〜第22話 救出

あの後イルダに手枷を崩す魔法を教えてもらい、2人で城内マップを確認した。


すると地下に牢屋らしき部屋があった。

ミクシアさんがいるのはここだと仮定して、潜入ルートを探した。


ぱっと見で見つけたルートは3つ。

何があるか分からないので全て覚えておく事にした。

だが見張りの位置などは俺たちの推測なため間違っている可能性は高い。

城の構図を全て覚えておくのが無難だろう。


宿屋の部屋で作戦について入念に打ち合わせをした。

いくつも出す俺の案にイルダは「ふむ、それがよかろう」と尊重してくれた。

出発は明日の昼となった。


打ち合わせをしている最中にけっつんが外へと出ていくのが横目で見えた。

どうせうんこだろう。まあなんでもいい。


日が暮れてきた頃に打ち合わせは終わり、

それぞれの部屋へと戻った。

今日はけっつんとは違う部屋を借りた。

出発前に変に気を紛らわせたくない。


最後にもう1度地図を見直し、ベッドに入った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


窓から入る日差しに照らされ、目が覚めた。

外に出て太陽の位置を確認する。


約束の時間は昼、太陽が昇り切った頃。

今からはまだ時間がある。


行き先も決めないまま、フラフラと歩く。

やがて俺が辿りついた先は最初に転生したあの場所だった。


ここから全てが始まった。

あの日から何もかもが変わった。

そう思うと感慨深かった。


「すーっ、ふー…よし」


俺は髪の毛を1本抜きそっと地面に添えた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さて、そろそろ行くかの」


「ああ…」


侵入経路はこうだ。

裏門から入り階段でそのまま地下へ、速やかにミクシアさんを解放し、裏門から脱出。

俺たちはすでに裏門の近くまで来ていた。


だが順調に行かない可能性もある。

細心の注意を払っていこう。


裏門の前には兵士が2人いたが、

こいつらは難なく倒した。


裏門を開け、階段を下る。

ここに兵士はおらず、何事もなく地下に到着。


目の前には廊下がありその両端に牢屋がひたすらある。

1つの廊下は短いが横並びに5本もあり、

地下は大きい長方形のような形だ。

おそらくこの中にミクシアさんがいる。

見たところ見張りはいなさそうだし、

1つ1つ見て確認するしかないな。


「なにもんだあんた!まさか助けにきてくれたのか!?」

「おいあんた!俺も助けてくれ!」

「俺を出せ!金ならいくらでもやる!!」


牢屋の中の囚人達が騒ぎ出す。


「…まずいのお」


「さっさとミクシアさんを見つけよう」


廊下を早足で歩く。

牢屋に1人ずつしか収容されてないようだ。

これなら見落としはない。


地図によると廊下はおよそ100mほど。

それが5本。かなり時間がかかるな…


「俺は右側を見るイルダは左側を頼む」


「はいよ」


気づけば俺たちは走っていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


いない…。

もう4本分見終わったのに…。

次が最後。

ここにいなかったらどこにいるか…


候補はあるが、1つじゃない。

しらみつぶしになるのでかなり大変だ。

頼む…ここにいてくれ…。


走りながら1人1人の顔を確認していく。

違う、こいつも違う、違う。


既に廊下の半分ほどまで来ていた。

ここにはいないのか…?


もう既に結構な騒ぎになっている。

このままでは兵士たちに気づかれるのも時間の問題だろう。

1度撤退した方がいいのか…?

いやでもここにいなかったらどこにいるか分からない。

どうしたらいいんだ…

動く足が少しずつ遅くなる。


「迷うな!」


珍しくイルダが大声を出した。


「お主が決めた事じゃろう!迷うでない!」


ああ、そうだ。

…情けなねえな俺。


「ありがとう」


「ふむ、良い顔つきになった」


こっちを見てないくせによく言うぜ。

いや、信用してくれてるのか…。

…よし。

残りは後少し、およそ40mほど。

ミクシアさんがいる可能性は低いが、ちゃんと最後まで見よう。

たとえいなくてもその事実を受け止めよう。


残り約30m、やはりいない。だがまだ分からない。


残り約20m、ミクシアさんはいない。

上からバタバタと音が聞こえる。そろそろ気づかれたな。


残り約10m、あと牢屋が残り6つ。

頼む、いてくれ。


いない。あと4つ。


いない。最後の2つ。


「こっちはおらん」


「わかった、確認する」


牢屋を覗き込む。

…誰もいない。ダメかやっぱ…。

物事はそう上手く進まないということか。

少し安易に動きすぎたかもしれないな…。


だが終わったことは仕方ない。

これで城の警備は堅くなるだろう、もう一度考え直しだな。


「いない。脱出するぞ」


「そうか…残念じゃ。…ん?ちょっとまて」



そう言うとイルダは火魔法を使い、

辺りを照らす。


「ふむ、やはりな」


そう呟き牢屋の鍵穴をボロボロと崩れさせ、扉を開ける。

そして牢屋に入り俺を手招きする。


俺は何も分からなかったがついていった。

イルダが指をさした先はベッドの下だった。


恐る恐る覗き込む。

そこには茶髪のポニーテールに魔導士の服を着た女性。

ミクシアさんがいた。


「ミクシアさん!」


「……」


返事がない…ただの屍のようだ。

ってなんでやねーん。屍なわけないやろが〜


…何してんだ俺は。

ミクシアさんを見つけたからテンションがバグっていたようだ。気をつけねば。


イルダと2人でベッドを動かすと、

ミクシアさんが姿を現した。

ああ、ミクシアさんがいつも以上に美しい。

いや俺がミクシアさんの美しさに気づいていなかっただけだ。

なくなって気づく大切さというやつだ。

ミクシアさんは美しい、女神だ。


ミクシアさんの手枷をボロボロに崩す。

ミクシアさんはすーすーと寝息を立てながら寝ていた。

とてもかわいらしい、やはり女神だ。


ベッドの下にいた理由は兵士が隠すためなのかはたまた寝相か…

ミクシアさんが絶対違う部屋がいいと言っていたのはそのせいなのかな。


なんて思いつつミクシアさんをおぶる。


「いたぞ!」


それと同時に俺らは兵士に囲まれた。

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