第40話 夏季休暇4 side.Cloe

 「で、お兄さんの名前は?」

 「ワタクシですか?ワタクシの名は決まっておりませんが、同じモノからはふくろうと呼ばれておりますね。なんでも、暗闇で動く姿がそっくりだとか」

 「おっけ、じゃあ私もお兄さんのこと梟って呼ぶわ」


 拝啓、カイ。そちらはお元気でしょうか?変わりなくニート生活を送っているでしょうか?今日、私は使い魔を手に入れました。イケメンのお兄さんですが、犯罪者のお兄さんです。彼が言うに、はとても好ましいそうです。

 さて、何故私がそんな犯罪者お兄さんを使い魔にしたかと言うと、今年の始め、私がエンギルさんに不当暴力を受けたのは覚えているでしょうか。そのとき、カイが”黒い靄”と言ったことでエンギルさんは正気に戻りましたが、”黒い靄”について、私は何も頓着していませんでした。ですが先日の”宝探し”の時、再び”黒い靄”は現れ、とうとう私の体に干渉するようになってきました。このままじゃヤバいぜ、と思ったので、この夏季休暇を使って調べることにしたのです。するとまあビックリ、”黒い靄”は人外のモノだと判明しました。魔法師団の図書館にある本にも記載されていたので、間違いありません。

 と、いうことで私は早速”黒い靄”を喚ぶ方法を試し、無事成功したのです。それが先ほど紹介した、使い魔の犯罪者お兄さんになります。なんか流れでお兄さんは私の使い魔になってくれました。ここらへんからも犯罪者臭がプンプンします。

 とりあえず、そういうことなので夏季休暇が開けたら私は知らないお兄さんと一緒にいると思いますが、そこらへんはこの手紙を思い出して納得してください。

 どうせクーラーのききまくった部屋でダラダラと過ごしているでしょうが、周囲に迷惑はかけないよう、ニート生活を享受してください。

 あなたの同士、クロエより。


 「母さん、使い魔できた」

 「初めまして、御母堂。主の使い魔のふくろうと言います」

 「いつの間にこんなイケメン捕まえてきたの。父さんが帰ってきたら驚くわよ、絶対」

 「父さんだから大丈夫だって。とりあえず、コイツ今日から私の使い魔だから認識しといて、母さん」

 「宜しくおねがいします。雑事などは何なりと申し付けください」

 「…じゃあ梟くん、今日から水回りの管理お願い。夏季休暇の間でいいから」

 「かしこまりました」

 「母さん対応力はっや…」


 梟が使い魔になって、母さんの対応力の早さに驚きつつも紹介を終えた。母さんと梟はすぐに馴染み、気軽に話をしている。

 父さんはというと、母さんの予言の通り梟を見て驚いていたが、事情を話してなんとか理解してもらえた。最後の方まで「???」という顔はしていたけど。


 夏季休暇はまだまだある。その間、在学中にはやれなかったことをするつもりだ。

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