第8話 お風呂の中にて
「よし、じゃあ脱がせたわ。これで出来るわよね?」
「ありがとうあやめちゃん。それじゃあお互いに交換してね。」
あやめ先輩はボクのお腹に抱き着くと両手でズボンのホックに手をかけて一気に下半身を降ろしてきた。ボクはパンツを穿いたまま3人の前に立たされてしまった。
隣の赤城会長はセーラー服の裾からの伸びた白のスリップでパンツは隠れていたが、肌に密着したスリップからは赤城会長の体つきが漏れ出ていた。
それなのにも関わらず、赤城会長は堂々としていてむしろこっちがなんてこともない事なのに恥ずかしがっているのではないかと錯覚してしまいそうだ。
「リュウ君のズボン、やっぱり少し大きいね。私のスカート合うのかしら?」
「大丈夫、ぴったりそうだよ!」
「あ、あやめ先輩。ちゃんとボク1人で着れるんで無理やりスカート穿かせるのやめてください!」
「え~穿き方わかるの?」
「さすがに分かりますよ!!」
無理やりボクのズボンをはぎ取った先輩3人組はスカートとズボンを交換すると、脱がせた時と同様にあやめ先輩がスカートを穿かせてきた。一方で赤城会長は一人で淡々とボクのズボンを穿いていた。
ボクは恐怖にたじろぐしかなかった。
ドボン!
湯舟に飛び込むように入湯すると、全身に温かいお湯が掛かり始めた。
お風呂に浸かると、いろんなことが思い浮かぶ。今日あったことだったり、これからどうなるんだろうという未来への考えたりだったりとお湯の温かみで思いめぐらせる。そこまで広くない自宅の湯室はなぜだか知らないけど親しみを覚える。
「ふぅはー!!今日は本当にいっぱいあったな……」
ふと、ひとり言が漏れ出てしまう。そのレベルで出来事が多すぎた。今日、ボクに義理のお姉ちゃんが出来た。それも世界一可愛い赤城聖愛会長だ。どうしたらこんなことになるのだろうか?
そもそもボクは高校3年間誰とも付き合わず、遠くから見守るという鉄の誓いがあったはずだ。けど……それをこんなすぐに反故にしてしまっていい物だろうか?
というか、そもそもとしてボクは赤城会長と言う素晴らしい人間の隣に立つ人間としてふさわしいのだろうか?・・・・否。まったくもってふさわしくない。
ボクは本当にどうしたらよいのだろうか?
相談しようにも、誰も相談できる相手がいない。
ここに来て、今までの行動が裏目に出てしまった。
「義妹か……義妹!?そうじゃん犬塚さん!!赤城会長にふさわしいのは彼女だと放課後までは言ってたじゃないか!ああどうしようか?」
すっかり忘れていたが、犬塚さんと赤城会長の関係はそこまで悪い関係性ではないはずだ。赤城会長の方は犬塚さんのことをあまり知らなさそうだったが、知れば絶対仲良くなるはずだ。
そうすればきっと……
「あら、こんな男なんかより、みじかちゃんみたいな可愛い女の子の方が義妹にふさわしいわ。中村さん、悪いけど私のスカート返してもらえるかしら?そして私とのエスも終わりにしましょう……」
これだ!
これでいいのだ!!
うまくいけばボクとの姉妹関係を終わらせて、新たに犬塚さんとの関係を結んでくれるかもしれない。
そうすれば、赤城会長の後ろをちょこまかと歩き回る犬塚さんと言う構図が出来上がって、それをたしなめ赤城会長。叱られた犬塚さんは……
ぐっへっへっへっへっへっへっへ
これはこれは、百合の心が揺さぶれる妄想がはかどりそうだ。
よし、まずは犬塚さんと赤城会長の関係性を深めることが大切だ。今の2人の間には直sつ的な結びつきはほぼない。だったら、ボクが結んであげればいい。
ボクが百合のキュービットになればいいのだ。
そのためには……そうだ!
そう言えば、まだ犬塚さんはどの部活に入るか決めかねていると言っていたから、部活に入る感覚で生徒会室に誘ってみればいいのだ。今日の話を聞いている限り、先輩たちは新しい一年生が欲しいらしいから連れて来ても特に問題はないだろう。
2人が手をつないでだんだんと…………
ああ素晴らしきかな。素晴らしきかな。百合の花が入り乱れようとしている!!
ボクは百合の花園の管理人として、百合の花が育つように適切な“処置“をしなければならないのだ。よし、がんばろう!
・・・・・・ズボンとスカートを交換したって言うことは、明日ボクはスカートで登校しないといけないのか。
ものすごい不安とどうなるか分からない未来に恐怖しかないが、それでもきっとボクならよく出来るはずだ……今のボクに出来るのはそうやって自分に暗示をかけるくらいだ。
結果から言えば、ボクのスカート姿はそこまで悪くは無かったらしい。
朝、死ぬほどドキドキしながら教室へと入って行ったが、受けは良くてみんな笑ってくれたり可愛いと言って写真を撮ってくれていた。
聞いたら、実は夕夏先輩がいろいろなところに漏らしていたらしく、もうすでにLINEやインスタ、その他もろもろで聞いていたらしい。
そしてボクがスカート姿と言うことは赤城会長とボクにエスの関係があることも示している。
どうやって落としたのかー!とかいろいろ(嫌味や皮肉も含めて)言われたが、それでも全体的に好意的だったのはいい印象だった。
殺されるんじゃないか、と言う勢いで詰め寄られるのでは無いかと思っていたから本当に良かった。
犬塚さんにも結構言われたが、それでも彼女にはどうにかして赤城会長と繋がってもらわないといけないから、出来る限りいい印象を残せるように努めた。
さあ、本番だ。犬塚さんを誘って生徒会室に行こう。
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