〜第26話〜 ユフィア
宿屋に帰った後、部屋に戻ると謎の人影があった。
謎の人影は椅子に座り窓から見える景色を見ていて、俺たちからは後ろ姿しか見えなかった。
全身黒の服にフードを被っていて、男か女かすらも分からない。
いや、人間か魔族かすらも…。
「やっと帰ってきおったか…」
「…え?その声…?」
「こんな老人を待たせて何をしておった?
のう、勇者様よ」
人影が後ろを向き、その顔が見える。
顔を覗かせたのは老婆だった。
「おばさん!無事だったのか!」
「待て!けっつん!」
走り出そうとしたけっつんの手を引っ張る。
「おばさんは捕まって牢屋にいるんだ。
なんでこんな所にいる?
本物っていう証拠がどこにある?」
「離せ!顔も声も本物だ!
偽物なんかじゃねえ!
あれは紛れもなくおばさんだ!」
「馬鹿野郎!見たもの全部信じるんじゃねえ!」
「おやおや、こんな老いぼれは信じられないか。ふむ、警戒心のある良い子だね」
「…なんなんだ?あんたは」
「教えるほどの名もないただのばばあじゃよ。いひひ」
「このセリフ…やっぱおばさんだよ!」
「記憶も姿もコピーされた偽物の可能性もある…ってもういくら言っても無駄か…。
わかったよ。ひとまずはおばさんって事で話を進めよう。だが警戒は怠るなよ?」
「ああ、分かったよ」
ポカンとしていたミクシアさんとイルダに簡単に事情を話し、警戒しておくようにと口酸っぱく言い聞かせ、おばさんの話を聞くことにした。
「さてどこから話そうかねえ…
あんたが出て行った後から話そうか」
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なるほど。
大体理解した。
しかし年寄りの話はいつも長くてかなわん。
なので簡単にまとめたみた。
・おばさんが捕まった理由
おばさんが悪病を流行らせていたと言われていた事が関係しているようだ。
もちろんおばさんは流行らせてはいない。
じゃあなぜこのような認識になったかと言うと…まあ簡単に言うとこの街の権力者の仕業だ。
この街である悪病が流行った後、おばさんはその治療をしていたらしい。
街のはずれで暮らし、街の人とはあまり関わっていなかったのだが悪病を治す薬を作れるのはこの街ではおばさんしかいないらしく重い腰を上げたってわけだ。
ではなぜ治療していたおばさんが悪病を流行らせた原因だと思われたか。
そこでこの街の権力者が出てくる。
この街の権力者は卑怯でずるい。
ある実験で悪病を発生させてしまったがそんなことがバレれば街の人の信用を失う。
その時たまたま治療に身を乗り出していたおばさんになすりつけた。
指名手配までしておばさんを悪病を流行らせた元凶として民に印象づけた。
おばさん本人と、おばさんに救われ信用していた人達は1人残らず牢屋に監禁され、反乱分子は抹消された。
とまあこんな感じらしい。
あと余談だがこの世界は街が地球での国のようなもので、街ごとで権力者は違うし、制度や文化なども結構変わったりする。
大きさもピンキリらしく、街と言うより国に近いのかもしれない。
国同士の戦争とかあるのだろうか。
モンスターがいる世界でも人間同士で争うなんて嫌だな…
なるべく巻き込まれないようにしよう。
と一通り語った後は沈黙が訪れた。
それぞれの顔には同情や困惑、怒りなどの色が見えた。
だがそれを口にしないのは俺が警戒しろと言ったからだろう。
「どうやって牢屋から逃げたんだ?」
口を開いたのはけっつんだった。
そこは1番気になっていた所。
こんな老いぼれ1人で逃げ切れるほど甘くはない。
「一緒に牢屋に入っていたあの馬鹿どもに助けられたんだよ。こんなばばあを最後まで信じてくれた…。
本当に馬鹿ばっかだよ…。
それにわたしゃこれでも動ける方でな。
こんなことも出来る」
そう言うと手のひらで1/10サイズのけっつんフィギュアを作ってみせた。
服のしわや剣の模様まで完璧に再現されていてる。
なるほど魔術師だったのか。
確かに魔術なら年寄りでもなんとかなるか。
いちよう筋は通っている…のか?
「そう難しい顔をするんじゃないよあんたたち。何を言っても信用されないのは分かっておる」
「…ああ、信用してない」
「なに良いことさ。疑いを晴らそうったって小難しいことはばばあには向いてない。
だから簡単にシンプルに…の?」
「というと?」
「殴り込みだよ」
こうして俺たちの城への殴り込みが決定した。
と言ってもおばさんが偽物だった時罠である可能性が高い。
なのでこれも注意するようにとまた言い聞かせておいた。
信用しなさすぎると思われているかもしれないが仕方ない。
命は1つしかないのだから。
まあ俺は2つ目の命だけど。
あとおばさんの名前も教えてもらった。
「名前かい?そういえば言ってなかったかね。ユフィアだよ。これでも昔は美人だったんだよ?」
とお決まりの言葉を言っていた。
ちなみに呼び方が4人で綺麗に分かれ、
けっつんは変わらずおばさん
俺はユフィアさん
ミクシアさんはユフィアおばあ
イルダはユフィア
と読んでいる。
非常に性格が出るな。
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