第19話 ラブレター①


 

 

 

 「ねぇ……君、竜太郎くんだよね??」

 「ええ、そうですけ……」

 「……悪いんだけどこれを夕夏先輩に渡してくれない??」

 

 図書館でのあの日から3日くらいたった日のことだった。

 面倒くさい数学が終わって次の授業の準備しようしていたその時だった。

 

 手に手紙を持った、少しばかり小さな少女に話しかけられた。

 ここ最近になって生徒会役員にボクが就任したことは学校に広まっていた、だけどもお姉様との姉妹関係エス についてはまだバレてはいない。


 隠したいというよりかはバレたら犬塚さんと結ばれた時に変な悪い噂がお姉様に立ってしまうかもしれない……だから生徒会以外だと前と同じようにお姉様じゃなくて赤城会長って呼んでいる。それに噂が立たないように徹底して情報は秘匿している。お姉様は公表したいらしいけど、ボクが嫌がったらすんなり止めてくれた。

 

 さて、そんなこんなで学校生活も軌道に乗ってきた7月上旬、知ったことは夕夏先輩はモテるという事だ。

 もともとお姉様とかが夕夏先輩は女の子にモテるって言っていたけど、ある程度過ごすと実感が湧いてきた。

 

 廊下を歩いていて、夕夏先輩にばったり出会ったから軽く挨拶すると、手を上げて挨拶し返してきた。するとキャーと言う黄色い歓声と共にものすごい敵意が向けられてきた。

 

 ……こわっ

 

 そんなことを思った気がする。夕夏先輩はポニーテールのボーイッシュな子でどうやら陸上部に所属しているらしい。

 

 「お、おゆのんも夕夏先輩のこと好きなんだ!!」

 「みじか!!ちょっと急に抱き着かないでよ……」

 「うりうり……おゆのんまで夕夏先輩に毒されちゃった……も~あーしのことだけを見ればいいのに……」

 「毒されちゃったって……そんな夕夏先輩を悪女か何かだと思ってるの??」

 

 後ろから突然みじかがやって来た。

 おゆのんと呼ばれた少女の後ろに回り込むと慣れた手つきでこねくり回してきた。

 

 「だって~おゆのんが私じゃなくてドラ君にたよるんだも~ん。」

 「あなたに頼んだら絶対いじり倒してくるでしょ!!」

 「まさか……徹底的にいじくり倒してやるに決まってるじゃない!!」

 

 なるほど。なんでボクに夕夏先輩へのラブレターが渡されたのか分かった気がする。 

 そこら辺の見る目はおゆのんにもあるらしい。

 

「ほら、やっぱり。どうせ渡した瞬間破って『うわぁ~ラブレターがヤブレター』とかつまらないギャグするんでしょ!!」

 「さすがにそんなことをするような鬼じゃないわ!!ドラ君じゃないんだから!!」

 「急にこっちへ燃やしに来ないでくださいよ!!」

 

 そんなこんなでずっとボクらはみじかの手玉に取って遊ばれていた。

 

 

 

 「夕夏センパ~イ!!ラブレター貰っていますよ。」

 「ちょっと、みじか。こういうのは普通ボクから言うべきでしょ。」

 「だれが言っていいじゃん別に……」

 

 火ぶたを切ったのはみじかだった。生徒会室に着いた瞬間、そこにいた夕夏先輩を煽るかのごとく、ラブレターのことを言い始めた。

 けど、ボクが少したしなめると、少し不貞腐れた装いをしながら、みじかは自分の席へと引いていった。

 

 「ラブレター、またもらったのね。ゆうか!!これで何枚目かしら??」

 「15枚を超えたあたりから数えるのを止めたな……」

 

 前髪をたなびかせて、まるで自慢するかのように夕夏先輩はお姉様の方を向いた。少し鼻につくけど、確かに15枚以上もラブレターを貰うなんてすごい……

 ボクは一枚ももらったことないから……

 

 「ドラ君ご不満な顔しているけど、まさかラブレターが欲しいの??だったらあーしが書いてきてあげる。」

 「ちょっと、リュウ君は私の義妹よ。私が書くわ。」

 

 ボクが欲しいなって顔をしていたのがバレたのか、みじかがいじって来た。それに対抗するかのようにお姉様がボクにラブレターを書くって言ってくれた……お姉様が書くラブレター……それはどんなことを書いてあるのか少し気になる。

 

 「そう言えば誰からだい??」

 「同じクラスのおゆのんさんからですね。」

 「誰だよ、おゆのんって……」

 

 夕夏先輩があきれ顔でこっちを見てきた。そう言えばあの子のあだ名は知ってても名前は知らない。

 なんて名前だ??

 

 「田中希たなかのぞみちゃんですね。夕夏先輩!!」

 「そうかそうか……なんで希がおゆのんなんだ!?」

 「ああ、それは毎日水筒に白湯持って来るからですね。彼女。」

 「へぇ~白湯か……あんな味のない物よくの毎日飲めるな……私だったら三日と持たないぞ。」

 

 へぇーおゆのんの名前の由来って白湯からなんだ……!?

 というか、だから背が低いんじゃないか?白湯じゃなくてホットミルクとかの方が良いだろ絶対……いけないけない。こういうことはちゃんと本人の目の前で言わないと。

 

「にしても、竜太郎は同級生の名前をも知らないのか……そうかそうか……」

「なんですか??ボクがクラスで孤立して誰とも話せずにいつも一人孤独に本だけが友達の人間だと思ってるんですか??」

「いやー別にそこまでは思っては……いなくはないけど!」

 

この野郎ぶっころがすぞ!!

すぅーハァー。ストレス溜めちゃダメだ。ストレス溜めちゃダメだ。よし、よし、自分をコントロール。OKOK


 「ねえ、そうだ、リュウ君ラブレター読み上げてよ!!」

 

 生徒会室中の視線がボクの方へと向かって来た。どうやらボクはおゆのん、いや田中希さんのラブレターを読まないといけないらしい……

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