〜第17話〜 ボス

あの後1度庭を出て様子を見たが、バレていないようだった。

奇跡だ。

なので無事に通気口に辿り着けた。


「じゃあ俺が先頭で行こう。ミクシアさん、マップを」


マップを確認して進む道を確認する。よし行ける。


ん?なにやらけっつんが…そわそわしてる。

…あ、そういうことか。


「やっぱけっつん先頭で」

「は!?なんでだよ!」

「お前ミクシアさんを後ろから眺めようとか思ってただろ」

「お、思ってねえし」

「じゃあ先頭でもいいよな?」

「…ちっ。その代わりお前は俺の後ろな!」

「はいはいわかりましたよ」


分かりやすいやつだ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


通気口から無事侵入。

辿り着いた部屋は狭く、魔術で作られた箱が至る所に積み上げられていた。

物置なのかな?しばらく使ってないのか埃がすごい。まっくろな丸いやつが出てきそうだ。


マップを見る。この部屋を出てすぐ左手が非常出口だ。


静かにドアを開けてクリアリング。

よし、誰もいないな…忍足で非常口まで移動。ここからは階段だ…


けっつん、俺、ミクシアさんの順番で階段を登っていく。けっつんは索敵能力に優れてるはずだし前衛でいいはず…

きっと多分おそらくメイビー。


警戒しながら登ったが、特に何もなく最上階の4階まで登れた。ここから廊下を少し歩けばもうボスの部屋、その少し先に屋根裏に行けるハシゴがあるはず。なんかあっけないな。

いや油断はダメだ…


非常口のドアを開けるとすぐに曲がり角。左に曲がるL字型だ。


ボスの部屋の前には見張りがいる可能性が高いな。ここは索敵能力が1番あるけっつんに任せよう。


けっつんに視線をおくり、土魔術で『偵察頼む』と空中で文字を作ると、静かに頷いた。


けっつんは壁ギリギリに背中をつけ、顔だけを覗き込ませる。

映画でよく見た事があるやつだ。


「2人だ。鎧をしてる」

「ミクシアさん、お願いします」

「いえ、私は遠隔で魔法を使えません。ここは聴視あきみさんの方が適任でしょう」

「…わかりました」


自分より実力が上の人に期待されるのはむず痒いな…ミクシアさんの期待は応えれるよう、頑張らないとな。


あと、この前遠隔で魔法を使うのはすごいと褒められた。治癒魔法も遠隔で使うのもミクシアさんに教えたが使えないようだった。


もしかして俺ってすごい…?

いや、ダメだ。傲慢さは慢心を生む。

謙虚に謙虚に…でも自信は大事だ。

俺は弱くも強くもない。よしこれでいこう。


さてどうやって始末しようか。バレないように始末するには水、木、土、氷辺りか?

水じゃ少し心許ないし、土は音が立つな。残ったのは木か氷か…よし。


曲がり角を覗き込むと、ボスの部屋のドアの前に2人の見張りが立っていた。


手のひらに魔力を込める。

見張りの足元から細い木が生え、背後から上へと伸ばす。

まずは口を塞ぎ、声を出せないようにする。

その後体全体を木で縛る。


よし…完璧だ。

殺した方がいいとは分かってはいるものの、やはり怖い。殺さないで済むならなるべく殺したくない。

こういう考えは甘いんだろうな…

でも人を殺すのはやっぱり…できればしたくないよなあ…


などと考えながら廊下を奥へ進む。

けっつんは不用心にずかずかと歩きやがるので、慎重に進めと小声で注意。

分かったよと言われたが正直不安しかない。


屋根裏への入り口に到達。不用心にハシゴが掛かっている。まるで、ここから入れますよと誘っているように。

うん、罠だなこれ。


「これ多分罠だな。別の道から行こう。ってえ?」

「え?罠?」


既にけっつんがハシゴを登っていた。


チリーン!チリーン!と鐘のような音が響き渡る。

そしてすぐに見張りが集まってきた。


「す、すまん…」


なんて情けない顔してんだこいつ…はぁ…

けっつんといると退屈しないなまったく。


「過ぎた事です。気にしないでください」


優しいなーミクシアさんは。

まあこんなしょぼくれてるやつに説教はできないか。


「プラスに考えてみろ。これでもういくらでも暴れていいんだぞ?」

「確かに!やっぱこそこそするのは性に合わねえ!」


うん、知ってた。


ここにいる敵の数は15〜20ほど。

廊下で道が狭いから囲まれることもないだろうしまあいけるだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


思ってた以上にあっさり片付いた。

俺らの方針として人殺しはできればしないと決定していたので、倒れてはいるが全員息はある。けっつんはいざという時は迷わず殺せと言っていたが、正直自信はない…


残すはボスだけだが、この騒ぎで俺らの事に気づいてるだろう。

それほど時間は経ってないが逃走用の隠し扉的なのがあってもおかしくない。


ここは4階。どういう道を通ろうが結局は1階まで降りなければならない。

なので俺らが行くべきは1階。

階段だと時間がかかるな。


「ミクシアさん。これくらいの大きさでとびっきり重い岩を土魔法で作って落としてください」


そう言って半径2mくらいの円を、水魔法で地面を濡らして示す。


「分かりました」


そういう言うと、ミクシアさんの杖の先から岩が出現し、みるみる大きくなる。


「落とします」


岩が落下すると地面に綺麗な円の穴があく。

岩は1階まで落ちていき、吹き抜けの状態になった。


この時、これほどの穴が開いたら崩れる可能性を考えて木魔法を使って補強していた。

もっとも物理は詳しくないので、各階に柱を作りまくるパワープレイだが。これであっていたかも、必要だったかも分からない。

まあ崩れなかったから万事オーケー。

結果良ければ全てよし。

ローマは1日にしてならず。あ、逆か。

ローマは1日にしてなる。よし、完璧。


あいた穴の側面に土魔法で段々の小さな地面を作る。螺旋階段みたいなイメージだ。


2人には階段を使ってもらうがそれじゃ逃げてるボスに追いつかないかもしれない。

なので俺は真ん中に飛び込み、一気に1階まで降りる。


あ、まって、落下スピードめっちゃ速い、

ちょっと、聞いてないって。

…怖いからゆっくり行くか。


風魔法を使い減速。月くらいの落下スピードで降りていく。

そして到着。 


さて、ボスは…と、お、ちょうど良いな。


目の前に全身黒の服に黒のハットをかぶって、アノニマスのマスクをした男がいた。

顔が見えない。

こいつがボスか…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る