第42話 夏季休暇6 side.Kai

 「カイ様、お時間です」

 「エスコート、よろしくおねがいしますね」

 「……」

 どうしてこうなった。


 ニート生活を享受して早一週間。

 俺はすっかり実家の穀潰しの一人となっていた。

 クーラーの効いた部屋で、カーテンも開けずにネットサーフィンに興じる毎日。最高だ。

 周辺のことは俺の専属の執事がやってくれるので、何も考えなくていい。そう思って、毎日毎日”ウラ”の世界のシブさんと日本がある方の世界のシブさんを漁りまくっていた。もうスマホ様々。天使さん万歳。

 そんなある日、メイドの一人があるものを持って来た。

 「カイ様、奥様からです」

 「げ」

 差し出されたのは、我が家あての招待状だった。装飾が施されており、そこはかとなく高級感が漂っている。

 「奥様からの伝言です。…”カイ、母様達の代わりにパーティーに出てくれないかしら。母様達、お仕事がまだ忙しいの。大丈夫、準備はジルたちがやってくれるわ”」

 無駄にクオリティの高い声真似を披露して、メイドは業務に戻っていった。

 「あ"〜面倒くさっ。コレもうほぼ強制じゃねーか…」

 招待状の中身を確認し、ウチの家では断りきれない家からの正体であることを確認する。

 「行きたくね〜」

 行きたくない。絶対に行きたくない。何でわざわざパーティーなんかするんだ、そんなもんもうとっくに滅んじまってんだよこの世の中には!ホームパーティーなら納得するけど、格式高いパーティーはもう終わってんだよ。ニート生活を大人しく俺に享受させろよ。

 「外出たくない…。嫌だ…」

 ベッドに転がりながら呟く。助けてよブランケット…。君のその優しさで永遠に俺を包んでいてくれ…。

 そのままブランケットに包まり、お昼寝を決め込もうとした。


 「は〜い起きてください。今寝たらお前絶対に夜ふかしするだろ〜」

 「一緒に外出ようか〜、お前本当にニートになってきてるよ」

 チクショウ、できなかった。

 幼い頃からずっと俺に仕えている執事と護衛がブランケットを引っ剥がして、無理矢理ベッドから連れ出す。

 「ほら服選ぶよ」

 「わたしも一緒に行くから」

 「ヤダ行きたくない。お前ら俺の従者なら、主人の意向を優先しろよ」

 抵抗しても無駄なのは分かりきっているので、せめてもと言う。だが悲しいかな、こいつらはそれを無視した。無視するどころか、言い返しやがった。

 「主人の意向は気にするなってカイが言ったんですけど」

 「そんなことも忘れちゃったのかな」

 うっわメチャクチャ煽ってきやがる。従者は主人に似ると言われてるが、コイツの主人は誰なんだ一体。

 …俺だ。

 「ホントお前ら変わらないな。ジル、ニア」

 「「当たり前だよ、だってカイのモノだから」」

 俺の専属執事ジル・キューブ、専属護衛ニア・キューブ。こいつらは双子の兄妹であり、俺の幼馴染であり、意味がわからんが俺の恋人候補らしい。

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