〜第25話〜 おばさん

雷魔法についてミクシアさんに聞いた。

ミクシアさんもあまり分かっていなかったらしいが何やら特別な魔法らしい。


治癒魔法は珍しいだけであって特別ではないらしく、雷魔法はなんだか凄いらしい。

確かに雷魔法だけはあまり成長がなかった。

何回練習しても静電気程度の力しかでない。

何か特別な事をしないと成長しないとかなのだろうか。

まだ情報を集める必要がありそうだ。


打ち解けたミクシアさんと話しながら宿へと帰った。

その間の会話はとても話が弾み楽しく、

なによりミクシアさんがかわいい。

前の少し大人しいのもかわいかったが活発なのも、また一段とかわいい。 

ああ、なんて幸せな時間だったのだろう…

やはり女神は実在したんだ…


宿に着いた後はミクシアさんと別れけっつんと合流。


けっつんには情報屋にもらった謎の地図について話そうと思っていた。


1つだけ印が打たれた地図。この場所がどこだかも分からないし、何があるのかは見当もつかない。


とにかく起きた事をありのまま話した。

たまたま話しかけた人が情報屋だった事。

「注文は?」と言われ「ステーキ定食」と答えたら謎の地図をもらえた事。

全てを聞いた後、けっつんは俺と同じく首を捻り、唸り声を出していた。


だが場所については心当たりがあるらしく、

けっつんが知る限りこの世界で1番大きい国であるバトフィードという所かもしれないと言っていた。

位置はけっつんが助けられたおばさんの家よりさらに奥にある。


場所は分かったがここに何があるかは分からないのでとにかく行ってみるしかないという結論になった。


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【それから順調に事は進み、少しのピンチやラッキースケベがありつつもなんやかんやでおばさんの家の近くの街へと到着…】


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「懐かしい〜この街は何も変わってねーな」


「けっつんにとっては故郷?なのかな」


「ああ、ここから山が見えるやろ?あそこにおばさんがいるっちゅーこっちゃ」


「ならさっさと行くぞい」


「待て、なんか騒がしくないか?」


街の人々はなにやらとても盛り上がっていて、酒を飲み、酒に飲まれ…

子供みたいに無邪気にはしゃいでいた。

そこら中どこでもだ。

何かお祭りでもやってるのだろうか。


「まあいいだろ。さっさと行くぞ」


「おーよ」


宿屋で部屋を取りその後すぐに山を登った。

道中でモンスターに遭遇したがどれもEランク程度だったのでけっつんが一掃。


あっという間におばさんの家に着いた。

おばさんの家は小さな一軒家。

まさにポツンと一軒家だ。


「おばさん!けっつんだー!」


返事はない。


「おっかしいな。いつも家にいるはずなんだけど…。入るぞー!」


ゆっくりとドアを開ける。

電気が付いていない。


「いない。外出中か?」


「ちょっと待って。あれを見てください」


ミクシアさんが指した先を見る。

そこには本棚があり、本がすぐ下に無造作に散らばっていた。

明らかに誰かに荒らされた形跡。


「もしかして…!?」


そう言うとけっつんが本棚に駆け寄り落ちている本を一つずつ確かめる。


「…やっぱりな」


「どうしたんじゃ?」


「勇者ブレイバー伝説がない」


…最悪だ。


「本棚以外は荒らされてない。狙われたんだろう」


「…ならおばさんがいないのも?」


「ああ、おそらくな」


「何が目的でこんな事…」


「分からん。ただ俺たちがここに来る事を知っている誰か…って言っても誰にも言ってないけどな」


「考えられるのは魔王の手下…くらいかの」


おそらくフラグだったんだろう。

俺たちがここに来たら何者かに襲われた後だった。

ゲームや漫画でよく見る展開だ。


と言っても…すごいな。

話し方でわかる。

ここまで怒ってるけっつんは初めて見た。


「とりあえず誰の仕業かを突き止めるぞ。

怒りをぶつけるのはそれからだ」


「ああ…分かってる」


とりあえず俺たちはおばさんの家を出た。


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街に帰った後、情報を集めるためギルドへと訪れると、ギルドは人で溢れかえっていた。


「ねーちゃん!もっと酒をくれ!」

「こっちもだ!」

「こんなめでたい日はねえぞ!お前ら!潰れても飲むのをやめるなよ!」


「何の騒ぎでしょうか…?」


「なんでしょうね。さっき来た時も街中で騒いでいましたが…何かあったんですかね?」


「わからぬのお」


「とりあえず受付の人に聞いてみるか」


「すみませーん!みんな騒いでますけど何かあったんですか?」


「ああ、今日来たお方ですか?この街で悪病を流行らせていた犯人が捕まったんですよ。私も怖くて…今すぐ飛び跳ねたい気持ちですけど仕事なので…」


見て分かる喜びようだ。

悪病を流行らせていた犯人が捕まった…か。

なるほど…嫌な予感がするな。

確かめてみるか。


「あの、その犯人は今どこにいるかわかりますか?」


「んー、牢屋にでも入れられてるんじゃないですかね、でもなんでそんな事を?」


「いえ、もし逃げ出したら怖いなと思いまして。でも牢屋なら安心ですね」


「はい!直属の兵士が見張ってくれてますから、安心安全です!」


「素晴らしいですね!」


「おい聴視あきみ、ちょっといいか?」


「なんだ?」


「お前まさか…?」


「ああ…見てろ。

すいません。ちなみにその犯人の特徴ってわかりますか?」


「わかりますよ。この街の近くに住んでいた人であまり関わりはなかったのですが最近になって関わり始めまして、えーっと、かなり老いたおばあさんと聞いてます」


はぁ、そうだよな…。

また牢屋か。

それに今度は前よりも大きい街だ。

兵士の質も数も比べ物にならないだろう。

それに情報屋がいるかも分からない。

地図もなしに助けるのは無謀すぎる。


「そうなんですか。ありがとうございました!」


「いえ、また何かごさいましたらお声がけください」


さてと…困った事になったな。

何か助けれるようなフラグが立てばいいんだけど…うーむ、分からん。


「おいけっつん。どうする?」


「……」


その後、一切の会話もなく宿屋まで戻った。








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