〜第31話〜 絶望
勇者の剣が奪われた。
それからというもの、けっつんは生気をなくした廃人のように部屋に立てこもっていた。
勇者の剣はこの世界に来てから苦楽を共にしてきた相棒のような存在なのかもしれない。それに真の力を解放しつつあったからこそショックがより大きいのだろう。
なんで魔族は勇者の剣を奪ったのだろう。
こちらの戦力を削るためならそもそも俺やけっつん自身を狙うだろう。
つまり狙いは他にあるということ。
なんだろう…。
まあ普通に考えればバランス調整だろう。
よく考えればけっつんは明らかに強キャラの黒騎士に圧勝し、魔王の刺客と同等レベルに戦えてしまっていた。
今はおそらく物語の序盤か中盤。
これほど強くなるには少し早い気もする。
なので一度力を失う。
割とあるパターンだ。
となると前回と同じで魔族が現れるときはストーリーに何か進展がある時だ。
前回は初めて黒い雷を使って新技会得。
今回は勇者の剣を奪われる。
なんて言うんだろう。
チャプター的な感じかな。
チャプターの最後のボスが魔族みたいな?
ならまだ何回か戦うことになるだろうな。
次は勇者の剣なしの状態で戦うのか…。
その時までに強くならないといけないな。
俺も、けっつんも。
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〜1週間後〜
最近はけっつんが稽古を始めた。
勇者の剣に頼りっぱなしだったから自分自身を鍛え直すとの事だ。
最初はこもりっきりでご飯もまともに食べなかったのだが、次第に食べるようになり、顔を出すようになり、話すようになり。
1週間経って前を向くに至った。
もっと時間がかかると思っていたがそこら辺はさすがと言うべきだろう。
切り替えがはやい。
引きずっているかどうかは別として、前を向こうとはしている。
俺は陰から見守ってたまに助けようと思う。
勇者の剣がなくなったことでけっつんの実力は著しく下がった。
だがそれでもそこらの冒険者よりは力を持っている。
この前けっつんがBランクの依頼を受けたが少し苦戦したようだ。
やはり勇者の剣がなくなった代償は大きい。
今のままだとけっつん1人でAランクの依頼を達成できるかどうか。
これからは一緒に強くなっていかなければならない。
後、魔族から取り返したブレイバー伝説だが内容を読んでみた。
ざっくりまとめるとこうだ。
昔々1人の男と1人の女がいて、2人はモンスターを狩って生活をしていた。
しかしある日突然ドラゴンと遭遇した。
女はドラゴンによって怪我をさせられ、男は女を守るために戦った。
防戦一方だったが、なんとか一太刀を浴びせることができた。
しかし差は歴然だ。
そう思い諦めかけた時突然ドラゴンの首が切り落とされた。
目にも止まらないスピードだった。
そして気づいたら謎の男が目の前に立っていて、その男から剣を受け取った。
ここまではけっつんから聞いた事がある。
そして物語はこう進んでいく。
剣を受け取った男は勇者の剣を持ち旅に出た。
女は男と共に行き、旅のサポートをした。
その後旅の中で仲間を増やしていき、ついに魔王の元へと辿り着いた。
勇者の剣を携えた男と仲間は見事魔王を撃ち倒す事ができた。
そしてその男は勇者と呼ばれ、人々から崇められた。
と、こんな感じだ。
読んでみた感想はよく分からない。
書いている事が曖昧すぎて勇者一行が何をしたかがはっきりとわからない。
よって俺たちも何をすればいいか分からない。
やる事がなくなってしまった。
ので俺が個人的に気になっている情報屋から貰った謎の地図が示す場所に行ってみたいとみんなには話した。
みんなの返事は色良いもので移動をすぐにでも始めようといった感じだ。
俺たちの今後の方針としては地図が示す場所に移動しつつ、けっつんをサポートといった感じだ。
と言っても移動中は大したこともないだろう。
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〜3日後〜
問題発生だ。
新しい街に入り、依頼を受けようとギルドに入ってみた所、なにやら騒がしかった。
問題について受付の女性に事情を聞き、簡単にまとめてみた。
この街の近くには森があり、そこは最高でDランクほどしかいない比較的安全な森で、冒険者になりたての人がよく訪れていた。
だが最近様子がおかしく、Cランクの魔物が数回、Bランクの魔物が1回目撃された。
そこで森の様子見兼、発見次第討伐という新しい依頼を出した。
その依頼を受けたはずの冒険者パーティがギルドを出てから2時間経ったが、帰ってきてないらしい。
街から森は徒歩で約5分ほど、様子見にしても討伐にしても2時間もかからないとのことだ。
そこで依頼ランクを上げてもう1度依頼をはろうとなっていた所らしい。
そこで俺たちは迷いなくその依頼を受けることにし、さっそく森へと入った。
ここまではいいのだが、問題はこれからだ。
森へ入ったはいいが、情報にない初心者パーティが森を彷徨っていた。
現在森に入るのはギルドから禁止されているはず。
依頼を受けたパーティにしては態度や装備が初心者感丸出し、年も若い。
このパーティは何かわけがあって森に入ったのかもしれないのでしばらく遠くから見てみることにした。
もちろん危険だと感じたら守るが。
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