第10話 生徒会始動!!





「ああリュウ君!ちゃんと来たのね。偉いわ!」


生徒会室に入った瞬間、セーラー服にズボンと言う不格好の少女がボクのことを褒めちぎった。

昨日ボクと赤城会長は姉妹の儀を行ってエスになった。そしてスカートとズボンを交換したのだ。


赤城会長は多分しっかり、ズボンを穿いて学校にやってくるだろうと思っていたけど、実際に目の目でズボン姿の赤城会長がいると、なぜか嬉しい。


朝までボクはスカートで学校に行くのが怖くて、もう一つあるズボンを着ようか迷っていた。でも、きっと赤城会長はボクのズボンを穿いてくるんだ。赤城会長は約束をきっと守る人だから絶対そうに違いない。学校で出会ったときに赤城会長もボクもどっちもズボンだったら赤城会長に悪いのではないか。そう思うとボクはズボンに足を通すことが出来なかった。


ボクはこれだけ悩んだ。だからこそ、赤城会長がスカートではなくズボンで立ちすくんでいる姿を見ると赤城会長のためにスカートを穿いてよかったと思えたのだ。


「あれ、リュウ君その子は?」

「彼女は犬塚みじかさんです。まだ部活も決まっていないそうなので折角ですから生徒会にどうかな~と思いまして。」

「うちの義妹が女の子を連れ込んできた!!」

「人聞きの悪い事言わないでください!!」


本当に怖いことをサラッと言ってくる人たちが多すぎる。赤城会長を筆頭に犬塚さんやあやめ先輩。夕夏先輩も少し危うげな発言が時々聞こえてくる。


「初めまして!犬塚みじかと言います。ドラ君とは同じクラスで~す!!よろしくお願いします!」


犬塚さんが持ち前の明るさで、一気に場を和ませてきた。さすがのコミュ力だ。そんな犬塚さんの後ろに人影が……


「へぇ?君が犬塚さんね……話は聞いていたけどやっぱり綺麗でカワィィね……」

「ちょ、ちょっと!どこいきなり触ってくるんですか!!」

「え~??どれどれ?どこを触られているのか言ってごらん?」


あやめ先輩が名前も告げずにいきなり後ろから抱き着いて、犬塚さんを両手でつかんだ。

セーラー服のタイが乱れることを気にする様子もない中、犬塚さんはひたすらに逃げ出そうと全身を蛇みたい動かしていた。

そんな犬塚さんをしり目に、あやめ先輩は優しく上から下に撫でまわすように手をやり、特に犬塚さんの胸の上ではこねくり回して何周も撫でていた。そんなあやめ先輩のセクハラを犬塚さんはただモジモジするしかなかった。


「セクハラやめてくださいよ~!!恥ずかしい!!」

「女の子同士だからいいじゃ~ん。にして柔らかいね。夕夏のとは大違いだ。」

「喧嘩売ってるのかしら?買うわよ、私。」

「ひっーおっかないおっかない。冗談だから僕に向かって手をグーで威嚇するのはやめてよ。」


本当にサラッとこの人たちは爆弾を投下してくる。確かに夕夏先輩のお胸は運動で引き締まったスレンダーな体型をしているが、素晴らしい平野……ゴホン、素晴らしい体格をしていらっしゃいますから。とまあ口にはしないが、そこまで大きくはない夕夏先輩のお胸をあやめ先輩がいじったら、夕夏先輩はクールにだが確実に敵意丸出しに右手をグーにしてあやめ先輩の方を向けて臨戦態勢を取っていた。


「はいはい。自己紹介もまだでしょ。私は赤城聖愛、で、こっちの子が浅日夕夏。それとこのスケベさんが椎菜あやめちゃんよ。」

「よ、よろしくお願いします!あと、昨日はありがとうございました。」

「昨日……嗚呼あれね。別にかまわないわよ。でも、もう乱れちゃってるわね。」


身を乗り出すと、あやめ先輩のめちゃくちゃにされた犬塚さんの胸元に手を伸ばした。またあやめ先輩のように触られるのではないかと思った犬塚さんはビクッと体を震わせて目をつむっていたが、そんな彼女をお構いなしに乱れてしまったタイを結びなおし、折れたセーラーカラーを元通りにして綺麗に整えた。


「リュウ君……今日1日大丈夫でしたか?ちゃんと義妹としていい子に出来ましたか?」

「ええ大丈夫でしたよ……でも、スカート穿いていると『誰の義妹になったの??』とか、赤城会長の義妹になったって答えたら、『どうやって赤城会長の義妹になったの??』とか、質問攻めで大変でした。」

「それは私も同じだわ。ほら、うちの学校は女子用のズボンは無いですから、『どうしたのですか、会長!?』、『誰を、誰を義妹になさったの??』とか質問に来る人が多すぎて、昼休みは教室の外に一歩も出れないどころか私に質問しようと廊下に列までできてましたから……」

「それは大変でしたね……」


どうやらお互いに苦労は合ったようだ。

それはそうだ。本当に今日は大変だった。クラスメイト達以外にも話したこともない子も声を掛けてきて、歩けば少し遠巻きにヒソヒソと指をさされていた。


「会長は学校に来るまで大丈夫でしたか?ボクは学校の中ならともかく、電車でもスカートだったので少し恥ずかしかったです……」

「ああ、それなら聖愛は学校から家まで近いからあんまりそう言うのは気にならないんじゃないか?」

「ええ、そうですね。少し歩いた先の総領事館の近くにありますね。」


ボクの質問に対して、なぜか夕夏先輩が答えたがどうやら赤城会長の家は結構近くにあるらしい。

と言うか、総領事館ってかなりの一等地にあるはずだ。そんなところにある赤城会長ってやっぱり……


「そう言えば、リュウ君には会計を任そうと思ってたの。はい、これ会計の表札。犬塚さんは……書記と庶務が余ってるけどどっちがいい??」

「書記でお願いします!!」

「分かったわ……じゃあ、これで本年度の聖メリア女学院生徒会が本当の意味で指導するのね!!」


渡された黒くて重い棒には金色の文字で会計と書かれていた。

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