第5話 寮分けテスト side.Cloe

 …あの人絶対”海”だよなー。ものすっごくイケメンで、明らかに初対面なのに、私のことをじっと見てるもん。イケメンに見られる覚えは全く無いし。

 「…では今から、寮分けテストを行います。名前を呼ばれた方は前へ」

 寮分けテストの説明をしていた先生から、名前を呼ばれる。今世の”私”の名字はAから始めるので、一番最初のグループに呼ばれた。

 「希望の寮はありますか?」

 ”海”が最も生きやすい寮は、多分あそこだ。偶然にも、あのイケメンもそこに入っている。__そう、あの寮の名前は、

 「…シャドウラフ寮。シャドウラフ寮を、希望します」

 希望寮の名を告げると、何故か周囲がざわめく。おかしな寮ではなかった筈だけど、なにか問題があったんだろうか。少し不安になって、イケメンの方を見る。イケメンは満面の笑みを浮かべて、私にだけ見えるようにグッドサインを出していた。…うん、”海”で間違いないな。あのノリは”海”だ。

 嬉しくなって、私も笑顔で頷き返す。そして、先生の案内に従ってグラウンドの一角へ向かった。

 「では、先ほど説明したように行ってください。寮分けテスト、スタートです」

 先生はペンを構え、開始を告げる。と同時に、目の前に大きな壁が現れた。


 寮分けテストの内容。目の前に現れる壁を、どんな手を使ってもいいので壊す、超える、通り抜ける。

 …最初聞いたときは”なんのこっちゃ”って思ってたけど、納得。確かにこの高さなら、言われた条件ぐらいしないと通ることができない。さあ、どうやって通ろうか。

 「壊せるって厚さなのか、そもそも」

 念の為壁を叩いてみると、明らかに空洞ではない音がした。うん、これは中身が詰まってるな。それにこの壁の材質は、どうやら金属みたいだ。壊そうとしたら、拳が潰れるだろう。

 魔法、を使う手はあるけど、ここで使ったら大迷惑になるだろうな。…うーん、どうしよ。

 「登る、にしては表面が平らなんだよなぁ」

 考えろ、この壁(物理)を超えなければ、シャドウラフには入れないぞ。なんとしてでも、”海”に会わないといけないだろ。また、性癖枕投げをするんだろ。そのために、くっそ面倒くさいテスト勉強したんだろ。超えるんだ、この壁(物理)を!

 「…あ、”超える”のか」

 この体になって15年になったのに、忘れてた。この体、前世より遥かにスペックが良い。というか、私が心のなかで思ってた”要望”が叶えられている。

 「うっし、やってみるか」

 足をぐっ、ぐっと曲げ伸ばしし、軽く準備運動する。そして足に力を込め、

 「せ〜のっ!!」

 上へ向けて跳んだ。イメージは、呪◯廻戦に出てくるバッタ型呪霊。アイツみたいに、空へ向けて跳ぶ。…いやまて、アイツ跳んでないな。まあ良いや。

 「よっ、せい。…先生、テストはこれでオッケーですか?」

 壁のてっぺんに手をかけて、体を起こす。先生に尋ねながら、反対側へ飛び降りた。

 「…はい、オッケーです。結果が出るまで、一分ぐらい待ってください」

 いっぷん!?一分、一分…。いや早いな!?驚きながらも待っていると、本当に一分後に先生が書類を持ってやってきた。

 「寮分けの結果が出ました。あなたの寮は、」


 「シャドウラフ寮です」


 「「よっっっし!!!!」」

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