〜第36話〜 転生者
目が覚めると俺は宿屋にいた。
「知らない天井だ…」
「ふっ、エヴ◯ンゲリオンか」
そう反応したのはけっつんではなく、知らない男だった。
こっちの世界では全く聞き覚えのないエヴァ◯ゲリオンという単語に俺は固まる。
「君、謎の地図を持ってないかい?」
「謎の地図…?これのことか?」
そう言って情報屋に渡された地図を渡す。
「ふっ、やはりか。君、転生者だろ?もっと言うと日本人だろ?」
意味が分からなかった。
「な、なんで…?」
「私も日本人なんだ」
「いや、そんな…」
「私も転生者だよ。君と同じね」
「ま、待ってください!」
「パニックかい?」
「…はい。1つずつ整理させてください」
「いいよ、いくらでも付き合おう」
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大体理解できた。
いや、困惑は残ってるけどな。
ひとまず納得はできた。
…ギリギリ。
さて、簡単にまとめよう。
まずはこの場所。
ここは俺たちが目指していた街であるバトフィードの宿屋。
目の前にいるこの男はバトフィードの討伐隊の1人らしい。
名前はりゅうと。
金髪だし本当に元日本人かと疑いたくなるほどのイケメン。
日本では絶対に関わることがなかっただろう。
そしてなぜ俺が転生者とバレたかだが、どうやら確信ではなく予想だったらしい。
どうやって予想したかと言うと、転生者にはある法則があるらしい。
それは強いということ。
もしくは何かで飛び抜けているということだ。
俺が放ったライトニングを見て、これを使えるのは転生者だろうと予想した。
というらしい。
そして印が示された謎の地図を持っていることか予想を確信に変えたらしい。
それについてなぜかと問うとりゅうとは
「これは転生者を集めるための地図さ」
と言った。
あまり分からなかったので詳しく聞くと
「この地図をもらった時、君がなんて言ったか覚えてるかい?」
と言われ
「ん…、あ、ステーキ定食弱火でじっくり」
あ、そういうことか。
「じゃあこれはハ◯ターハンターのネタだからそれを知ってるということは日本人ってことか?だからこの地図を渡した」
「理解が早くて助かるよ」
「でもそれなら日本人しか集まってこなくないか?」
「大丈夫。その辺はちゃんと対策してるよ。今バトフィードにはたくさんの転生者がいる。だから1人1人の出身地について詳しく聞き、情報屋に回してるってわけさ」
「なるほど。じゃああの情報屋はホームレスっぽい見た目しといて全員の出身地についての情報を全部覚えてるってことか?」
「そうなるね。彼らはプロさ。私も尊敬する」
「…1ついいか?」
「いくらでもどうぞ」
「知らない出身の人が来た時点で転生者と判別できないし、転生者と分かってからも地図を渡すだけじゃここに集まる可能性は少なくないか?怪しくてこない人もいるだろうし」
「その通りだ」
「分かってるならなぜ改善しない?」
「事は君が思っている以上に深刻なんだよ」
「深刻…って?」
「この世界の住人が転生という概念を知ってしまったら死んでしまうんだ」
「……は?」
「まだ転生者が全然集まっていない頃、転生者候補の人に直接転生したかを聞いていたんだ。その時に転生という言葉を使ってもしっくりこない人がいて、その時転生について説明してたんだ。転生者じゃなかった人はその後全員死んだ」
「いや…え、は?」
「君はまだ転生の事は誰にも言ってないかい?」
「…同じ転生者の人にだけ。それ以外は言ってない」
「なんと、他にも転生者がいるのか。どこにいるんだ?」
「ちょっと待って、その前にさっきの話本当なのか?」
「ああ、本当さ。初めて聞いた時は私も信じられなかったな。でもただの偶然にしてはできすぎている」
「それは…そうだけど」
「用心するに越した事はない。だから私たちは回りくどくても転生という概念がバレない方法で転生者を集めているんだよ」
「…なるほど」
まてよ…ってことは最初にけっつんに出会った時やイルダと出会った時、あいつら普通に日本の事とか転生のことについて話してたよな…。
え、じゃあ誰かがこの世界の住人だったら死んでたってこと?
あぶな、こわ。
あいつらに口酸っぱく言わねえと。
とまあこんな感じで話は終わった。
その後はこちらのことについて話した。
けっつんが勇者であることを伝えると、とても喜んでいた。
「ついに魔王を倒せるのか…」とかなんとか。
ここ何年かずっと勇者を探していたらしい。
やっぱ勇者って凄いんだなと再確認。
そしてけっつんとイルダも転生者で日本人であることを伝えるととても驚いていた。
転生者が3人もいて、さらに元々強い転生者が勇者になるとその力は計り知れないと興奮していた。
あれ、俺が思ってたよりけっつんってすごいのか?
ただ、勇者の剣が魔族により奪われたことを伝えると落ち込んでいた。
「我々も手伝う。全力で取り戻そう」と意気込んでいた。
なんか1回の話で興奮したり、落ち込ませたり申し訳なかった。
疲れただろうに。
りゅうとは本部に報告しなきゃ、と言って宿屋を出ていた。
俺に任されたのはけっつんが目が覚めた時の情報共有だ。
内容が濃すぎて俺もまだ困惑している。
けっつんもさぞ、驚くだろうな。
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