第40話 お姉様と夏祭り
お姉様と一緒に夏祭りに行く!
浴衣姿のお姉様と一緒に屋台を歩き回って、りんご飴をお姉様が買って小さい口でガブってかじる。
可愛い可愛いお姉様。お姉様が浴衣姿で優雅に、自らの美しさを誇るかのように堂々と練り歩く。
それはまるでランウェイをあるくモデルのような姿に違いない。
「お姉様!!いつ一緒のお祭りに行きますか??」
「そうね……たぶん時期的に夏休み入ったくらいだと思うわ。リュウ君はどこかいい夏祭り知らない??」
「ボクの近所のお祭りとこですかね……まあ、でも特筆すべきことがない、いたって普通の夏祭りですけど」
「良いじゃない。私も浴衣とかあるから、準備しないとね」
「浴衣ですか……お姉様ってどんな浴衣着ているんですか??」
「それは本番までのヒ、ミ、ツ!!」
お姉様が唇に人差し指を当てて、ボク近づいてくる。
やっぱりお姉様は距離感バグってる。
でも、お姉様のこのバグった距離感が最近は心地よくも感じる。
お姉様はどんな浴衣を着てくるのだろうか……
淡い水色のパステルカラーの浴衣かもしれない。いや、逆に漆黒色の喪服よりも黒い真っ黒な浴衣かもしれない。お姉様のことだから、小さく金色の糸でドラゴンとかが描かれているかもしれない。
胸元に小さく描かれたドラゴン、それを指さしたお姉様が言う。
『見てみて、カッコいいでしょ!!リュウ君だからドラゴン描かれたのを着てみたの!!』
うん、お姉様なら言いそう。実際お姉様は小学生男子みたいなところがあるから、ドラゴンとか描かれていたら買いそうだ。
「そう言えばリュウ君は浴衣って持ってるの??」
「え、どういうことですか??」
「そのままの通りよ。私、リュウ君と一緒に浴衣を着て回りたいわ」
「……たぶん探せばあるんですかね?でも、まあ有ったとしてもたぶん小さ過ぎて着れないと思います」
「だったら、私の浴衣を貸すから一緒に回りましょう。」
「良いんですか!?ボクがお姉様の浴衣を着て!!」
お姉様が突然、ボクの目の前に立った。
そして、親指を上にしてグッドサインを出すと、今までで一番かもしれない笑顔を見せた。
「ええ、もちろん!!」
……やっぱりボクはお姉様のことが好きみたいだ。
いや、好きというレベルではない。
義妹として愛しているのだ。
お姉様と一緒に浴衣を着て回る。
浴衣の可動域はあまり広くはない。
だから、ゆっくりと歩かないといけない。
だけども、そんなことを気にすらしていないお姉様がスタスタと先に行ってしまう。
そんなお姉様に追いつこうとボクは全速力で人ごみの間を駆け抜けて行く。
すると、草履の鼻頭が切れてしまって、その場にうずくまってしまう。それを見つけたおね様が近づいてきてくれて……
ボクを背中に乗せて運ぶことはお姉様との身長差があるから厳しい。
それでも、何とかしてボクのことを運ぼうとお姉様が必死になる。
その姿にボクは感動して涙が出てしまう。
ある夏の日の美しい光景が広がっている。
どんな景色になるのかは実際にお姉様と一緒に夏祭りに行かないと分からない。
でも、お姉様と一緒に見る景色はどんな物だったとしても、きっとそれは美しいはずだ。
「それで結局、リュウ君はどこに行きたいの??」
「ああ、やっぱりうちの近所の神社でやる夏祭りとかいいんじゃないですか?7月中にあるんで、夏休み入ってすぐにお姉様と会えます」
「良いわね!!それで、そのお祭りっていつなの?」
「えっと……確か毎年25日くらいにやっていたと思います」
「あら、本当に夏休み入ってすぐわね。再来週あたりだし、悪くないわね。」
「じゃあ、ここにしますか??」
「ええ!!それじゃあ、リュウ君に浴衣貸すからリュウ君の家に上げてもらっていいかしら??」
「たぶん大丈夫ですけど、ボクの家にわざわざお姉様が来る必要あります??」
「リュウ君は自分一人で、着つけられるの……??」
「和服とかだったら別として、浴衣くらいだったらさすがに……」
ボクは言葉を最後まで言い切ることが出来なかった。
なぜならば、お姉様の頬っぺたがぷっくりと膨らんでリスみたいにして怒っていそうだったからだ。
「ま、まぁ、でも、女物の浴衣は着たことがないので、お姉様がいると嬉しいかな……って!!」
「あらあら、そうなのね!!だったら私が着つけてあげるから夏祭りのちょっと前に着付けに行ってあげるわ。」
「あ、ありがとうございます……」
お姉様の圧で押し切られてしまった。
まあでも、これはこれでいい。お姉様との思い出の1ページが増えたということだ。
悪い事ではない。
ああ、今から楽しみだ。
25日まで何日だろうかとカレンダーを見つめていた。
そんな時だった。
「あ、聖愛先~輩~今度25日、みんなで行きたいところがあるんですよ。ゆうか先輩とあやめ先輩も来るみたいだから、私と一緒に行きませんか??」
みじかの声がした。
その声はあまりにも聞きたくない音を発した。
お姉様といけない。
ボクの頭はそんなことで埋まっていた。
「悪いけど、その日はリュウ君と……」
「大丈夫ですよ。ゆうか先輩とあやめ先輩も来るらしいですから、いったほうがいいですよ。」
「あ、ドラ君もくるでしょ!!」
「すみません、ボクはちょっと……」
それは脊髄反射のようにお姉様がいった瞬間、被せるように口から出てきた。
理性とか感情だとか、そんなもの以前の世界の
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