第27話 お泊り会④ オムライスとライオン
オムライスは綺麗に作られていた。
真っ平で黄色のオムライス。白いお皿とコントラストを描いた平べったい空気が抜けたラグビーボウルのようなオムライスがボクの前には置かれていた。
ほぼ完璧なオムライス。まるでお店の料理のようだった。
ただ一つだけ欠点あったとしたら、上に描かれた大きなハートマークだろう。
不恰好なそのハートマークはオムライスを作ったお姉様が描いたはずなのに、まるで別人のように思えて仕方がない。
あんなに美味しそうなオムライスを作った人が、あんな下手くそなハートを描いたのだと思うと、なぜこんなことが起きるのか?と思わざるおえない。
「どう、美味しい?リュウ君??」
「ええ、とっても美味しいですよ。お姉様が作ったとは思えない、老舗の料理店で作られたかのような味です!!」
「いッひひーそれは嬉しいわ。お姉ちゃん頑張った甲斐があるわー」
「お姉様もどうですか?ボクが頑張って描いたハートマーク付きの大きなオムライス、美味しいですか?」
「当然よ。これを食べてれば『二人は仲良し世界一』になれそうね。」
楽しくオムライスを食べていた。オムライスは実際かなり美味しい。柔らかい卵が暖かなチキンライスと混じっていて、その中に小さく刻まれたにんじんと玉ねぎが入っている。このにんじんはボクが切ったやつで、玉ねぎはお姉様が保護メガネをつけて切ったやつだ。
泣きながら頑張って切ったその玉ねぎは甘い味を出していて、ゴツゴツとした鶏肉と合わさることで良い味を出していた。
「う〜ん。我ながら美味しくできてるわーそう言えばリュウ君はオムライスが好きなの??」
「好きというか、母さんが昔よく作ってくれたんですよ……思い出の味です。」
「じゃあ、私のオムライスも思い出の味になるようにいっぱい作ってあげるは。明日も明後日もいつでも。」
「毎日はきついですよ……まあ、でもボクはお姉様が作ったのだったらいくらでも食べれますけどね。」
「さすがリュウ君は私の義妹だわ。」
「やっぱり撤回。お姉様のようには食べれませんね。」
「ふんだ。リュウ君が少食すぎるのよ。私は普通の高校男子くらいしか食べてないわ。」
「それ死ぬほど食べてるじゃないですか!?」
でも確かに高校生の男子、特に運動部だったらお姉さまくらい食べてそうだ……
というか、そう考えるとお姉様は男子高校生並みに食べているのにこんな痩せているなんて……
一体どこに脂肪が消えているのだろうか??
ボクの視線はスレンダーなお姉様の体を捉えていたのだった。
「美味しかったわね。」
「本当にお姉様は早すぎるんですよ。なんであんなにあるのにボクより早く食べきれるんですか??」
「リュウ君がリスみたいに小さな口で食べているのに対して、私はライオンみたいに大きな口で食べているのよ。」
「そんな野生的じゃなかったですよ!!もっとお淑やかで優雅に食べていたのに……」
「百獣の王様だからね、ライオンは。王様だから優雅に食べるのよ。」
「色々な意味で敗北した気がする……」
「ザコザコ義妹ちゃん、負けちゃえ……」
いつものようにお姉様が先に食べ終わった。お弁当の時もそうだが、お姉様は優雅に食べるのにすぐに食べ終わってしまう。
生徒会室で食べているお姉様を見ていると、あやめ先輩とかゆう周りは小さなパックに詰められたお弁当に対して、お姉様は二段のお弁当箱を持ち込んでいて、ほんの10分程度で食べ切っている。
そしてそのまますぐに遊びに行っている。相手は夕夏先輩だったりあやめ先輩だったりボクが知らない人だったりとまちまちだが、どうやら楽しそうにしている。
「さ、さっさと食べちゃいましょう。そしたら今日はいろんなことしましょうよ!部屋でリュウ君と一緒に漫画を読むのもいいし、ゲームもいいわね~」
「勉強は大丈夫なんですか??もうそろそろテスト近いですし……」
「明日は土曜日よ。それなのになにが悲しく勉強しないといけないのよ!!」
「ボクお姉様と一緒に勉強するためにお姉様の家に誘われたと思うんですけど……」
「そんなものリュウ君を家に連れて行くための誘い文句に決まっているじゃない!!」
「騙したんですか!?」
「騙してなんかいないわよ。そもそもリュウ君が私の家に来たがらないのがいけないのよ。なんで義妹なのに私の家に来たくないの……??」
「それはみじかとお姉様が……」
「・・・・・・ああ、そうだったわね。まあ、いいわ。でも私は少なくともリュウ君の義姉である限りはお姉ちゃんとして接するからね。」
スプーンは進んで、オムライスはお皿から消えてしまった。お姉様はお風呂を洗いに行ったらしく、ボクは遊んでいる様に言われたけど、さすがにそれは嫌だったから、お皿を洗うことにした。
お姉様は最初はボクが手伝うことを少し嫌がっていたが、義妹だからやるのは当然だと言ったら、しぶしぶ納得してくれた。
一人でやっていたら途中からお姉様が入ってきた。どうやらもうお風呂の支度が終わったらしい。
それからしばらく二人で他愛もないことを話しながらお皿洗いをしていた。
お皿洗いは水仕事で冷たくて面倒だけど、お姉様と一緒にやるとまるで一瞬で過ぎ去る様に終わったから、これならもっとお皿があっても良かったなと思った。
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