〜第37話〜 転生者の集会所

けっつんが目覚めた後、状況を説明した。

けっつんは俺と同じくとても混乱していた。

その気持ち、痛いほど分かるぞ。


けっつんと話していると慌ただしくドアが開いた。

そこにはりゅうとが立っていた。


聴視あきみ君!あ、けっつん君も起きたのかい。君たちはうちの討伐隊に入って欲しいと上の人たちが言っているんだがどうだい!?」


「ちょ、ちょっと待って!落ち着いて、ゆっくり教えてくれ」


「ああ、すまない。興奮してしまって」


聴視あきみ、この人がさっき言ってた?」


「申し遅れました。りゅうとと申します」


「あ、けっつんと申します」


聴視あきみ君、けっつん君に説明は?」


「大体したよ」


「ありがとう。2人とも理解が早くて助かるよ。さて、本題に入ろうか」


「討伐隊がなんだって?」


「バトフィードは比較的魔王城が近いことからモンスターも強いため討伐隊があるんだ。その討伐隊に君たちも入らないか?という提案が出たんだ」


「見返りは?」


けっつんが言う。


「勇者の剣を取り戻す手助けをしよう」


「俺たちに求める仕事は?」


「魔族の撃退および魔王城の攻略」


「…わかった。討伐隊に入ろう」


「けっつん…。いいのか?」


「ああ、魔王城を攻略する仲間は多ければ多いだけいい」


「まぁ、そうか」


「そうと決まればさっそく案内しよう!すぐに出れるかい?」


「ああ!行こう」


こうして俺たちは宿屋を出た。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「討伐隊の所へ行く前に君たちに案内したい場所があるんだ」


「ほぉ」


「転生者が集まる場所さ」


りゅうとは小声で俺たちに耳打ちする。


「さっ、行こうか。もうすぐ着く」


俺たちはりゅうとの後についていった。


着いたのは大通りにある「一見さんお断り」の看板をぶら下げた小さめの店。

りゅうとの後に続き店に入る。


「いらっしゃい。おお、りゅうとか。その2人は?」


「新人さ」


「2人もか…よろしくな!兄ちゃんたち」


『よろしくお願いします』

『よろしくお願いします』


そう言って俺たちはお辞儀をする。


「ちなみに2人も日本人だよ」


「おお!2人とも日本人か!ジャパニーズ!」


久しぶりに聞いた英語に一瞬理解できなかった。


「この人はジョン。アメリカ人さ」


「この人も転生者なのか…」


「これから会う人は全て転生者だよ」


「ここに悪いヤツはいないからな!楽しんでけよ、お2人さん!」


「はい。ありがとうございます!」


そう言って俺たちは地下へと続く階段を下っていった。


15段ほどの階段を下ったら目の前にドアが現れた。


ドアを開け入る。

するとそこにはさっきまででは考えられないほど大きい空間が広がっていた。


目に見えるだけでも多くの人がいて、人種も様々だった。


「こんな感じでたくさんいるんだが、君たちがとりあえず会うべき人は2人だ。ついてきて」


すれ違う人や周囲の人からの目線を感じつつついていく。

案内されたのは真ん中の大きな階段を登った先にあり、一目で大事な場所とわかるほどの存在感を放っていた。


りゅうとが大きな両開きのドアを開く。


「新人2人を連れてきました!」


その言葉が放たれた先には社長のような椅子に座っている男と、その斜め後ろで護衛をするかのように立っている男。


座っている男はかなりのおじさんで髪も髭も白くなっている。

立っている男は鎧に身を包み、鎧の下は銀色の服を着ていて、足先からすね、手、肩、腰などの鎧が赤色と黒色で装飾されている。

顔は見えず、同様に赤と黒で装飾されている。

そして背中には自分の身の丈ほどある太刀を担いでいた。

なんて言うんだろう。

リオ◯ウスの装備みたいな、そんな感じだ。


2人からの威圧感はすごく、敵対していないと分かっていてもどこか警戒してしまう。


「こちらが勇者のけっつん君と聴視あきみ君です」


「ふむ。よく来てくれたな。歓迎するぞ。勇者はずっと探しておってな、今は落ち着いたが報告を聞いた時は子供のようにはしゃいだぞ」


そう言って大笑いしていた。

思ったより怖い人ではなさそうだ。


「さて、こちらも紹介するか。わしの名はジョイコブ。イギリス人だ。こっちのやつは無口で秘密主義でな。本名も生まれも知らんがスレイヤーと呼ばれておる。その実力は討伐隊NO.1だ」

 

「…よろしく頼む」


スレイヤーはその一言しか喋らなかった。NO.1か。

この国が1番大きいらしいし、この世界で実質1番強いのか?

どれほどの実力か見てみたいな。


「討伐隊に入るなら嫌でもこの男の実力を知ることになる。お前の出番はいつだったか」


「明日です」


「明日か。ちょうどいい。君たち、討伐隊でのトーナメントは知ってるか?」


「トーナメント?知らないです」


「月に1回討伐隊の中でトーナメントを行うんだ。もちろん客もいる。それの結果を元に討伐隊での格付けを行なっておる。そしてスレイヤーは今まで1度も負けた事がない。正真正銘のNo. 1だ。実力が見たいだろ?明日りゅうとに案内してもらうといい」


「なるほど…ありがとうございます」


討伐隊でのトーナメントか。

俺たちも討伐隊に入るんだし仲間の実力を見るって点でもいいな。

単純に楽しそうだし。


「討伐隊に入るってことはそのトーナメントにも出れるって事ですか?」


けっつんが言う。


「ああ、出れるとも。だが強制ではない。権利が与えられるだけだ」


「出ます!やらせてください」


「はっはっはっ!元気なことだ。よかろう、許可する。明後日からの個人戦に出るといい」


「よし…。ありがとうございます!」


「ふむ。聴視あきみ君も出るかね?」


「え?…うん、出ます!」


「よろしい!君たちには期待している。さて、今日はこのくらいにしておくか。りゅうと!2人を討伐隊本部まで案内して差し上げろ」


「わかりました!」


そうして俺たちは部屋から出た。


「彼らは討伐隊にいい刺激になるだろうな。勇者が来たとなればスレイヤー、君もうかうかしてられないのではないか?」


「まだ負けませんよ。まだ、ね」


「はっはっはっ!せいぜい君が負ける日を期待しておこう」

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