〜第28話〜 黒騎士
ユフィアさんがメラ◯ーマを使った。
しかも範囲は特大だ。
火の玉は着弾と同時に爆発し、周りを炎で埋め尽くした。
その間ユフィアさんにより俺たち5人には水魔法のバリアのようなもので包まれ無傷でいられた。
水魔法が解けた時、目の前まで迫ってきていた兵士の大群は姿を消していた。
兵士は1人残らず丸焦げになっている。
すごいな…。
ただのおばあちゃんだと思っていたが。
「冷酷無慈悲の魔法使い…ユフィア……」
丸焦げになりながらゆっくりと、か細い声で誰かがそう告げた。
「おや。懐かしい呼び名だね」
「…すげえな。おばさんってこんなに強かったのか」
「いっただろ?昔はブイブイ言わせてたんだよ」
「昔はって、全然現役じゃねえか…」
これがユフィアという魔法師の実力なのか。
この街の兵士が知ってるくらいなのだから相当有名なのだろうか。
とにかく味方となればとても心強い。
これだけの実力があれば正面から突破しようとするのも納得だ。
「さあ…また兵士が集まってくる前にさっさと行くよ。…あいたた。腰が痛いねえ」
そう言って腰を叩く姿はただのおばあちゃんにしか見えなかった。
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「ひぃ!冷酷無慈悲の魔法使いユフィアだ!」
「や、やめてくれえ!」
なんだなんだ。
もうここまでさっきの戦いが伝わっているのか。
あれから進むたびにこんな声が聞こえてくる。
あの兵士の大群がこの城のほとんどの戦力だったのだろうか。
まあ全員で100人くらいはいたっぽいしな。
にしてもたった5人にこんな簡単に城に侵入されて大丈夫なのだろうか。
もう少し警備を増やすか兵士の質をあげた方がよさそうなものだが。
いや、案外城に侵入する奴なんていないのかもしれない。
まだまだこの世界については分かっていないな。
その後はトントン拍子で玉座の間まで到着。
玉座の間に入ると王冠を被り赤色と白色の派手な格好をした年配の王らしき人と、美しい青のドレスを着た王妃らしき人が立派な椅子に座っており、周りに数人の兵士がいた。
が、兵士は全員怯えていた。
みんなユフィアさんにガクブルだ。
王様と王妃はこんな時でも手の震え1つさえ見せない。
さすがというか当然というか。
いや、兵士の中で1人だけ凛と立っている奴がいる。
全身の鎧が黒一色で鎧の形も他とは違う。
「5人か…黒騎士!勝てるな…?」
「いえ…。私1人では勝てないでしょう。
2、3人ほどなら倒せますがその後負けるのが関の山かと」
「お前でもか…?」
「はい。奴らは強い」
「お前がそう言うのならそうなのだろう。
分かった。侵入者よ、要件はなんだ?」
「おや、思った以上にあっさりだね。
要件ねえ…まあ私の汚名返上かね」
その後はすんなりと事は運び、ユフィアさんの汚名返上を約束させた。
みんなで仲良くやっていこうと言う協定を結び、その場は解散。
しなかった。
「1つだけ!そこの黒騎士と勝負させてくれませんか?」
そう言ったのはけっつんだった。
「ふむ。何故戦いを望む?」
「腕試し…自分がどこまでやれるかが知りたいのです。自分はこういう者ですので」
そう言って勇者の剣を横に倒した状態で見せる。
すると王様は納得がいったと言わんばかりの表情でうなづいた。
「なるほど…。分かった、許そう。だが条件が1つ、模擬戦だ。2人共貴重な人材だ。こんな事で怪我をして動けなくなるなんて間抜けな事は許さん。良いな?黒騎士」
「仰せのままに」
「感謝致します。場所を変えましょう」
「案内します」
そう言った黒騎士の後についていくと着いたのは訓練場のような場所。
庭のような場所だが辺り一帯が訓練場で規模が全く違う。
普段兵士たちがここで訓練してるのだろう。
「この辺りでよろしいですか?」
「はい。それでは始めましょう」
けっつんがそう言うと2人は剣を抜き向かい合う。
だが間合いよりもはるかに遠い場所で。
どちらも動かない。
安全のため離れた位置で見ている俺にも分かる。
戦いはもう始まっているのだ。
この空気が1手間違えるだけで負けに繋がると物語っていた。
空気がひりつき、呼吸が浅くなる。
俺は見ているだけなのに。
一生続くかと思われたこの空気。
崩したのはけっつんだった。
勇者の剣の一振りにより斬撃が飛ぶ。
斬撃は黒騎士へ向け一直線に飛んでいく。
だが横から見ていると分かるが斬撃は遅い。
モンスター相手なら当たるだろうが、相手は手練れ。
ましてやこの距離だ。当たるはずもない。
と思ったが斬撃はあっという間に黒騎士まで到達。
その間黒騎士は避けるどころから指1つも動かさなかった。
斬撃は黒騎士に直撃したように見えた。
だが違う。
防いだのだ。
今まで斬撃が防がれたのを見た事はない。
前に突然襲われた魔王の刺客である魔族ですらも斬撃を真正面からは受けずに避けていた。
いや正確には見えなかったのだが決着がついた時あの魔族はけっつんの後ろに立っていた。
おそろく斬撃を避け後ろから切ったのだろう。
だがこの黒騎士は真正面から受け止めた。
今まで受け止められた事はなく、当たれば必ず切れる必殺技のように感じていた。
だが違った。
真正面から防がれた。
つまり斬撃は防がれる上にスピードも遅く、避けやすいという弱い飛び道具と同義だ。
やりようによっては使えるが…
この勝負、どちらに軍配が上がったかは一目瞭然だった。
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