第30話 お泊り会⑦ エスの始まり


 

 

 

 向いたまましばらくすると、シャワーが落ちる音が止まった。

 どうやらお姉様のシャワーが終わったみたいだ。

 ボクはついさっきまでとは違ってスッキリとした頭で、でもびっくりとして混乱した頭でお風呂に浸かっていた。

 

 「後ろから入るわよ~」

 「お、お姉様一緒に浸かる気ですか!?」

 「もちろんよ。リュウ君も私がシャワーを浴びている時にお風呂に浸かっているってことは、大体想像がついたんじゃないの??」

 「まあ、そりゃ……」

 

 ドボンと水しぶきが飛び出る音がして、背中が揺れた。

 お姉様がボクの後ろに入って来たのだ。

 ボクの体をお姉様が見ているかもしれない……そう思うと複雑な気分になった。

 

 「えへへ。実は私リュウ君と一緒にお風呂入りたかったんだ~!!」

 「そうなんですか……!?どうして??」

 「義妹と親睦を深めて、デートに行って、家に泊まって、一緒にお風呂に入る。そんな姉妹の話をたくさん聞いてきたからね。私もそう言うのに憧れたんだ……」

 「やっぱりそう言う話ってよくするんですか??」

 「そうね。特に中等部のころは姉や妹にどんな子が良いかってよく話していたわよ。」

 

 両手を組んだお姉様はそのまま体を押し寄せてきた。

 瞬間背中に柔らかい感触がやってきた。

 

 コンクリートのように固いボクの背中を包み込むようにお姉様は後ろから抱き着いてきたのだ。

 よくお姉様には義妹の義務だとか言って抱き着かれるが、その数1000倍は柔らかいで特別な感触が、服も着ずに直接触れた柔らかみに心が引かれていた。

 

 「お、お姉様距離が近いです……近すぎます……!!」

 「リュウ君、さっきはお姉ちゃんのことを膝の上に乗せてくれたじゃない。だから、次は私の膝の上にリュウ君を乗せてあげるわ。私の膝の上に来なさい。」

 「え、えっと……お姉様どうすればいいのですか??」

 「私が座るから、そこにちょこんと座りなさい。お姉ちゃんの命令だからリュウ君に拒否権は無いわ。」

 「ええ、こういう時のお姉様には抵抗するだけ無駄ですからね……」

 

 ボクは方から上だけを露出した形で風呂から起き上がっている。

 ずっと壁を向いていたから、お姉様がどんな格好をしているのか知らないが、きっとバスタオルを巻いていると信じておこう。

 

 ボクは全身を一歩後退させた。

するとお姉様は足を変えたらしく、そこに腰かけるとお姉様の柔らかい太ももが実感することが出来た。

 どうやらお姉様は正座したらしく、ボクはそこに座って足を後ろに伸ばした状態。つまりは女の子座りと呼ばれる座り方をした。

 

 生肌と生肌とが触れ合う。

 

 卵のように柔らかく、すべすべとしたお姉様の肌がお湯の中でとは言え、ボクが感じることが出来た。これが義妹の特権なのだろうか……

 

 「お、お姉様……いきなり抱き着かないでください……いろいろ当たっちゃっています……」

 「特に問題ないわよ。私の義妹なんだからそれくらい我慢しなさい。ところで、リュウ君知ってる?この義理姉妹エスっていつからできたのか??」

 「確か大正時代なんじゃないかなと思います。前にみじかが大正時代が始まりだって教えてくれたと思います。」

 「そう知っているのね……じゃあ、なんでこの関係が広がったと思う??」

 「それはなんでなんでしょうね……??」

 「それはねぇ~」

 

 もったいぶった感じでお姉様は抱き着いていた。

 当然のことながら、お姉様に抱き着かれるといろいろなものが当たってしまう。

 お姉様の小ぶりなお胸に柔らくて触り心地のよい太もも、普段は隠れていてたまに当たってくるおなかもすべてをさらけ出した状態でボクの体に触れてくる。

 

 そんな具合でお姉様の体の上で甘やかされながら過ごしていると、エスの話になった。どうやらエスは大正時代のころからある物らしい。

 実際、どんな感じだったかは今を生きているボクには分からないけど、聖メリアみたいな古くて大きな学校だったらありえそうな話だ。

 

 「昔はね、女性が大学に進学したり、就職したりすることは無いから、聖メリア女学園を卒業したらすぐに結婚していたのよ。」

 「結婚ですか……それも卒業したらすぐってことは18歳くらいで、ですか……」

 「ええそうよ。当時は自由恋愛なんて無かったし、その上貴族の子女たちが通う聖メリアの卒業生は家同士の関係性をよくするために嫁がされていたのよ。」

 「好きな人とも結婚できずに……」

 「そうよ。だからせめて学生の間だけでも自由に恋愛したくて、義理姉妹エスという制度が出来たのよ。」

 

 お姉様の口から語られる聖メリア女学園の過去……自由に恋愛したかった大正時代の女の子の魂が伝統となってお姉様たちの体に入り込んでいるのだ。

 昔は悲しい出来事だったけど、時代が重なるにつれてそれは聖メリアの誇りとなり伝統となった。

 大正時代とは打って変わって、自由な恋愛が出来る現在でもそんな伝統を守るということはきっと、あの大正時代の少女たちを忘れないようにと言うことなのだろう。

 

 「義妹は一人の年上の女の子のことをお姉様と呼び、義姉は一人の年下の可愛い娘を呼び捨てにする。そんな制度を大正時代からずっと引き継いできたの……だからリュウ君も来年は一人の義妹をめとって立派なお姉様となるのよ……」

 

 「来年のことは分かりません。だけど、ボクに義妹が出来てもお姉様は優しくしてくれますか??」

 「当り前じゃない。お姉ちゃんのことを何だと思っているの!?リュウ君は一生可愛い私の義妹よ。」

 

 嬉しい言葉が出てきた。夜はまだまだ続く。そしてお風呂も今宵は長湯になりそうだ。

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