第23話 義妹にボクはなれない
「……リュウ君は私といることが嫌だったの?」
「嫌だとは言ってません!間違いだと思ってるんです……」
「間違い……??」
「ええ、そうです。間違いです……」
重たい沈黙の空気を破り去ったのはお姉様だった。
悲しそうな顔でボクを見つめながら、お姉様は震えた声で質問してきた。
「……そんなに性別って大事かしら?別に私がスカートじゃなくてリュウ君のズボンを着ているけど、だからって問題あるかしら?今時私が学校にズボンを穿いてきたって、文句を言って来た人はいなかったわ。」
「……だからってどうして、許されないはずです。男という忌避すべき存在なんです!!」
「……そこまでなの??何がリュウ君をそこまでかたくなにするの??私には分からないわ」
本当に困惑したような眼でお姉様はボクを見てきた。どこまでボクはお姉様を悲しませてしまうのだろうか……??でも、だからと言ってこんなおかしな関係、何時か終わらせないといけないのだ。これから関係を持ったとしてもお姉様を不幸にするし、関係を終わらせたとしても不幸にしてしまいそうだ……
「何が問題なの?私分からないわ!!私とリュウ君、どこが問題なの??」
「ボクが男だからです……ボクが男だから……お姉様のそばに入れないんです……」
「だったら男辞めればいいじゃない。ほら、前に夕夏ちゃんが言っていたじゃない。女の子になればいいのよ……」
女の子になる……確かに前に夕夏先輩に言われたけど、ボクができるかどうか分からない……確かに毎日お姉様のスカートを穿いて学校にやってきてはいるけど、だからと言ったって女の子だというわけじゃない。
どこからか、女の子か?それは定義がたくさんあるし、人によってまちまちろう。けど、ボクはこう思う。
女の子には女の子の空気感があるのだと!!
女の子特有の優しく甘い空気感、近くてどこか切ないあの女の特有の柔らかい関係性。それこそが女の子を女の子たらしめているのではないだろうか……だからボクは女の子にはなれないのだ。ボクは肉体から男の波動を出し続けている。
それは、歩き方だったり、食べ方だったり、あとは距離感だったりと、そう言った細かいものがボクを男たらしめてしまったのだ。
「……もういいわ。なんかこのしんみりとした空気嫌いなのよ。やめた止めた。」
「え、お姉様どうして……??」
「リュウ君は意固地だから、どうせ私が何か言ったところで一朝一夕では変わらないわ。だったらもういいわ。この話はおしまい!!」
まるで、もう閉店しましたとでも言わんとするように、お姉様は両手を叩いて最初にいた、生徒会長の椅子に座ろうとしていた。
みんなそんなお姉様の行動に驚いていて、ボクとお姉様との会話を注視していたころから動けずにいる。
黙ったまま、2人が言い合っていた、ボクもお姉様もいなくなった場所を見つめていたのだ。
「お姉様……ごめんなさい……」
「別にいいわよ。どうせリュウ君には私にも言っていないことを何か隠してそうだし……」
ギクッ……!?お姉様にボクの過去を話したことはないけど、どこか見透かされているのだろうか??さすがお姉様だ。
ボクはお姉様に謝っていた。お姉様には謝っといた方が良いといつか誤っていた。
「けどね……私怒っているの……リュウ君に私よりもみじかの方が相応しいって言われたことに……」
「それは……確かに思っていますけど……」
「まあ、そうでしょうね。リュウ君変わらないから……でも、私が義妹のことをどれだけ大事にしているかを分からせてあげるわ……」
「お、お姉様……!?」
ボクの体の上、頭をわしづかみにしながら笑みを浮かべた。あ、ヤバイ。これは怒ってる……
怒りにまみれたお姉様は頭を握った力を少しづつ強めて行った。お姉様の握力どれくらいあるのだろうか??予想だけど、感触的に30㎏以上はあるはずだ……ボクは15㎏も無いのに……
うッ。あ、これもしかしたらだいぶヤバい奴かも……リンゴみたいに頭を握りつぶされそうになってる。
「リュウ君、今日は私の家でお説教です。」
「お、お姉様……??」
「さっき言ったでしょ、私がどれほど義妹を愛しているのか分からせるって……今日は金曜日で明日学校ないし、それにもうすぐテストも近いし、一緒に勉強でもしますか??」
お姉様がまた突然、変なことを言い始めた。お姉様の家には行ったことは無いけど、話を聞いている感じだと多分結構大きいっぽい。というか、まあそもそもマンションの一室のボクの家に比べれば一軒家は大体大きいけど……
お姉様の言えってどんな感じなんだろうか?大きな家ってテレビとかでしか見たことないから想像ができない。真っ黒なマホガニーで出来た大きな家にリビ
ングには暖炉があって、大きなアイルランドキッチンでもあるんじゃないか??
まあ、とにかく想像できなかったけど、ちょっと興味はあった。
「……でもお姉様。ボク今日泊まる用意できてませんが。」
「べつにそれは問題ないわ。寝間着くらいだったら私の家で用意できるし、ある程度のお客様が泊まれる用意はすでに整っているわ。」
さすがお姉様の家くらいになると、いつでも泊まりに来る人がいてもいいように準備はされているのか……
やっぱり金持ちの世界はボクが知らない世界だ。
「へぇ~ドラ君、今日はお姉様の家に泊まるんだ~いいな~。そうだ、今度リュウ君の家に泊まらせてよ!!」
「別にいいけど、せっまいマンションでボクと一緒に川の字で眠ることになるけど大丈夫??」
「……やっぱいいわ。」
「お姉様と違って貧乏人の家でごめんさいね。」
みじかがボクとお姉様だけの空間を破壊してくれた。
いつもと変わらず、軽口を叩き合っている。
窓の日差しはもうすぐ太陽が落ちそうで、暗くなりかけていた。時間を見ると6時を過ぎていて、もう帰らないといけない時刻だ。
さあ、行こうか。お姉様の家へと。
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