第28話 お泊り会⑤ スモモの香り





 「ねえ、もう晩ご飯も食べ終わっりましたし、お風呂が沸くまで私の部屋で漫画で読んでましょうよ。」

 「……!?良いんですか??」

 「何か不都合な事でもありますか??」

 「いや、ボクがお姉様の部屋に行ってもいいのかなって……」

 「嫌なわけないでしょ!!リュウ君はいつもそうだけど、私の義妹なのに距離感が遠すぎるのよ。普通の子はもっと近いわよ。」

 「お姉様の距離感がバグっているだけです!!ボクはたいして普通の距離感です!!」

 「……やっぱ女の子しかいない環境に長い事いると普通の距離感ってつかめなくなるわね。」

 「まあけがれていないってことで、いいことなんじゃないですかね……」

 

 そんなことでお姉様の部屋に行くことにした。

 お姉様の部屋はどうやら二階にあるらしくて、お姉様の後にくっつくようにして付いていった。

 ここだけ見るとまるで姉弟みたいだが、ボクらの関係は義理姉妹エスなのだ。

 

 

 

 「ここが私の部屋よ。あんまり面白みは無い部屋だけど、漫画はたくさんあるわ。」

 「確かにそうですね。でも、お姉様の香りが染みわたっています。」

 「え、なにそれ……大丈夫、変な匂いじゃないわよね。」

 「旬が来る少し前の若々しくて少し硬いスモモの香り漂っています。いい香りですよ。」

 「それならよかったわ……どう、私からスモモのいい香りする??」

 

 お姉様が突然振り返ったと思うと、頭を下げてうなじをボクの顔面のそばへと持ってきた。

 そこまで近くないというのにお姉様の髪からは少しいい香りがする。

 日中の太陽を浴びて、それで汗もかいてシャワーもまだ浴びていないのに何でこんないい香りがするんだろう……

 

 「やっぱ辞めた。リュウ君にまだ嗅がせるのは早かったわね。」

 「どうしたんですか、いきなり後ろを振り返ったと思ったらこっちを向いて……??」

 「今リュウ君に嗅がせるよりも、いい匂いの時に嗅がせたいからね。」

 

 そこまで言うとお姉様はボクの耳元に囁いた。

 

 「お風呂上がりのつやつやのシャンプーのいい香りのする髪をリュウ君には嗅がせて、あ、げ、る。」


 ボクの顔は真っ赤になってお姉様の目をとらえられずにしどろもどろになっていた。

 顔をそらせばいいはずなのに、それはどうしてか出来ず、お姉様の方を向きながらも目を合わせなかった。

 

 「……お姉様、本気ですか??」

 「リュウ君、やっぱ嬉しいの!?」

 「その逆です!!いいですか、女の子の髪は痛みやすいんですから安易に変なことしてはいけません!!」

 「えぇ~私だって~リュウ君以外には嗅がせないわよ……リュウ君だから嗅がせてあげるのよ……」

 「…………ッ!!」

 

 本当にこのお姉様は……

 とまあ、ボクが黙っている間にお姉様は漫画本に手を伸ばしていた。

 やはりと言うべきか、慣れた手つきで本棚から漫画を取り出したお姉様は、ベッドに腰かけた。

 

 「ほら、リュウ君も漫画読みなよ。面白いわよ。」

 「そうですね……ボクも読みますか……」

 

 さっきお姉様が手を伸ばした本棚に行った。本棚の漫画は多種多様な種類があって、まるで本屋のようだった。

 その中で最近見たアニメになっていたけど、読んだことのない漫画があったからそれを取り出して床に座った。

 

 「あれ、リュウ君もこっちくればいいのに……」

 「いや、いいですよ……だって、そこお姉様が普段寝てるベッドですよね。そんなところではさすがに座れませんよ……」

 「むぅ~。もうちょっとリュウ君は図々しくなった方が良いと思うわよ。」

 「そうですかね……??」

 

 ボクが床に座って、お姉様がベッドに座って……

 幸いお姉様はボクのズボンを穿いているので下着が見えることは無い。でも、まっすぐ伸びたお姉様の足をぴっちりと締め付けているズボンはどこか芸術的な美しさを感じた。

 

 お姉様は140㎝といくぶん小さく、当然ボクの方が大きい。だから普段はお姉様の方が年上だけど、見下されている形になる。

 けど、この体勢ならボクの方がお姉様に見下されていることになる。

 珍しくボクのことを下に見れたお姉様はどこか上機嫌にふふ~んと鼻を鳴らしながら漫画を読んでいた。

 


 「この漫画面白いわよね。」

 「そうなんですね、この漫画はここのシーンとかいいと思います。」

 「ああそこ良いわよね!!」

 「ええ。面白いです。」

 「……ねえ、リュウ君少しいいかしら??」

 「なんですか??」

 「飽きた!!リュウ君の隣で一緒に漫画読みたい!!」

 「そんなスーパーの前でお菓子をねだる子供みたいなことしないでくださいよ……」

 

 しばらくボクが床で、お姉様がベッドで漫画を読んでいた時のことだ。

 どうやらお姉様はボクと一緒に漫画を読むことがご所望らしい。

 でも、そのためにはお姉様がボクの隣に座るか、ボクがお姉様のベッドのところに腰かけないといけない。

 

 まず、お姉様のベッドにボクが腰かけるのはあり得ないから前者だろう。

 

 「じゃあ、お姉様。ここに来てください。」

 

 ボクは座っていた床の隣を軽く叩いた。

 お姉様は特に文句を言うことなくベッドから立ち上がったから、ボクは一安心して漫画に戻ろうとすると、お姉様が口を開いた。

 

 「やっぱナシ。リュウ君の隣に座るのはあんまり味がないわ。ねえ、リュウ君の膝の上に座らせてよ!!」

 「何言ってるんですか!?出来っこないでしょ。」

 「出来ないことなどこの世にないのだよ、ワトソン君。ほら、リュウ君あぐらかいて。そしたら真ん中に私が座るから、一緒に漫画読みましょうよ!!」

 

 ボクの体を引っ張ったりして、まるでプラモデルを作る様に自由に動かしてボクにあぐらをかかせると、お姉様は勢いよくその上に座って来た。

 

 「ぐわぁぁぁー……」

 「なに、まさかリュウ君私の体が重かったとか言うわけないわよね。」

 「お、お姉様の体は軽くて柔らかかったです。」

 「OK問題ないわ。……柔らかかったの??」

 「……ええ」

 「やった!!」

 

 上から振り下ろすようにお姉様の体が落ちてきたので思わず声を漏らしてしまった。

 それをお姉様が、体重が重いから声を出したのかと勘違いしてしまったみたいだ。

 全然問題ない。羽みたいにお姉様は軽い。

 それにお姉様の体は本当にふわふわの生クリームよりもやらかい体だった。

 

 そんなお姉様を膝の上に抱えて、再び漫画を読み始めた。

 次はボクとお姉様。二人一緒に。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る