第15話 コスプレ設定
むかしむかしあるところに、ひとりのおとこのこがいました。
おとこのこはずっとひとりぼっち。
おとうさんのかおも、おかあさんのかおもしりません。
でも、おとこのこはさみしくありませんでした。
なぜなら、おとこのこにはトモダチがいたからです。
トモダチはいつもおとこのこのもとにおとずれ、ひとりぼっちのおとこのこにたくさんのおはなしをしました。
からだがおはなになるめずらしいしゅぞくのこと。
にじいろのひとみをもつドラゴンのこと。
ずっとずっと、えいえんのじかんをいきるモノがいること。
どのおはなしもおとこのこにはめずらしく、おとこのこはいつもトモダチのおはなしにめをかがやかせてきいていました。
そんなあるひ。
いつものようにおとこのこのもとへおとずれたトモダチは、おとこのこのてをとってこういいました。
「いいもの、みせてあげる!」
いいもの?いいものって、なに?
おとこのこはトモダチにたずねますが、トモダチはなにもいわずおとこのこのてをひいてつれていきます。
たくさんのかわをこえ、やまをこえ、そうげんをこえ、とうとうトモダチはあしをとめました。
トモダチはてをはなし、くるり、とおとこのこのほうへむきあいます。
ここのどこにいいものがあるんだろう、とおとこのこはしゅういをながめていると、どん、とおなかにしょうげきをかんじました。
おなかをみると、そこにはぎんいろのナイフがささっています。
つかのほうにあかいものがちっていて、それがじぶんのものだとおとこのこがわかるまでじかんがかかりました。
おとこのこがなんで、とこえをだしたくても、だせません。かわりに、あかいものがくちからあふれてきました。
どさっ、とおとをたてておとこのこはたおれます。そのまえに、トモダチがたちました。
「バケモノ、しね」
つめたいめをして、トモダチはさらにナイフをとりだします。
「おまえがおかあさんをころした」
ぐさっ。おとこのこのせなかにトモダチがぎんいろのナイフをつきさします。
「おまえがおとうさんをおかしくした」
ぐさっ。トモダチはなみだをながしながらせなかをつきさします。
「おまえがいきつづけるからみんなきえた」
ぐさっ。なんどもなんどもせなかをさし、ちがとびちります。
「かえして。おとうさんを、おかあさんを、みんなをかえして」
ぐさっ。ぐさっ。ぐさっ。
…どうして。どうして、トモダチじゃなかったの?
おとこのこはなんどもさされながら、そんなことをおもいます。
はじめてできたトモダチだとおもっていたのに。ひとりぼっちじゃなくなったとおもっていたのに。
トモダチじゃ、なかったの?
おとこのこがたずねると、ぐさっ、とまたせなかをさしながらトモダチはこたえます。
「ちがう。おまえはバケモノ。トモダチなんかじゃない。おまえはかたきだ」
トモダチはひややかなめでこたえました。
「おまえはずっといきてる。だから、おとうさんたちがほしがるんだ」
ぐさっ。ナイフをもっているトモダチのてはまっかにそまっています。
「しね。きえろ。いなくなれ。しねしねしねしね」
のろいのようにともだちのこえがひびきます。
おとこのこは、くらくなっていくいしきのなかあることにきづきました。
じぶんは、トモダチがいっていたモノだったんだと。
えいえんのじかんをいきるモノだったんだと。
えいえんのじかんをいきることは、たくさんのひとのねがいのひとつ。
だから、トモダチのおとうさんがほしがった。おかしくなった。
トモダチがいっていたことがやっとわかって、おとこのこはうれしくなりました。
トモダチのかんがえてることがわかった!
これって、もうシンユウだよね!
おとこのこはまだおとこのこのせなかをさしつづけているトモダチ、いやシンユウのてをとり、ほほえみます。
「これで、ぼくたちナカヨシだね!ずっとずっといっしょだよ!」
そのしゅんかん、いままでシンユウがさしたきずがぜんぶなおります。
たくさんあいていたあなはもとどおり。
「なんで。なんでなんでなんで」
シンユウはめをみひらき、あたまをかきむしります。
そして、シンユウはてにもっていたナイフをくびにあてました。
「おまえといっしょなんていたくない。おまえはずっとひとりぼっちのまんまだ」
ぴっ。
ナイフをすばやきひき、シンユウのくびにひとすじせんがはいります。
すぐにそのせんはふとくなり、ひらいていき、たくさんのちがながれていきました。
おとこのこはまたひとりぼっちになります。
「ああ、これが”いいもの”なんだね!ありがとう、シンユウ!」
でもおとこのこは、あたらしいおもちゃをてにいれました。
これからずっと、おとこのこはそのおもちゃであそびつづけます。
だから、さみしくなんてないのでした。
めでたしめでたし。
「これコスプレの設定に使っていい?」
「もち。お好きにどうぞ〜」
「…てかクロエ、エグいの創るね」
「だってハートフルボッコ好きだもん」
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