第41話 夏季休暇5 side.Kai

 ノルンの夏季休暇初日。 

「「お帰りなさいませ、カイ様」」

 「…ただいま」

 寮にある転移陣(ル◯ラみたいな魔法がかかった陣)を介して、家に戻る。予想してたとおり、メイド・執事など家の皆が総出で出迎えをしていた。変に緊張するからやめてほしい。

 「家の中で御両親がお待ちです」

 「さっ、中へ」

 手に持っていた荷物を半ば無理やり取られ、家の中へ押し込まれる。あれよあれよという間に、両親が待つ部屋へと移動させられた。

 「…しょうがない、か。父様、母様、ただいま」

 あまり気が向かないが、久しぶりに実家に帰ってきたんだ。顔を見せるぐらいしたほうが良いだろう。俺はそう思って、ドアを開けた。

 ここで一つ言っておきたいが、俺は両親が嫌いなわけじゃない。大好き…というわけでもないが、人並みの家族愛は持っている。じゃあ、なんで気が向かないかというと、

 「「おかえり、カイ!!!!!」」

 「久しぶりね〜!あら、また背が伸びた?そうでしょ、分かるもの!」

 「確かに、背が伸びたな。こんな大きく育って…。やっぱり子供の成長は早いものだなぁ…!」

俺の両親が、親バカだからである。


 「カイ、今回の休みは何日まで居られるの?」

 母様が目を輝かせながら尋ねる。父様も同じような表情を浮かべて、俺を見た。

 「…大体二ヶ月ぐらいです。母様、去年も同じこと聞かれましたよ」

 少しの言いにくさを感じながら答える。父様も母様も生粋の陽キャであるからして、俺からすれば天敵なので。家族だからちゃんと話せるわけで、ちゃんと愛情はあるわけで、もしヴァリエントこの家の子に生まれてなかったら絶対に近寄らないタイプの人達。

 シャドウラフの皆が俺の家に来たら、多分生き辛いんだろうな、とノルンに入学してから気づいた。それぐらい、ウチの家は陽キャが多い。

 「そうか。夏季休暇中は何をするんだ?」

 父様にも手伝えることがあるなら手伝わせてほしい。言外にそう聞こえる。

 「…特に何もしませんよ。久しぶりの我が家を楽しみたいです」

 特に当たり障りのない言葉を選んで言ったが、つまり俺は、ニート生活がしたい。ニート生活万歳!ニート侍万歳!ニートの何が悪いんだ、素晴らしいことじゃないか。

 もちろん父様に俺のニート生活宣言の意味が伝わることはなく、額面通りにその意味を受け取って目を潤ませている。わざわざ訂正するのも面倒なので、そのままにしておいた。

 「カイ、久々の実家を楽しんで。母様達はお仕事で家を開けなきゃいけないの。残念ね、せっかくカイが帰ってきたのに」

 ある程度テンションが落ち着いたところを見計らって、母様が言い出す。心底残念そうに言いながら、席を立った。

 「生活周辺のことはジルに頼んであるわ。もし出かけるなら、ニアに言って。じゃあカイ、母様達行ってくるわ」

 「行ってらっしゃい、父様、母様」

 そして二人は家を出ていった。

 よっしゃニート生活の始まりだ!

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