第4話 入学式 side.Kai

 長い。マジで長い。寝て良いのか、良いよな?

 「では、新入生、退場」

 校長の挨拶が終わり、やっと入学式のメインイベントが終わった。…さあ、こっからが本番だ。眠気を無理やり覚まし、姿勢を正す。

 「…以上を持ちまして、入学式は終了とします。保護者の方々は案内に従い、ホールへ移動してください」

 アナウンスを合図に、俺たちも立ち上がった。そして、講堂の掃除に取り掛かるべく、相棒であるほうきを手に持つ。

 講堂から保護者がいなくなったのを見計らって、掃除を始めた。

 「おらさっさと終わらすぞー!」

 「早くしろ早く!新入生確保すっぞ!!」

 「可愛い子うちに入れるよー!!早く、はやく!」

 講堂のあちこちから怒鳴り声が聞こえる。寮分けテストまでに間に合わせないと自寮のアピールができないので、皆必死だ。もちろん俺も。

 「クーッ!早くしろ!絶対入れたい子がいた!」

 「ちょいとお待ちなカイさん。それは男子?男子!?」

 「違う女子!男子だとしても俺が攻めじゃないとだめ!自分受け地雷だって前から言ってるでしょ!」

 同寮の生徒とも怒鳴り合い、若干口喧嘩をしながら掃除を終わらせる。終わると同時に教員を呼び、チェックを受けた。

 ”行って良し”と許可をもらったため、新入生が集められているグラウンドへ急行する。

 「今年は何人に減るかねー」

 「一人でも入ってくれりゃ十分っしょ、それよりも走れって!」

 クーを怒鳴りつけながら、走り続ける。この体は前世よりも遥かにスペックが良いため、かなり速いスピードで走ることが可能だ。

 「ちょ、カイさん…!はぁ、はぁ、…お待ち、なすって…!」

 「性別行方不明美少女を見たくないんか!?俺が確保したい子はその子やで!」

 「さあ早く向かおうじゃないかカイ殿」

 俺が確保対象にしている子の特徴を言うと、へたりそうになっていたクーは笑顔になり、足取りも軽くなった。さすが腐男子、ネタになるものを探すことに向ける情熱がすごい。

 やがて、グラウンドに着いた。ちょうど各寮の説明をしているらしく、寮長が揃っている。まだ自寮の説明は行われてないことを確認し、何食わぬ顔で寮長の隣に並んだ。寮長は真顔で尋ねる。

 「入れたい子が居たんだね?」

 「はい。あそこにいる、性別行方不明の新入生です」

 分かった、じゃあウチに連れて行こう、と寮長は決定してくれた。そして先生の内の一人にそっと耳打ちをする。おそらく、寮生の交渉をしているんだろう。

 先生と寮長は何度か会話を行い、互いにうなずき合う。

 「カイ、あの子は他の寮も目をつけてる。だから、あの子を入れたいならあの子が自分からウチに入りたいと思わないとダメだってさ」

 …なんだ、それならもう大丈夫だな。

 「寮長、それならもう大丈夫ですよ。あの子はウチに絶対に入ります」

 「カイさんすごい自信~。何、あてがあるの?」

 クーは驚いたように尋ねる。俺は自信を持って頷いた。

 「うん。だってあの子は___」

 俺の、親友だから。

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