〜第18話〜 アノニマスのマスク
見るからにこいつがボスだな…
ボスというからには強いんだろうな。
よって俺がとるべき行動は1つ。足止めだ。
「あなたの名前は?なんていうんですか?」
「…」
無視…
あれ、なんか思い出したくない過去が…
いや、違う、これは警戒してるんだ。
組織のボスだもんな。
簡単に油断できないよな。
「いえ、私から自己紹介すべきでしたね。私はけっつんと申します」
ん?今ピクッとしたような…あ、
「う、嘘です!けっつんじゃありません!」
と叫ぶと同時に目の前に巨大な火の玉が迫り来る。
「おぅわ!」
なんとか回避。
情けない声を出してしまった…
アブダクトはけっつんを狙ってるんだから
けっつんなんて名乗っちゃ絶対ダメだろ。
悪ふざけしすぎたな…反省反省。
さてと、使ってきたのは火魔法か、じゃあ水魔法を積極的に使っていこう。
見たところ剣は持ってないし魔術師と見ていいのかな、一応隠し持ってる可能性も考えつつ立ち回るか。
まずは様子見、水の矢を作り、飛ばす。
色んな魔法を覚えたがやっぱり水の矢が1番慣れている。作るスピードがダンチだぜ!
手のひらから水の矢が発射される。
ボスは静かに手のひらをこちらに向ける。
そのまま着弾、と思いきやボスの手のひらに触れる直前で消えてなくなった。
なんだ…?
吸収された…?初めて見た。魔法を吸収とかできるんだな。
って感心してる場合じゃないか。
あれ…?魔法吸収されちゃったら俺何もできなくない?剣も持ってないし…
えーっと、詰み…?
たすけてーけつえもんーー!!!
「ふむ、今使える最強の魔法を使ってみよ」
「え…?」
喋った…?何て?最強の魔法?
「どうした?さっきのが1番強いわけじゃないじゃろう?」
「…何が目的だ?」
「おまえさんさっきの魔法で回転をかけてたじゃろ?しかもとんでもなく速い。その発想をするやつは初めて見たものでな。おまえさんの実力を見てみたくなった」
はあ…なるほど?
俺の実力って別になんだけどなあ…
そんで口調から見るに思ってたよりおじいちゃんなのか?
分からんが攻撃を与えるチャンスだ。フルパワーでいこう。
使うのはやはり使い慣れた水の矢。でもさっきより大きく、より回転させ、より速く。
とにかく全てをフルパワーだ。
普段なら2秒あれば発射できるところを20秒かけた。これほどかければ少しはダメージを与えれるだろう。
ボスに向け、発射。
水の矢は最高のスピードで、最高の回転で飛んでいく。
だがやはりボスの手に触れる直前で消えてなくなる。
最強かよこいつは。
「ふむ、なかなかじゃな。今はまだひよっこじゃが鍛えればそれなりの魔術師になるじゃろうて…おっと、そろそろ時間じゃ。さらば、若きひよっこ」
「ま、待て!」
魔法を使おうとしたら、ボスはその場から一瞬でどこかへ消えた。
魔法吸収の上に瞬間移動か。
詰め込みすぎだろ。
「やつは!?」
けっつんが階段を降りてきた。
「悪い…逃した。俺の力不足だ」
「いや、遅くなった俺も悪い。とにかく無事でよかった」
「なあ、ボスについて何か知ってるか?」
「俺が得た情報によると、30代くらいの剣士だったはず」
「剣士?魔術師じゃなくて?」
「ああ、そのはずだ」
なんだと…?
ということはあいつはボスじゃない?
俺の勘違いだったのか?
でもあのタイミングでこの場所にいるなんてありえないだろ。
何者なんだあのじじいは…?
少しした後にミクシアさんが降りてきた。
汗をびっしょりかき、息切れしていた。
とてもかわいい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〜次の日〜
街を出る前に資金調達のためギルドの扉を開いた。
「おい!聞いたか!?」
「ああ!奴らついにいなくなったらしい!」
ギルドの中はなにやら騒がしかった。
「ん?なんだこれ?」
「わかんね」
「話を聞いてみましょう」
「そうですな、すみませーん」
受付のお姉さんに声をかける。
「あ、けっつんさん!アブダクトを倒してくれたらしいですね!」
「えあ、奴らの基地に乗り込みました。もしかしてこの騒ぎって…?」
「そうです!アブダクトがいなくなってみんな喜んでるんですよ!けっつんさんお手柄ですね!」
「ありがとうございます」
受付のお姉さんにそう言われたが、騒いでる人には感謝の言葉も何も言われない。
多分誰がやったかは知らないのだろう。
「あれ?なんでお姉さんは俺らがやった事を知ってるんですか?」
「けっつん様のお仲間にアブダクトのボスの身柄と共にうかがいましたが?」
ん?ボスの身柄?逃したんだけど…
何か知ってるかと後ろの2人に目配せするが、どちらも顔を振る。
なんか嫌な予感がする…
「ちなみにけっつんの仲間と言って報告したやつの特徴を教えてもらってもいいですか?」
「構いませんよ。えっと、全身黒の服に黒のハットを被ってて、アノニマスのマスクをしていらっしゃいました」
ですよね〜
と、言うことはだ。
やはりあの時会ったあいつはボスじゃなくて、ボスを狙ってる誰か。暗殺者とかかな?
それで俺と暗殺者が会ったのは暗殺が終わった後で、帰る前だった。
暗殺者的には俺らが乗り込んできたからこの騒ぎに乗じて逃げようとしたんだろう。
それならあいつは味方だったのか?
でもけっつんって言葉を聞いたら急に襲ってきたし…
けっつんに恨みがあるとか?
でも実力を見てみたいとか言ってたしな…
んー、分からん。分からない事はいくら考えても分からない。やめだやめ。
俺らは依頼を受けにきたんだ。
えーっと、俺1人で受けれるCランクの依頼は、と。
「なんじゃお前さんCランクの依頼うけるのか?」
恐る恐る振り返るとアノニマスのマスクをした男が立っていた。
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