〜第40話〜 No.1の実力

〜スレイヤー視点〜


優勝者が決まった。

チーム打倒スレイヤーズ。

ふっ、ふざけた名だ。

だがチームのバランスは良い。

前線には討伐隊NO.2と呼ばれ、前回の個人戦トーナメント1位のノア。

そしてタンクとしてなら討伐隊1の実力をもつルーカス。

サポートで魔法使いのゆず。

ゆずは魔力や魔法の威力が特別強いわけではないがサポートがとにかく上手い。

この3人の実力を考えれば一緒のチームにしてはいけない。

おそらくジョイコブさんの仕業だろう。

けっつんと聴視あきみにNO.1の強さを見せるためか…。

いや、負けるところを見たいだけか。

あの人ならやりかねない。

だが悪いが期待には応えられないな。

俺は最強であり続けなければならない。


「登場していただきましょう!全戦全勝!生きる伝説!スレイヤー!」


…行くか。


狭く暗い道を抜けると景色は一変する。

ライトに眩しいほど照らされ、観客の声はスタジアム中に響く。

俺はそのまま中央に進む。


徐々に大きくなる人影。

今回戦う相手、おそらく今まで戦ったチームの中でも1番強く、バランスのいいチームだ。


「待ってましたよスレイヤーさん。あんたの無敗伝説も今日で終わりだ」


ノア。

こいつとは付き合いが長いな。

出会ったのは討伐隊結成当初。

ノアはお調子ものだった。

だがもともとの身体能力も高く、たいして努力もしなくてもある程度の実力だった。

そこで俺が叩きのめした。

それからは俺に次ぐNO.2と呼ばれるまでに成長した。


「勝たせていただきますよ」


ルーカス。

その大きい体に反して優しい奴だ。

モンスターとの戦闘時、この男がいなければ討伐隊の前線は崩壊するだろう。

こいつを相手にするのは苦労するだろうな。


「お手柔らかにお願いします」


ゆず。

あまり話したことはない。

だがその活躍はいつも聞いている。

女性でありながら実力はトップレベル。

単体では強くないもののサポートを任せれば右に出るものはいない。


「観客の皆様も今か今かと待ち侘びていることでしょう!この勝負!見逃し厳禁でお願いいたします!」


うぉー!!と観客席が盛り上がる。


「それではさっそく始めましょう!レディ〜!ファイト!」


その声を合図に俺はバックステップを踏む。

まずは様子見、相手がどうくるかを見る。


予想通りルーカスとノアが攻めてきて、後ろからゆずが魔法を放つ。


ルーカスとノアは連携をとり、うまく俺の死角を突いてくる。

そして2人を少し崩したと思えばゆずの魔法により攻める隙がなくなる。

やはり手強いな。


…少々手荒になるが仕方ない。


まずは1番厄介なルーカスからだな。

だが3人に連携されると隙がない。

まずは隙を作る。

ノアには悪いが少し黙っててもらおう。


ノアに向け太刀を振る。

当然ガードされるが関係ない。

これで倒せるとは思っていない。

まぁ、吹っ飛んでもらうが。


太刀を思い切り振り切る。

ガードをしながらだが、苦痛の表情でノアが吹き飛ぶ。

その隙にルーカスを狙う。

だがゆずの魔法が飛んでくる。

やはりサポートは一流、うまく隙を埋める動きだ。

だが甘い。

威力はまだまだだな。


ゆずの火魔法を太刀で両断。

それと同時に後ろからルーカスが切りかかってくる。


完璧で理想の連携だ。

故にわかりやすい。

ルーカスの剣を受け流し、峰打ちで胴体を叩く。

ルーカスはその丈夫さでも有名だ。

気絶してもらうために、少し強めに。


太刀を振り切り、ルーカスを吹っ飛ばす。

ルーカスが壁へと叩きつけられる。

ルーカスが動かないのを確認した後、ゆずの方へ向かう素振りを見せる。


ふっ、やはり来たかノア。

ノアの剣を避け、斬りかかる。

だがやはりゆずの魔法が飛んでくる。

上に飛び魔法を避け、そのまま上から斬りかかる。

しかし、ノアはガードの姿勢に入っている。

いい反応だ。

いい反応が故に利用しやすい。

常人には分からないような細かいフェイントにも反応する。

俺からすれば逆にやりやすい。


フェイントを使いうまくガードを避け、峰打ちで胴体を叩く。

ノアは吹っ飛び、壁に叩きつけられる。

残りはゆずだけだ。


「…降参しろ」


「は、はい…。降参します」


「おおっと!ここで降参だぁ〜!勝者はスレイヤー!!圧倒的!これが伝説だ!」


実況に呼応するように鳴り響いた観客の声がうるさいほどに聞こえた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


聴視あきみ視点〜


一瞬で終わっちまった。

あの3人は弱くなかった。

俺やけっつんよりも強いだろう。

もしかしたら勇者の剣を持ったけっつんよりも強いかもしれない。

だがスレイヤーはそんな怪物みたいなやつらに3対1で勝った。

しかも余力を残して。

これがNo.1の実力か…。

うーむ、思ってたよりも差は大きいな。


あんな馬鹿でかい太刀なのに普通の剣を持ってる男2人より手数多かったぞ。

おかしいだろ。

それにあんなタフそうな男をガードの上から飛ばす怪力。

3人の猛攻を防ぐ防御力。

そして打開する力。

魔法どころか何か特別な能力を使ったわけじゃなかったのに圧倒だ。

勝ち目あるのかあんなの。


だがおかげであの3人の特徴が見えたな。

あの魔法使いの女性はサポートは上手いが魔法の威力がめちゃくちゃに強いわけじゃない。

ソロではあまり活躍できないだろう。


ガタイのいい男は防御が上手い。

だがその分攻撃力が足りないかな。

タンクとしてはとても優秀だ。


もう1人の男はバランスが良くこれといった弱点はなかった。

攻撃力も防御力も申し分ない。

ソロでもチームでも活躍できる万能だな。

個人戦では優勝候補だな、多分。


けっつんも黙っちまったし。

うーむ…明日の個人戦が思いやられる。

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