第26話 ”宝探し” side.Kai

 「…全員揃ったようですね。では只今より、”宝探し”についての説明を行います」

 校長が全校生徒を講堂に集め、”宝探し”についての説明を始める。この時期に開催されるって事は、寮対抗のイベントなんだろうな。

 「まずは皆さん、テストお疲れさまでした」

 そんな挨拶から始まり、どんどん校長は説明を進める。

 ”宝探し”はその名の通り、寮対抗で特定の宝を探すゲームであること。

 宝は一つであるため、奪い合いをすること。

 他寮の妨害はして良いが、命に関わる攻撃をした場合即刻失格、攻撃の程度によっては退学処分もあり得ること。

 すべての説明を聞き終えて俺が感じたことはただ一つ。

 「やば物騒すぎ」


 「ということで、今から”宝探し”のチーム分けをするよ」

 ウチの寮は”情報”に詳しい生徒が集まりやすい…らしい。なので、己が持つ魔法の特性、身体能力などを考慮して、寮長がチーム分けを行った。

 チームは大きく2つに分かれていて、宝探しをメインで行う”実動”のチームと、その実動をサポートしつつ他寮の妨害を行う”補助”のチーム。人数的には”補助”の方が多い。

 「そうそう、先に言っておくね。モーム、クロエ!二人は”実動”確定だからね。君たちは明らかにゴリラなんだから、文句は言えないよ」

 思っていたとおり、クロエとモームは”実動”の方で名前を呼ばれる。寮長の物言いはひどいが、たしかに納得できるしな。ただしモーム、クロエに手を出したら殴るぞ。

 「それじゃ、チーム分けを発表していくよ」

 寮長はそう言って、自分の周囲に”モニター”を浮かべ、その”モニター”に載っている名前を次々と呼び始めた。

 「……クー。キミは”実動”の方で頑張ってもらうね」

 「エッ、拙者が”実動”!?」

 クーの次は俺か。俺はクーに”ドンマイwww”と煽り、寮長の発表を待つ。俺の魔法から考えると、多分”補助”の方に入るだろう。

 そう思っていたのに。

 「カイ、キミも”実動”に入ってもらうよ」

 「ン!!??」

 「HAHAHA!カイざまぁwww」

 俺も”実動”の方に入ることになってしまった。さっき煽られた仕返しなのか、今度はクーが俺のことを煽り立てる。くっそムカつくな。何だその笑い方。

 そして寮長は全ての寮生のチーム分けを終え、話しだした。

 「今回の”宝探し”、皆には悪いけど優勝する気はさらさら無い!優勝してしまえば、ウチの寮は注目を浴びてしまうだろう!ボクはそれが面倒だ」

 確かに。注目されるのは面倒だし、そもそもウチの寮に注目されたい人はそうそう居ない。周りを見ると、他の寮生もウンウン、と頷いている。

 「だから、ボクは一つの目標を建てようと思う。それは…」

 それは…?多分、他の人も同じことを思っているだろう。

 寮長はたっぷり間をためた後、治安の悪い笑みを浮かべた。そして、大声で宣言する。

 「他寮に思い切り嫌がらせをする!!!」

 「「「イヤッッホォォォオオォオウ!!!」」」

 寮長の宣言後、俺たちはほぼ同時に叫びだしていた。さすが俺たちの寮長、期待を裏切らない。一生着いて行きます、寮長!

 一気に寮内はお祭り騒ぎになる。普段のシャドウラフのイメージを持った人が今ウチに来たら、”寮間違えたのかな…”と、思うだろう。

 「じゃ、とりあえず解散!後は各チームで話し合ってね」

 寮長は解散を告げ、どこかに姿を消した。


 「カイ、”実動”で集まって作戦立てるってよー。はよ来いな」

 「分かった、クロエ。”実動”同士、よろしくなー」

 「ん」

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