第21話 文化祭5 side.Kai
文化祭一日目終了。
俺は、クロエがシーフワイトの寮長に絡まれたことを寮長に報告していた。
報告し終えると、寮長は閉じていた目を開き、はあ、とため息を着いた。心無しかその姿は疲れたように見える。
「見つかっちゃったか。…ジグ!ちょっとコッチ来て」
寮長はジグさんを呼ぶと、ジグさんになにか言う。ジグさんは驚いた顔をしたが、すぐに頷き、どこかへ行った。
「…カイ、もう大丈夫だよ。クロエが目をつけられることはもう無い」
「ジグさんの魔法ですか?じゃあもう安心ですね」
そして、寮長は俺と改めて向き直る。
「…カイ、一つ聞いていいかい?答えづらかったら答えなくていい」
寮長が俺に尋ねるなんて、珍しいな。とりあえず、はい、と頷く。寮長はホッとしたように息を吐き、口を開いた。
「カイも、クロエも、…前世の記憶があるよね。そして、祝福を受けてる。違う、かな」
”祝福”?もしかして、転生特典だろうか。なら、答えはYESだ。
「はい。そうです」
「えっ、軽!?」
うなずくと、寮長は目を見開く。…そんなにおかしい事だったか?認めただけなのに。
「え、カイ、そんな簡単に認めて良いの?クロエの許可は取らなくて良いの?尋ねたボクが言うのも何だけど、結構、重要なことじゃないかな!?」
かなり動揺したように寮長は詰め寄り、捲し立てる。うわ、めっちゃ動揺してる。シャドウラフに来て初めて見るぐらい動揺してる。記憶があるってもしかして結構大事なんだな。
「__っ何でそんなに他人事みたいにしてるのかな!?カイ、自分がどれだけ貴重な人物かわかってる!?カイもクロエもコチラ側なら、今後面倒なことになるんだよ!?」
しびれを切らしたように寮長は叫ぶ。…ああ、今ので多分寮中に響いたな。寮生が確認に来る。
「解んないですよ、だって俺たち今まで何も言われてませんでしたから。そちら側だろうとこちら側だろうと、俺たちは今までと変わりません。寮長も、そうだったんでしょ?」
とりあえず、寮長に言い聞かせるように答える。
寮長はポカンとしていたが、俺の言葉の意味を理解できたのか笑顔に変わる。そして、心底おかしそうに笑いだした。
「、ふふ、あはははっ。そっか、…そっか。そうだね、変わらないよ。ボクもそうだったし、カイ達もそうなんだね。なら、変わらない」
ひとしきり笑い終えて、目の端に浮かんだ涙を拭って、寮長は改めて言った。
「カイ、今からボクが言うことをきちんと覚えておいてくれ」
寮長の大声に集まって来た寮生に聞こえないように、寮長は囁いた。
「今後絶対、祝福を受けていると口外しないこと。良いね?」
うわ色っぽ。男相手なのにドキドキするぐらいにはエロい。
「…ひゃい」
動揺してしまい、思わず噛んでしまった。
いやだってイケメンの囁きは耳に良すぎんだろ!
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