〜第13話〜 フラグ
けっつんが目を覚ました。あれからさらに2日、つまり約4日間眠っていたことになる。起きてからは4日間分の飯や水を取り戻すように暴飲暴食をしていた。けっつんが眠っている間に依頼を達成していたため、金なら結構あるが…まあ元気になったらまた依頼に行けば良いか。
目を覚ましてからはあまり話していない。まだ1時間ぐらいしか経ってないし、大体食べてるかうんこしてるかだから話す時間なんてなかった。
だが今、けっつんは勇者の剣を研いでいる。今がチャンスだ。
「もう大丈夫なのか?」
あたかも今気づいたかのように話しかける。まさかタイミングを計ったとは思うまい。
「ああ、大分落ち着いてきた」
「そっか、気絶する前の事は覚えてるか?」
「覚えてるよ、俺の力がまだまだ足りなかった…」
そう言って窓の外を見つめる。似合わないなんて思ってません。まったくもって。
「黒い雷の事は?」
「あれな、初めて使ったんだけどさ、なんでかあの時だけ使える気がした。今使えって言われても全く分からんけどな」
やっぱり何が条件が必要なんだな。
「そうだ!お前すげえな!あの治癒魔法
でほら!ほんとに腕切られたのかってくらい動くわ!」
「ああ、覚えたてでぶっつけ本番だったが治ってよかった!練習しててよかった…ん?待てよ…?」
「どうした?」
「いや、タイミングが良すぎないか…?俺が治癒魔法を実践レベルまで使えるようになった途端、いや、けっつんに見せた時奴が来た…。つまりだ…えっと………フラグ、そうフラグだよ!」
「お前が治癒魔法を覚えて俺に見せるということがあいつが襲ってきたフラグだって事か?」
「ああ、もし本当にそうなら俺のせいであんな大怪我を…」
「お前が気にすることじゃねえ。今は五体満足なんだし何も後悔する事はねえよ」
「そうだけど…結果論じゃねえか…」
「はぁ、お前のせいなんて思うのは自惚れだぞ。あいつに勝てなかった俺の責任だ。だからお前がうじうじ考える必要はねえ!わかったな」
そこにいたのはいつも通りのけっつんだった。なんか安心するな…涙がほろりと流れる、透明な涙が。いや、流れてるんだよ多分。
「悪いがお前にも戦えるくらい強くなってもらうぜ」
「ああ、俺もそう思ってた。けっつん、稽古をつけてくれ」
「手加減はできねえよ?」
「望むところだ」
こうしてけっつんとの修行が始まった。
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じりりりりりっ
目覚ましの音。体を起こすとそこはどこにでもある普通の宿屋。そして隣のベッドで寝ているのはハゲロン毛腕毛。こう見えても彼は勇者なのです。顔を洗い、うがいをして外へ出ます。
う〜ん!今日は快晴!太陽に照らされながらランニングをします。距離はなんと街を1周分!日本でいう1kmくらいです。ですが段々体力がついてきたのでもう少し距離を増やそうか迷っています。ドMではありませんよ。
途中で飲食店に立ち寄り、先っちょだけ。ん〜美味しい!!さて、ランニングの続きをしましょう。…ふぅ、1km完走!汗がすごいのでお風呂に入ります。
と言ってもお湯を自分で作って頭からかぶるだけですけどね。お風呂から出る頃にはけっつんが起きて朝食をとっています。なので少しつまみ食い。怒られますが気にしません。
それからはけっつんと木の棒を使い剣術の修行をします。まずは素振りから、僕が100回終わらせる頃にはけっつんは300回終わらしています。3倍、まだまだ差がありますね。
そして次に模擬戦。そのままの状態でやり合ってしまうと手も足も出ないのでハンデをつけます。内容はけっつんは木の棒だけ、僕は何でもありです。魔法で土の壁を作ったり、水の矢を四方八方から飛ばしたりと大分有利になっているのですがこれでも勝った事はありません。
模擬戦を10試合ほど終わらせると日が落ち始めます。なのでご飯を食べてから次の魔法の修行に移ります。これは単純なものでひたすら実践用の魔法を繰り返し使うだけ。この際、素早く正確にを意識しています。実践用とは言っても範囲を広めにしたりするので魔力の消費は実践よりも激しいです。そして魔力を使い切る頃に日没です。
宿に戻り適当な飲食店で夜食。その後風呂に入り就寝します。
以上!わたくし
とまあ俺の毎日はこんな感じになっている。この生活を初めて5日経ったが毎朝筋肉痛がやばい。でも治癒魔法をかけると少しマシになる。痛み止め的な効果もあるのだろうか。
あと変わった事が2つある。1つ目はけっつんが髪を切った。前は腰ぐらいあるんじゃないかってくらい長かったけど今は肩にもつかないくらいだ。そしてタオルもしなくなった。大分さっぱりして清潔感も出てきている。
2つ目もけっつんの事なのだが、髪を切ったおかげか女性人気が出てきている。元々勇者というモテモテの肩書きがあるのだから今まで人気がなかったのがおかしいくらいだ。ギルドで女性の冒険者に話しかけられているのを見たが、けっつんはただ普通に話していた。もしかして気づいてないのだろうか。まあ気づいたら色んな女性に手を出しそうだしこのままでいて欲しいな…
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「なあ、もしかして俺最近モテてる?」
……なんでだよ。気づいてなかったんじゃないのかよ。
「いや、そんなことないんじゃね?」
「いやモテてるって!ギルドでも話しかけられる事多くなったし!」
「それはお前が勇者だし、Bランクの依頼ばっか受けてるからベテランだと思われてるだけだろ」
「モンスターと関係ない事も聞かれたし!絶対俺に興味もってたし!」
「…やめとけ」
「信じてねえな!わかった今からギルド行くぞ!」
はぁ…どうしたもんか…
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