第6話 姉妹の儀
「それで結局、あなたは私の義妹にはなってくださらないの?」
「ですから、何度も言っているように無理ですよ。ボクは男の子ですから……」
「おいおい聖愛、受け入れてもいないのにもうエスだと触れ回っているのかよ。」
「何か問題あるのかしら?」
唯我独尊過ぎる……赤城会長ってこんな人だったのか。夕夏先輩と呼ばれた人も絶句していた。
どうした物だろうか?
「別に男だろうが女だろうが関係ないわ。義妹になりましょう。」
「僕的にはね~。う~ん、40点!!」
「え、ちょっ……」
「もう、人の義妹に手を出さないで。」
あやめ先輩が抱き着いてきた。あやめ先輩の体は赤城会長みたいに特別な感じは無かったが、普通にやさしい女の子の柔らかさをしていた。けど、あやめ先輩的にはどうやら不満らしく、ボクの触り心地は40点らしい。
「うん、筋肉がついているわけでもなければ脂肪もない。触ったらすぐに骨で皮と肉しかない。それでいて柔らかくはない。もやしみたい……」
もやしみたい……なかなかに酷いことを言ってくるが、事実だから仕方がない。とはいえこの体で40点はなかなかに高評価なのかもしれない。
「ッはぁ……聖愛は謎にこだわるところがあるからね。……中村君だっけ?」
「あっ、はい!」
「初めまして!さっき聖愛からも説明のあった浅日夕夏よ。よろしくね!」
夕夏先輩はスポーティーで元気な女の子だった。座っていたソファーから立ち上がるとボクの近くへやって来た。あやめ先輩を引きはがすと、少し遠くへやらせていた。
「さて、悪いけど、諦めて聖愛の義妹になってくれない?」
「え……無理です!本当に無理です!赤城会長みたいな人気者の義妹になるとか肉体的にも精神的にも無理ですって。」
「まあ肉体的なのは後で女装でもしてもらうことにして……」
え、今この人サラっと恐ろしいことを言っている。と言うか、一ミリも守ってくれそうにない。そんなに今、絶望的な状況なのだろうか?まあ、確かに今までの言動を見る感じ、一度決めたことはなんと言われても絶対に変えなさそうな人出はある。
「女装して聖愛の義妹になるのか……いいね!!」
「全然よくありません!それに良いんですか?ボクが入ると先輩が赤城会長と一緒に過ごす時の時間は短くなりますよ。」
「もうそろそろ聖愛も自立して欲しかったからね。」
自立って……義妹をめとる事が自立と同等の扱いをされているのか。
「僕はね。聖愛には幸せになって欲しいと思ってるのよ、だから君は義妹になりなさい。」
もじゃもじゃのウルフカットに切られた髪を右手でたなびかせると命令口調でボクに義妹になる様に命じた。どうやら僕に味方はいないらしい。どうした物か……そうだ!代わりの人物を差し出せば行けるんじゃないか?
「犬塚みじかさんって知っていますか?」
「犬塚さん?」
「ほら、今日のお昼に赤城会長がタイを直した。」
「ああーあの子ね。」
赤城会長は思い出したかのようにポン!と手を叩いてこっちの方を見てきた。
「彼女とかどうですか?赤城会長の義妹にふさわしいと思いますよ。」
「私がね、あなたが良いと決めたのよ。さ、姉妹の儀をしましょうか。」
「今日の聖愛、だいぶ強引にやるね。」
「ふふッ」
姉妹の儀……それは私立聖メリア女学院に伝わる姉妹になるための儀式。
時代や、その当時のトレンドによっていろいろな変遷があったりする。大正初期は聖書を交換したり、戦時中はモンペに名前を縫い付けたり、2000年代にはロザリオを交換したりとその時代々々で儀式は変わっている。最近の姉妹の儀は何だろうか?さすがにボクが知れるのは過去の卒業生の話とかだから今は知らない。
「姉妹の儀って知らないよね。お姉ちゃんが手取り足取り教えてあげる……」
「あ、赤城会長……!?なんてこと言ってるんですか?」
「ああ始まったよ。聖愛の暴走が。」
夕夏先輩はまたかと、見慣れた光景のようにあしらうと赤城会長の顔がボクの右肩の上に乗って来た。
赤城会長は耳元に口をやると、小さな声で囁いた。
「姉妹になるにはね。制服のスカートを交換するのよ。」
「え……??」
「姉妹でいる間は制服のスカートを交換して着ることで、毎日いつでも一緒だって気持ちになれるのよ。」
スカートを交換するのって……でも確かに制服は三学年一緒だし、スカートを交換してもバレなさそうだ。だから、シャイな子がこっそりと姉妹の儀を行ってスカートを交換して毎日学校に通って、ふとした瞬間、これが義妹のスカートなのだと思うと……
ぐッへへへへへ…………
百合がはかどる。妄想してみると、あまり表に出たがらない少女たちの生き写しが描かれているみたいだった。
「聖愛、けどこの子スカートじゃなくてズボンだけど大丈夫?」
「まあ、でもズボンは聖愛ちゃんよりも夕夏の方が似合いそうだけどね。」
「確かに!」
思わず声が出てしまった。あやめ先輩が夕夏先輩にくっつくと夕夏先輩は頭に手をやって髪の毛をバサッとなびかせた。……イケメンだ。死ぬほどカッコいい。
「別に問題ないわ。」
「じゃ、やるか。」
「ええ。」
右手を引っ張られると、少し離れた赤いカーペットが引かれた場所に連れて行かれた。全面ガラスの壁の左右の壁面にはマリア様の肖像画飾られていた。
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