〜第21話〜 情報屋

宿屋に帰った後も会話は一切なく、そのまま朝がきた。


もうあいつの声も顔も見たくない。

せっかく見直していた所なのに…

ふざけた事いいやがって。


ミクシアさんは俺が助けるしかない。

何を犠牲にしてもミクシアさんは助ける。

それぐらいの恩がある。


ミクシアさんがいる場所は多分あそこだ。

この街で1番でかい建物で、ここら辺から少し離れた所にある城。

サイズとしてはあまり大きくはないがこの世界に来てから1番でかい建物だ。


城の中のどこに監禁されてるかは分からないが、こういうのは大体地下だと決まっている。


だが真正面から戦っても負けるだけだろう。

やはり潜入しかないか…


まずは城内マップの入手からだな。

監禁されてるならおそらく牢屋で、手枷もされているだろう。

だからそこら辺の解除方法も考えておかなければならない。


なるべく早く行きたいが準備を怠ってはいけない。焦りは禁物だ。


マップはどうするか…。

街で手に入るようなものじゃないし…

まあこういうのは攻略方法があるはず。

そうだな…。情報屋とかかな…?

よし、うん。

その線でギルドで聞き込みして見るか。


ギルドへと向かおうと宿屋を出る。


「ちょっと待て」


後ろから声がして振り返る。

するとそこにイルダがいた。


「どうしたんだ?」


「あの女子おなごを助ける気に変わりはないかの?」


「…当たり前だ」


「そうじゃろうなあ。昨日のお主の様子を見ればあの女子おなごがいかに大切かは見て取れる。だがお主1人で助けるにはちときついのではないか?」


「…何が言いたい」


「わしも手伝ってやろうかと思うてな」


「…なんでだ?」


「元々お主に興味があって近づいたんじゃ。そのお主が死に物狂いでおなごを救うとなると面白いに決まっておろう」


「はっ、遊び半分ってわけか」


「じゃがお主は断れない」


「…その通りだな。頼む、イルダ」


「ふぉっふぉ、安心せえ。遊び半分でもやるとなったらとことんやるのがわしじゃ」


「ああ、頼りにしてる」


「それで、どうするつもりじゃ?」


「潜入する。そのために城内マップと牢屋や手枷を解除する方法を考えておきたい」


「ふむ、なるほど。城内マップは分からぬが解除方法なら分かるかもしれないぞい」


「どうやるんだ?」


「この世界の手枷や牢屋は魔法でできておる。土か岩といったところじゃろう。だから土と岩を崩せるような魔法を覚えればいいんじゃ」


「…なるほど。試してみる価値はあるな。

マップの方はギルドで聞き込みしてみようと思ってる」


「ふむ、あそこは1番情報が集まるからの。

では聴視あきみはギルドに行き、わしが魔法を試してみる。これでどうじゃ?」


「ああ、そうしよう。頼んだぞ」


「任せい」


こうしてイルダが手伝ってくれることになった。

何を考えているか分からないが手伝ってくれるならなんでもいい。

利用できるものはなんでも使う。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「すみません、情報屋を知りませんか?」

「情報屋?そんなの知らないねえ」

 

「この辺りの情報屋を知りませんか?」

「んー、聞いたことないな」


「情報屋を知ってますか?」

「あ?なんだクソガキ!」


「情報屋…」

「そんなことより死相が見えますよ!このままでは死んでしまいますよ!さあ、この壺を買いなさい!」


なんっっでだよ!!

そりゃ予想はしてたけどさ、ここまで何も知らないとは思わなかったよ。

この辺りどころか情報屋という言葉すら知らなさそうだった。

ギルドにいた人はあらかた話しかけたし…

どうしよう…


「すみません」


ギルドを出てすぐの道で座っている男に話しかけた。

しかしよく見ると服はボロボロ、伸ばしきった髪や髭。おまけに手には酒。

ホームレスみたいなやつだった。

聞いても無駄な気がするがここまで来たらどうにでもなれだ。


「情報屋を知ってますか?」

「……注文は?」


ん?注文?

酒…じゃないよな?

何かの店をやってるのか?

まあなんでもいいや。


「えと、じゃあ…

ステーキ定食、弱火でじっくり」

「…あいよ、ここに俺らの本拠地が記してある。そこに情報屋もいるはずだ。俺もこの辺りの事ならそこそこ知ってるから俺でよければ答えるぜ?」


ん?え?は?

えーっと…え?

いや、冗談…だし…本拠地…?

この紙によると…って遠いし…


「どうした?何か聞きたい事があるんじゃなかったのか?」


「ん…ああ」


まだ全然飲み込めてないがこの偶然を生かさない手はない。


「この街にある城の城内マップはないですか?」


「なんだそんな事か?それなら2日、いや1日待ってくれれば用意できるぜ」


「ほんとですか!?ではお願いします。

あ、代金はどれくらいですか?」


「ああ、初回はいらねえよ。次からはとるけどな。まあ今後もご贔屓にってやつだ」


「ほぅ、いい商売してますね」 


「はっ、そうだろ?それじゃあ明日の昼にまたここに来てくれ」


「わかりました。ありがとうございます」


「おうよ」


なんとかミクシアさん救出の目処が立ちそうだ。

後はイルダの手伝いをして明日までに解除する方法を見つけるか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


宿屋のドアを開けると目の前にイルダがいた。


「おお、いい所に来たの。ほれ、見ておれ」


そう言うとイルダは岩でできた手枷を作り、

手のひらに乗せる。


「ふぬ!」


そう言うと手枷がボロボロと落ちていく。


「どうじゃ?」


自慢げな顔でそう言った。


「すげえよイルダ!まさかこんな早くできるなんて!」


「どうじゃ、わしってすごいじゃろ?」


「ああ、ほんとにすげえ!実は俺もマップを手に入れる手立てを見つけたんだ。明日には全て揃う!」


「なんと。お主も早いではないか」


「よし、よし…」


予想よりもっと早く揃った。

ミクシアさんを救える。

よし…

全て順調だ…

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