3章 お泊り会
第24話 お泊り会①
それからしばらくして、今日の生徒会は終わって解散となった。
ボクは帰る準備をしながら母さんに今日はお姉様の家に泊まることをLINEで伝えた。
「じゃあリュウ君帰りましょうか!!」
お姉様の元気な声が床の木目に響いた。どうやら、お姉様はめっちゃ嬉しいらしくてうきうきした様子でバッグにプリントをしまっていた。
フッンフフフ~と、軽く鼻歌を歌いながスキップして廊下を歩いていた。
「ねえリュウ君!手をつなぎましょう。」
「……良いんですか??」
「可愛い義妹ちゃんの手を握らせない姉がどこにいるんですか??」
しばらく歩いていたころだった。お姉様が右手を出して来て、手をつなぎましょうとルンルンで言って来た。断る意味は無かったけど、今まで公衆の面前で手を握ったことが無かったから、心配してしまう。
周りを見渡すと、もう夜だからか生徒がいる様子は無くて、まだ電気の付いた教室で変える準備をしている人が数人いるくらいだった。
これくらいだったら、手をつないでも大丈夫だろう。そう思ったボクは勢いよくお姉様の手を握った。
「リュウ君の手、ひんやりしていて気持ちいい……」
「夏はいいですけど、冬は冷たいですよ。」
「その時は私が手を温めてあげるわ。」
お姉は様はボクの手を強く握った。
それはまるで捕まえた獲物を逃がさないようにする動物のようだった。
手をつないだまま校門をでると、本格的に今日はお姉様の家に泊まるんだという気分になった。
聖メリアは丘の上にある学校だから、普段は駅に向かうために山を下りて行く。大半の人は学校から駅へと向かっていくが、お姉様の様に山手に家がある人はそのまま家へ帰る。
お姉様の家はどうやらここから少し歩いたところにあるらしい。
「お姉様の家はどこら辺にあるんでしたっけ??」
「ここから少し先の公園とか韓国領事館の辺りにあるわよ。」
「結構近いですね!!」
「もともと学園の近くの土地に建てたらしいわね。」
空がだんだんと漆黒に刻まれて行って、月が天へと昇っている。
今日は綺麗な三日月で、形のよい弧を描いていた。
お姉様と手を繋いで一緒に歩いているのは気分がよかった。
それはお姉様も同じみたいでどこかルンルンとした笑顔を見せながらボクと一緒に帰っていた。
ここはさすがと言うか、お姉様は義姉らしく義妹を守る様に道路の外側を歩いて、ボクを道路の内側を歩かせた。
お姉様と一緒の下校はすぐに終わってしまった。
それくらいお姉様の家と学校は近かった。
そしてお姉様の家は本当に大きかった。
「ここが私の家よ。」
「ここが……聞いていたよりも何十倍もデカい……」
「そう?そんな大きい家って程でもないわよ。ほら、近所の家と比較してみなさい。特段で海って言うわけじゃないでしょ!!」
「いやいや大きいですって!確かに周りの家もお姉様の家くらい大きいですけど、普通の家の何十倍も大きいですよ!」
お姉様の家は高級住宅地の一角にたたずんでいて、木製の家と近現代的な大きな窓が特徴的だった。
家の前には車が二台止められていて、どちらもアウディーとクラウンで高そうな車だった。
そんなこのおうちがさぞ、普通の家であるかのようにお姉様は言うがさすがに擁護できない。この家は……と言うかここら辺の家は異常だ。
「どこか適当にものを置いていってね。私はその間にお風呂の準備をしちゃうわ。」
お姉様はどこか行ってしまった。最初に連れてこられたのはリビングで、大きなテレビと高い天井。そしてそこから垂れ下がっているシャンデリアなどすごい物がいっぱいそろっていた。
取りあえず、荷物を適当に机のそばの床に置くと、ボクはソファーへと腰かけて体を休めた。ソファーは黒い革製で普段座っているソファーの何千倍と柔らかかった。
(ここがお姉様の家……)
お姉様は生まれてからずっとこの家で過ごしてきた。幼稚園児の頃のお姉様や小学生の時のお姉様。中等部のころのお姉様にボクが入る前。1年生のころのお姉様。そんなお姉様の歴史がこの家には詰まっている。ボクはそれを肌身に感じようと、必死に小さい頃のお姉様を想像していた。
すると、一枚の写真が目に入った。
どうやら家族と旅行先でとったらしいその写真は後ろに学園長、つまりお姉様のお父さんがいた。
隣にはお母さんらしき女性の人がいて、真ん中にあの日のデートの時のような真っ白のワンピースを着たお姉様がたたずんでいた。
「お姉様、この写真は……??」
「ああこれは……??これは確か去年の夏に行ったバリ島での写真だったと思うわ。良いでしょ、久しぶりに家族で旅行に行ったから楽しかったわ。」
「そう言えば今日って学園長……お父さんとかって家にいないんですか??さっきからこの家にはボクとお姉様以外の気配を感じないんですが……」
「お父様は今日は会食があるらしいわ。お母様はいつもどおり働いててあまり家には帰ってこないわ。この家のことは基本的にお手伝いさんに任せているから、やらなくても安心だしね。」
お姉様の目は少し寂しそうだった。
「あ、そうだリュウ君!今晩何食べたい??」
「晩ご飯ですか……そうですね……」
「何でもいいわよ。」
お姉様と一緒に食べる晩ご飯。悩ましい。何を頼もうか……
お姉様が作りやすくて、それでいて嫌いじゃなさそうな物。
そうだ、あれにしよう……!!
「お姉様!ボク、オムライス食べたいです!」
「オムライス、良いわね。じゃあそれにしようか。」
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