第29話 宝探し1 side.Kai

 ”それでは皆さん、宝探しスタートです!!”

 ウオオオオオォォォッッ!!!!!

 校長のアナウンスが響くと同時に、宝探しのフィールドの各地から雄叫びが聞こえた。…荒ぶってる動物園ぐらいうるさい。

 「よし、じゃあ宝探し班、頑張ってね。指示はコッチで出すから」

 何枚も周囲に”モニター”を浮かべながら寮長が言う。

 「襲撃は任せておきなさい」

 シャドウラフ特製のジャージに身を包んだダルクさんが微笑んだ。

 「クー、カイ。そっちは頼んだ」

 グローブをはめ、副寮長が肩に手を置く。

 俺とクーは素直に頷き、自分達が担当するエリアへ向かった。


 「カイー、暇だしギャル語で話そー」

 「おけまる水産」

 木々が生い茂る森の中、クーが唐突にそう言った。面白そうなのですぐにのる。

 「ちょっとカイ〜、ここらへん木生えすぎてやばくね?もう草超えちゃってんじゃんマジうける〜」

 「それな〜。この森全部擬似空間って信じられないんですけど〜」

 宝探しは先生たちが作った擬似空間で行われる。俺達がいる森も全部偽物だ。質感も気配も匂いも本物なのに、これが偽物とは信じられない。

 「つかさ〜ウチたちの相手まじやばくね〜?もうぴえんこえてぱおんレベルじゃね〜?」

 「もはやぺおんレベルじゃね〜」

 「意味わかんなすぎ〜」

 ギャル会話を繰り広げながら森の中を探索する。時々他寮の寮生の声が森の中に響いていた。

 ”クー、カイ。何人かそっちに向かってる。いけそうなら嫌がらせしていって”

 そんな感じで探索を進めていると、寮長から指示が来た。

 ”了解”と某スナイパーの人のように頷き、人がいるという方角へ向かう。話し声が聞こえたので、こっそりと近づいていった。

 「__だよ、あいつら!!どうしてベースの位置が分かったんだよ!?」

 「なんとか逃げ切れたけど、まだ追ってくるかも知れない。とりあえず逃げとこう!」

 うげぇ、リア充。爆発してくれ。

 向かった先には、男女二名が居た。色を見るに、どうやら”パールアイ”の奴らっぽい。その二人が、励まし合いながら逃げていた。若干頭の悪い会話をしているところを見るに、互いのことしか見えてないタイプのリア充だろう。

 「末永く爆発してくれ」

 思わず口に出てしまった。クーも何も言わず頷いている。

 ……よし、やることは決まったな。あの空間をぶち壊すぞ。

 音を立てずに立ち上がり、補助チームから支給された嫌がらせ道具を出す。今回使うのはクリームパイ(魔法精製)砲。ちょっとやそっとでは落ちないクリームだざまあ見やがれ。

 そして俺たちは、無言でクリームパイ砲をぶっぱなした。

 「爆発しろーーーーッ!!」

 「発射ーーーーーーッ!!」

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