張でガチガチの栖山が居た。

そして、筋肉談義で花を咲かせていたのは言うまでも無いだろう。

店長は同じ趣味の同志と知ると満面の笑みで彼に答えていた。

金剛先生と筋肉同好会を立ち上げ筋肉甲子園を目標とすることを伝ええると「大変喜ばしい事ですね」と嬉しそうにウンウンと頷いている。

筋肉談義を始めた2人の世界を邪魔しない様に他の店員さんを呼び注文をして俺達は俺たちで楽しく会話に花を咲かせたのは言うまでも無いだろう。

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