第32話 宝探し4

 「なァ、エンギル。動けるか」

 「…いや、無理だな。なんなんだ、あの魔法はよ」

 「さァな。…やっぱり"影"の奴ら、ッてェ事だけは、分かったな」

 「アシラルド以外にもあんなヤツがいるとはなぁ。ははっ、流石"影"だぜ」

 「……じゃァ、行くか」

 狼達は獰猛に笑う。


 「 __ねえ待って!?何かワイの魔法解かれたんだけど!?」

 「は?ウッソだろ、早くない?そんな軽めに魔法かけた?」

 「んな訳ないでしょー!ワイだってあんな治安悪い人相手したくないんだから、本気でやりましたー!」

 「じゃあ何で解かれてるんですかー!?」

 「知らね〜!とりま逃げよ!はよ!」

 影達は逃げ回る。


 「…チィッ!ンだよ、あいつら…!だから”影”の奴らは嫌いなんだ」

 「落ち着け、レン。お前が慌てたって、寮生は動けないぞ?」

 「ンなこたぁ分かってるよ。お前はアッチであいつらを指揮しとけ」

 「はいはいりょーちょーサン。あなたの言う通りにー」

 「おら、さっさと行け。……オイコラ妖精ども。とっとと姿を見せやがれ」

 「はわわ、危ない人だ。こわいめぅ…」

 「クロエ、見ちゃ駄目だ。あの人は、もう…」

 「そんな…!手遅れ、なの?」

 「ああ。見ろ、妖精に話しかけてる。そこには誰もいないのに…!」

 「 __テメエら死ぬ覚悟はできてンだろうなァァァッ!!!!」

 「「エ"ッ!!!!!?????」」

 鹿達は森を駆け回る。


 「ヴィア、あっちの方に数人」

 「分かったわ。ちょうどイリヤの子達もいるみたいだし、仕返ししましょう」

 「居地、襲われたしな」

 「ええ。本当、イリヤは底が知れないわね。同じ寮長ながら、あっぱれよ」

 「あと数秒で索敵」

 「総員、備えて。わたしの補助に回るように動きなさい」

 …さあ、憐れな子達。わたしの範囲なかで、踊りなさい。

 真珠達はその瞳を開き始める。


 「……」

 「本当、キミはボクのことが好きだね」

 「オマエは、コチラ側だからな」

 「否定しないんだ…」

 「何故オマエはコチラに来ないんだ?ワタシと同じだろう?」

 「…確かに、ボクはソッチ側だよ。でも、シャドウラフここには、護りたいものがあるからね」

 「護る、か?」

 「ああ。皆、ボクが護りたいんだ。…だから、さ」

 「……!」

 「キミがボクの寮生子たちを害するなら、ボクは相手するよ」

 「は、はは。はははははっ。あぁ、ああ、やはり!オマエは、コチラ側に来るべきだ!」

 妖精達は美しく舞い始める。



 そして、_ _ _ _は。

 「フフ、フフフ。やっと、やっと。逢えるのですね」

 或るモノを見つめながら、

 歓喜に身を委ねて、

 ヒトリ、嗤っていた。

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