第21話 ラブレター③


 

 

 

 「ほら、上げる!!」

 

 お姉様が身近の腕をつかむと夕夏先輩に向かって投げ渡した。みじかは少し困惑した様子で痛そうにしながら信じられない様子でお姉様の方を見ていた。

 

 「……聖愛先輩!?」

 「君は今日から夕夏ちゃんの義妹ね。今決まった今日決まった。だから今すぐ姉妹の儀をしましょう!!」

 「あーしはテディーベアかなん何ですか?人間として扱ってください!」

 「夕夏ちゃんの義妹になるのが嫌なの??」

 

 すっとぼけた顔をしながらお姉様はみじかに夕夏先輩の妹になれと言い放った。

良かった。どうやらみじかは夕夏先輩の義妹になるのは嫌らしい。

 

 よし、ここからお姉様の陰謀を!夕夏先輩とみじかを姉妹にしようとするたくらみを完全に打ち砕かなければ!!

 

 「別に嫌じゃないですけど……でも今はまだその時じゃないといか……」

 「……ほら、そんな感じだったら問題ないじゃない!!ね、リュウ君もいいと思うでしょ!!」

 「……そうですね。絶対に姉妹にならない方が良いと思います。」

 

 きっぱりとした真顔で言ってやった。お姉様は真っ白な顔になってタジタジしている。どうやらボクはお姉様に賛成すると思っていたらしい。

 ショックを受けて燃え尽きた灰みたいになったお姉様、新鮮で面白い。ボクのシャツを掴むと声にもならない「うぇぇぇ……??」みたいな声を漏らしている。

 

 「お姉様、夕夏先輩とみじかは月とスッポンです。それよりも例えばボクと夕夏先輩が姉妹となってみじかとお姉様が姉妹となるのはどうですか??そうしたら生徒会役員全員が姉妹を持てますよ。」

 「いろいろとツッコミたいけど、まずあーしのことをスッポンと思っていいるわけ??」

 「あ、何だ自覚あったんだ?」

 「なんだとこの~」

 

 みじかが怒ったかのようにポカポカとボクの胸を殴ってくる。別に対して痛くはないけど、半分はそこそこ怒った女の子でもう半分は死にかけの女の子。その構図が面白かった。

 

 「そもそも竜太郎の案だと僕に義妹がいないじゃないか!」

 「あ、先輩って生徒会役員だったんですか?てっきり勝手に生徒会室に入り込んでいるネズミか何かかと……」

 「酷いことを言うね~君。まあ僕も可愛い女の子を義妹にしたいからね。今は探している途中さ。」

 

 あやめ先輩が突然面白いことを言い出して来た。どうやらあやめ先輩は生徒会役員らしい。あやめ先輩のような変人でも当選する学校なんてあるのだろうか?

 

 「私とみじかが相応しくないってどういうことだよ。別にそこまで問題があるようには思えないけど……」

 「いいえ!問題大ありです。先輩は学校中の憧れの的!誰しもが先輩の義妹となりたいと思っている存在です。そんな夕夏先輩の義妹がコレだなんて……プッ……」

 「なんだ~あーしへの扱い酷くないか!!聖愛先輩もそうだけど、みんなあーしのことを何だと思ってるの??」

 

 ボクの胸を叩いていた、みじかが一時中断してこっちを見てくる。そしてお姉様の方をみていた。真っ白に死んでいたお姉様は徐々に血の気を取り返してきたのか、皮膚が色気づき始めた。

 

 「そもそもとして君たちは私の気持ちを無視しすぎだ。」

 「どうせ夕夏先輩は義妹を決めれないじゃないですか!だからボクらで決めてあげてるんですよ。ねぇ~!」

 「そうそう。夕夏ちゃんはこんなにもモテるのに義妹を作らないんだから……ほんと困ったわ。だから私たちが決めてあげるのよ。」

 「お前に関しては、お前も義妹いないだろ!!」

 「人聞きの悪いことを言わないで!私はもうちょっと遊びたいから作ってないだけよ。それに夕夏ちゃんと姉妹関係結んでもいいかもね……??」

 「うぇぇぇ……あやめちゃんの義姉になるとか死んでも無理なんだけど!!」

 「何言ってるの僕が姉よ!勘違いしないでよね。この背伸び義妹が!」

 

 あやめ先輩はあやめ先輩だ。

 相も変わらず、遊びたいだの、夕夏先輩を義妹にしたいだの考えていることが普通の人間とは違う。あ、もしかして別の動物だったりして……??

 

 とまあ、そんなことはいいとして本格的にどう決着をつけるか……ボク的にはお姉様とみじかとの間を少しでいいから近づけれればいいんだけどな……

 

 「……リュウ君は私の義妹でいるのが嫌なの??」

 

 お姉様が微かな声で訪ねてきた。まるで振られる前の恋人みたいな声だ。

 だけどボクの心づもりは決まっている。それを答えるだけだ。

 

 「別に嫌じゃないですよ。ただ……」

 「ただ……??」

 「お姉様に相応しいのはボクじゃなくてみじかですから……」

 

 笑顔でそう言うとお姉様の目からハイライトが消えて行ったような気がした。

 

 「……竜太郎!なんてこと言うの!?」

 

 竜太郎、お姉様は普段のリュウ君と優しい声で呼ぶのではなく、下の名前を強い口調で言った。まるでそれは子供を叱る母親か、姉のようだった。

 

 ボクは驚いて、近くにあったソファーへと腰を落とした。

 そんなボクを見下ろす形で、お姉様はさらに畳みかけてくる。

 

 「いい、私がリュウ君と姉妹関係を結んだのは生半可な気持ちじゃないの!ちゃんとリュウ君を大切にすると思って結んだの!それなのにリュウ君はどうしてそんなことを言うの?相応しい相応しくないとかどうでも良いの!!私はリュウ君がリュウ君であればそれでいいの!」

 

 早口で、けど怒りを込めて、ボクに向かってお姉様は怒りを向けてくる。けどその怒りは悲しいというよりかは胸を苦しくしてくる。

 ボクは……

 ボクは……

 

 「……でも」

 「でも??」

 「男は義妹になれないんです!!男と言う不純な存在がお姉様のそばにいて良いわけがありません!本当はこんな関係!即刻でも終わらせるべきなんです!」

 

 ボクの思いのたけを吐き出した言霊は生徒会室にしばらくの間浮遊していていた。

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