第13話 ふわふわパンケーキ

 

 

 

 

「お待たせしました。こちらがご注文のトロピカルパンケーキとハワイアン×3です。」

「わぁ~……美味しそうね!!」

「そうですね。」


目の前にこんもりと積まれたパンケーキ。ほんのりと温かいパンケーキからは蒸気が出ていたけど、山盛りに盛られた生クリームは甘く冷たく柔らかそうで美味しそうだった。


赤城会長の前にはストロベリーにパイナップル。そこにメロンやマスカットが乗ったトロピカルパンケーキが置かれていた。

インスタに上がっていそうな、女の子らしいフルーツたっぷりのトロピカルパンケーキは可愛い赤城会長にピッタリの印象だった。

 

 ボクの目の前にはハワイアン×3。

 通常のパンケーキをただ三倍にしただけと言う脳筋パンケーキ。量も三倍、生クリームも三倍だ!

 

 あまりにも大きすぎて普通の皿だと入りきらないみたいで特別大きな皿を使っていた。

 

 二つのパンケーキが出そろった机はパンケーキでほとんど埋まっていた。

 

 「これ逆じゃない。……もしかして私のハワイアン×3を食べちゃうつもりなの!?」

 「食べませんよ……会長みたいな可愛い子がこんなパンケーキ食べないと思われたんじゃないんですか??」

 「……今可愛いって」

 「え、まあ事実ですから……」

 「うふふ~ん。ようやくリュウ君もデレる様になって来たか……お姉ちゃんの努力が実って嬉しいよ……」

 

 パンケーキを眺めるために低くしていた体を起こしながらこちを見つめてきた会長がボクのことを見つめてきた。

 

 「別にデレてませんよ……それよりも冷めちゃいますから早く食べましょうよ。」

 「リュウ君ツンデレ~!!お姉ちゃんはいつかリュウ君が出れると信じているからね。」

 「ええ、そんな日が来るといいですね。」

 

 パンケーキを交換するとナイフで切ってパクっと食べた。

 

 「う~ん美味しいわね。」

 「そうですね!やっぱりパンケーキは美味しいですね。」

 「リュウ君は可愛いの食べるのね。みじかちゃんから聞いたけど、苺ミルクの飴好きなそうじゃない。」

 「押し付けられただけですよ。」

 

 赤城会長、犬塚さんのことをみじかちゃんと呼んでいる……よし、成果が出始めている。

 にしても、犬塚さんが押し付けられてくる飴にいちいち選ぶのがめんどくさくなって苺ミルク、苺ミルクと言っていたらいつの間にか苺ミルク好きだと認定された。


失敬な。苺ミルクなど笑止千万。あんなヤワヤワしい食べ物なんて――まあ確かに好きではあるけど……

 

 「甘~い。」

 「こっちのココナッツミルクのシロップとかも合いますよ。」

 

 甘い。

 そして美味しい。

 やっぱりパンケーキは素晴らしい。そして生クリームとフルーツが生み出すコンストラクション。なんて美味しいのだろうか?

 

 スフレパンケーキで歯に当たった瞬間消えてしまう。ふわふわで温かく、それでいて生クリームと混じって口の中がハーモニ。

 まるで口の中でオーケストラが演奏しているみたいだ。

 

甘い真っ白の生クリームは赤城会長の白いワンピースのように綺麗で甘く、こんなに美味しい生クリームのように可愛い赤城会長は絶対に食べたらおいしいはずだ。


「にしても美味しいわね。やっぱりここに入ってよかったわね。」

「……会長やっぱりすごいですね。よくそんな量をペロっと食べれますね。」

 「甘いものはいくらも食べれるわ。」

 

 大きく切り分けたパンケーキをシロップをかけたりしながら食べていた。一見するとただのパンケーキ大好き女子高校生だが、よくよく見ると口周りには生クリームも付いていないし、しっかりと口を閉じて食べ終わってから喋りかけてる。それにナイフとフォークの所作は芸術的なまでに美しい。やっぱりこういうところを見ると会長はお嬢様なんだろうな~と見とれてしまう。

 

 「でもリュウ君がトロピカルパンケーキに苺ミルクだったりと可愛い物が好きだとは思わなかったわ。今日は可愛い服を買ってあげるね。」

 「別に自分ではそこまで可愛い物が好きだとは思ってませんよ……」

「でも嬉しいんでしょ!!」

「まあそれは……」


甘いパンケーキと同じくらい赤城会長といる時間は甘いものだった。

そして会長の皿からはもう半分以上なくなっている。ボクはまだ4分の一も食べ終わっていない。こんなにあったパンケーキがこんなにも短時間で一気に無くなるなんて会長の胃袋はどんなものなんだろうか?


「会長早いですね……」

「甘いとついね……でも気づいた時には無くなってることが多くて……それが悩みなのよ。」

「会長みたいなスレンダーな人がまさかこんな食べるとは思ってませんでしたよ。」

「え~そうなの??私の体細いんだ??でも私34kgよ。」

「めっちゃ痩せているじゃないですか!!ってか、いきなりそんなこと言わないでくださいよ。」


突然放たれた爆弾は公衆の面前で爆発した。会長はまるで何か悪いことしちゃったのかな……??とでも言いたいのか、首を傾け不思議な表情をしながらもぐもぐ食べていた。


本当に生徒会の人はいきなり変なことを言い出す人が多すぎる。

あやめ先輩しかり、夕夏先輩しかり……それに赤城会長に犬塚さんだって……まあある意味犬塚さんを生徒会に入れたのは正しかったかもしれないけど。


そんなことを思っているとパンケーキを食べ終わっていた。急いでナイフを差し込むとパンケーキは受け入れる様にフワ~っと広がって行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る