第16話 崩れて行くお姉様
「ドラ君、お姉様とのデートは楽しかったかな?」
「そうですね。とても楽しかったです。」
「……ねえぇ、ドラ君。聖愛ちゃんのことをお姉様と呼べるようになったんだからあーしのことも呼び捨てで、下の名前で言ってよ。」
「ちょっときついですね。」
生徒会室にはボクと犬塚さんしかいない。どうやらお姉様たちはまだ来ていないみたいだ。
そして昨日のお姉様とのデートの話をしていた。パンケーキを食べているお姉様の姿や服を見つくろっているお姉様の姿だったり、スマホの写真を見せながら話していた。
「酷~い、ねえ呼んで~。呼んでよ~」
「はぁーしょうがないですね。分かりましたいいですよ。犬塚さんは一度決めたことは曲げないですから。」
「犬塚さんじゃなくて、みじか!!」
「……みじかさん。」
「みじか!!」
「……みじか」
言うのは少し億劫だったが、一度言ってしまうとそこまで難しくはなさそうだ。
今までみじかやお姉様との間には壁があったけど、健全な形でちょっとづつ外していってもいいかもしれない。
必要以上に作り過ぎるとかえって大切なところでお姉様たちの百合の景色を見ることが出来ないかもしれない。
もちろん無駄に近すぎるとそれはそれで問題だ。だから適切な距離を探しながらお姉様たちと関わっていきたい。
「お疲れ様~!!」
「ちょっといきなり抱き着かないでください!!あやめ先輩。」
扉が開いたと思ったら、突然全身が温かくなった。
どうやらあやめ先輩が抱き着いてきたらしい。本当にこの人はいつでもどこでも抱き着いてくる。廊下で突然抱き着かれた時は女性みたいに甲高い声で驚いて、周囲の注目を浴びてしまった。
「だって~そこに可愛い女の子がいたんだもん~」
「可愛くもなければ、女の子じゃありません!!」
「え~だってスカート穿いてるじゃん。それに抱き着き心地がよければだれでも良いのよ。」
「スカートめくろうとしないでください!!ホント何やってるんですか??」
「ちぇ。このいけず~。みじかちゃんだったら簡単に見せてくれるのに……あ、みじかちゃんおはよう!!」
ボクから離れるとあやめ先輩はいきなりみじかに抱き着いた。手を見つめるとあやめ先輩の余韻が残っていた。
あやめ先輩はボクにしたようにみじかにセクハラを仕掛けていて、抱き着き魔らしい彼女の姿がそこにはあった。
みじかはそこまで嫌がる様子もなく、淡々と受け入れている。
むしろ抱き着き返して、おはようございま~すと言っている。さすが陽キャだ。
「リュウくんギュー。」
「ちょ、お姉様!?何やってるんですか!?」
「リュウ君があやめちゃんに取られそうだったから私がもっと強く抱きしめてマーキングしてるのよ。」
「いや、犬じゃないんですから……」
「嫌??」
「……回答を拒否します。」
「つまり良いってことね。じゃあもっとするわ。ぎゅー!!」
強く抱きしめられた。女の子の力とは言え、全力で抱きしめられているから結構苦しい。柔らかいお姉様の胸のところに頭が吸い込まれて行って死にそうになっている。でも、お姉様のお胸で死ねるなら、死んでもいい。
……何を言ってるんだ??ボクは??
危ない危ない。お姉様に抱き着かれることで頭の中のイケナイ煩悩があふれ出てしまっている。理性を保て、中村竜太郎よ。
「よ~し。次は逆ね。う~ん、リュウ君のおっぱい硬ーい。」
「そりゃ硬いでしょうね。」
「あ、リュウ君そう怒らないで!別に小さくて硬いリュウ君のおっぱいだって私は嫌いじゃないわ。」
「……もう言葉を話すのを止めようかな?」
最近、お姉様の本性が見え始めている気がする。それは喜ばしい事の母図なんだけど、どこか麗しい生徒会長と言うイメージが崩れている気がする。
今ではもはや麗しい生徒会長(笑)だ。
突然抱き着いたり、いろんな服を着せたり、大きいパンケーキを食べていたり……探せば他にもいろいろとありそうだ。
「ほらほら、お前らそこら辺にしとけ。2人とも困っているだろ。」
「別にみじかちゃんは困って無さそうだわよ。」
「だからってね……良識を保ちなさい。」
「え~。」
「ほら、聖愛も竜太郎君から離れなさい。」
「可愛い義妹を慈しむのは姉としての役割でしょ。というか、もしかして夕夏さんはまだ義妹がいないからってひがんでいるんですか~??」
お姉様が夕夏先輩を煽りだすと、夕夏先輩はお姉様の顔を握って痛めつけはじめた。夕夏先輩はカッコいいから、義妹になりたい子はいっぱいいる。だから、夕夏先輩はまだ義妹を決めかねている。ふさわしい人が現れるまで保留中だと言っているが、それでも義妹なりたいって一年生は結構いる。
「ちょっとちょっと、夕夏さん許して~!!そんな悪い事言ってないでしょ~!!」
「うん。こいつにはちょっと特別教育が必要だね。」
「ひっ~」
これがお姉様の姿……可愛くて凛々しいとっても綺麗な女の子……
それから少しして、ボクは図書室にいた。
どうやら夕夏先輩が頼まれたらしい、新しく着た本を生徒会印を押して図書室に持っていくらしい。
先に図書室に着いたボクはお姉様たちを待たないといけない。
少し図書室を回ろうと、歩き回っていると少し奥の方に女の子がいることに気付いた。
「おねぇさま……」
「ゆあ……ゆあ……」
小さな音が本の隙間にあふれていた。
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