〜第16話〜 アブダクト

人攫いがけっつんを探してる?どういうことだ?なぜ?けっつんはそんな俺の感じた疑問を説明するように話し始めた。


聴視あきみは知ってると思うがこの前人攫いを倒したやんな?実はやつらは半年…って言っても分からないんやっけ、まあ一定の期間で来る。だから俺はやつらが来るたびに倒していた。そしたら人攫いを命じてた組織、アブダクトって言うんやけど、そいつらに目をつけられたってわけ。」


なるほど、それにしても人助けしてたのか。ちょっと見直したな。


「どうやって目をつけられたことを知ったんだ?まさか噂話なんて馬鹿な事はないよな」

「俺をなんやと思ってるん。ギルドから教えてもらったんだよ。ギルドも人攫いにはムカついてるしな」

「ギルドか…なら信用はできるか。で、そのアブダクト?はどうするつもりなんだ?戦う?逃げる?」


「迷ったが戦おうかなーって思ってる。俺を誘き出すために最近人攫いが頻繁に起きてるらしい。俺のせいだって分かってるのに見て見ぬふりは流石にできん」


「賛成です。人攫いを放っておく意味が分かりません」

「珍しくミクシアさんがお怒りだ。なら断るのはありえないな」


こうして俺らはアブダクトと戦うことになった。


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〜その後〜


ミクシアは部屋に帰っていった。部屋には俺とけっつん2人きり…

密室で何も起こらないはずもなく……


「ちょっと聞いてくれ」


冷凍した肉を火魔法で解凍していたけっつんに話しかける。


「どうしたん?」

「ミクシアさんとフラグについてだ」

「ちょっと待て」


そう言うと肉の解凍をやめ、椅子に座りなおした。


「いいぞ」

「ああ、結論から言うとミクシアさんが仲間になったのとフラグは関係ないと思う。ミクシアさんが仲間になったのは偶然だと言うのが俺の考えだ」

「なんでそうなったんだ?」

「まずけっつんが髪を切った事が誰かが仲間になるフラグだったと仮説を立てた。誰が仲間になるかまで決まっていたかは分からない。でもあそこでたまたま俺がミクシアさんに声をかけたからミクシアさんが仲間になった」


俺がけっつんの女性人気があるのが気に入らなくて貶めようとした結果ミクシアさんが仲間になった。

逆に言うともし俺がひねくれていなかったらミクシアさんは仲間にならず他の誰かが仲間になっていたかもしれない。


と説明したいが貶めようとした事がバレるのが嫌なので少し省いた説明をした。


「その可能性はあるがあくまで仮説だな」

「まあな、仮説に仮説を立てる事になるがもう1つある。それは転生者である俺達ならフラグを折れるかもしれないって事だ」

「本来はミクシアさんじゃない他の誰かが仲間になるフラグが立っていたけどお前の行動によって変わった…って事か?」

「その通りだ。まだ仮説だが試す価値はある。もし今度フラグとはっきり分かる事が起これば試して見たいと思う」

「なるほど、頭の隅に入れとくわ」


自分ながら良い推理だと思う。これが本当ならもし悪いフラグが立っても防ぐ事ができるかもしれない。早めに検証しておきたい。


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〜次の日〜


あの匂いがする。俺がこの世界に来たばかりで、何も分からなかったあの時を思い出す。

俺もかなり強くなったはず。

そう思おう。

うん、自信は大事だ。


「さて、行くか」


その場には俺とけっつんとミクシアさんの3人。もっと大人数の方がいいのではと提案したが、こっちの動きを勘づかれてもめんどくさいとの事。

信じられる人も少ないし、3人でという事になった。


とりあえず匂いのする方向へ向かう。

そして人攫いを見つけ、なんやかんやで組織のボスがいると言う基地に着いた。


基地は森に囲まれた大豪邸のような所。

館内マップは手に入れていて、大体の敵の数、場所も把握できていた。

ミクシアさんの案で定番の通気口を使いボスがいる部屋、もしくはその周辺に忍び込み暗殺。組織はボスさえいなくなればバラバラになるとの事。


正直ステルスは好みじゃないが贅沢言ってられる場面じゃないしな。

しょうがない。


ボスがいると思われる部屋は最上階の部屋。そこに忍び込むには庭から入り、通気口を使って中に侵入。それから非常階段を使って上へ、ハシゴが最悪魔法を使って屋根裏に入り、穴を開けて上からの奇襲。

これが大まかな作戦だ。


まあすんなりいかない可能性も考えつつその場その場でなんとかしよう。けっつんもミクシアさんもいるんだしなんとかなるだろう。


まずは第一段階の庭、けっつんを踏み台にして、大豪邸の周りを囲う柵の上から覗き込む。


…特に見張りはいないな。と思ったら犬小屋があった。中で寝ているのは大型犬。

いや、犬というより狼かもしれない…


とにかくあの狼に気づかれないようにしなければいけない。幸いな事に寝ているので物音を立てなければ大丈夫だろう。


そのまま柵を飛び越え、抜き足差し足忍足。マップによると通気口は犬小屋の前を通らなければ辿り着けない。

なので慎重に慎重に…


パリンっ


「あ」


後ろから間抜けな声が聞こえた。

ミクシアさんがこんな失態するわけない。

つまり…あいつだ。


狼が犬小屋から出てきて、こちらを睨みながらグルグルと音を立てる。こちらを舐め回すように見た後、その強靭な足で地面を蹴り、襲いかかって…


「うるせえ!犬っころが!!」


一刀両断。

うるせえのはお前だよ。


もしかしてこいつ俺よりステルス向いてない…?


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