第31話 宝探し3 side.Kai

 「イヤアァァァァ!!!!!」

 「来んなぁぁぁぁっ!」

 「待ちやがれェ!」

 「ロキ、あいつら”影の奴らだ!逃したらやべぇぞ!”」

 拝啓、クロエ様。そちらのペアは何事も起こっていませんでしょうか。今ワタクシ達は、”ウルフシン”の明らかに治安が悪い人たちと鬼ごっこに興じています。とってもコワイです。

 …いやマジで怖い!なんだよコイツら、永遠と追いかけてくる!助けてクロエ。

 「はぁ、はぁ、…、ちょっとカイ!?誰ですかあのイケメン達は!?」

 クーが目を血走らせて尋ねてくる。器用にも俺の首を掴んで、揺さぶりながら問い詰めてきた。

 「やめろ首を掴むな、息ができない!まず逃げ切ってから説明するから!逃げることだけに集中しろって!」

 なんとかクーを引き離しつつ、後ろの二人の様子を探る。…依然変わらず、鬼のような形相で追いかけてきていた。

 どうしよ。…あ、そうだ。

 「クー、あの二人に向けて魔法打てる?多分クーの魔法なら足止めできるんじゃね?」

 そう提案すると、クーがメチャクチャ嫌そうな表情を浮かべる。でも本人もそれが最善手とわかっているので、渋々頷いた。

 「…じゃあ俺が囮をするから、タイミングはそっちで頼んだ」

 「…りょ」

 頼むぞ、マジで。俺だって治安悪い人たちと戦りあいたくないんだ。というか怖い人に近づきたくないんだ。

 心のなかでそう思いながら足を止め、後ろを振り返った。

 「”ウルフシン”のお二人さん、何でわざわざ俺たちみたいな”影”の奴らを追いかけるんですか。俺ら、貧弱だから何もできないですよ?」

 クーの準備ができるように、なるべく時間を稼ぐ。ウルフシンの二人は警戒しているのか、俺と十分距離を取ってから答えた。

 「お前等の寮長サマにハメられたことがあったからなァ。信用できねェんだ」

 「ロキと同じだ。テメェらは、”影”。だから、警戒すんだよ」

 …寮長、過去に何したんだろ。たまに他寮生からも同じようなことを言われたぞ。

 「それ、俺たちには関係ないんじゃないですか?寮長がやったことなんですよね」

 そう思って尋ねると、二人は”うげ”、と言うような顔をする。…わかりましたよ、関係あるんでしょ!?まじで何したんですか、寮長!

 「分かりました、この話は終わりです。で、どうしますか?俺としては、穏便に終わりたいんですけど」

 でも終わるわけないよな〜。だってノルンの中で一番好戦的な”ウルフシン”だもんな〜。しかもそのトップ2が来てるもんな〜。

 案の定、二人は何も言わずに構える。…ほらな、やっぱり。

 だから相手したくなかったんだ。

 「テメェはココで退場してもらうぜ」

 「悪く思うんじゃねェぞ。文句なら、お前等んトコの寮長に言いな」

 魔力を身に纏い始める二人に向けて、言い放った。

 「無理ンゴ」

 …今だよな、クー!

 「万物合成カップリングッ!」

 クーの声が響くと同時に、全力で逃げ出す。

 「ハァッ!?」

 「んだ、コレ!!??」

 背後が慌ただしい気配になっているが、振り返らずにクーの元へ戻った。

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