第18話 文化祭2 side.Ilya

 今日もいい天気だな。多分、ヤツが良くしたんだろうな。

 「…ねえ見て、あの人…!」

 「うわ、美人だな…!」

 一般客がボクの姿を見て、ヒソヒソと話している。ボクは一般客がいる方向に顔を向け、笑いかけた。

 「”シャドウラフ寮”では同人誌の販売とコスプレイヤー達の撮影会を行っています。興味のある方はぜひ尋ねてみてくださいね」

 宣伝のつもりで言ったのに、何故か何人か倒れてしまった。まだ何も魔法は使ってないのに、どうしてだろうか。

 「はいは〜い”プラムディア”でーす。ちょっと通してくださいねー」

 疑問に思っている間に、プラムディアの子たちが倒れた人を回収していく。その中には同じ寮長であるレンもいた。

 ボクの姿に気付いたレンは、その顔をしかめてコチラに近づいて来る。

 「オイ、イリヤぁ!てめ、何やってンだァッ!!」

 そのままボクの胸元を掴んで、思い切り怒鳴りつけた。…いきなり怖いな、急にどうした。

 「…穏やかじゃないね、レン。ボクは何もやっていないよ」

 「イリヤが笑った後に人が倒れただろうが。何もやってないじゃねえよ、周囲の状況見てから言えバカヤロウが」

 と、言われてもなぁ。本当に身に覚えはない。

 「…とりあえず、手、放してくれるかい?この服、借り物なんだ」

 レンにそう言うと、彼は忌々しそうに手を放してくれた。…やっぱり、レンはウチが嫌いなんだろうな。前の事もあるから、しょうがないんだろうけど、それでも少し、悲しい。

 「…悲しいな」

 「は?急にどうした、頭とうとう湧いたか」

 思わず呟いたボクの言葉に、レンは気持ち悪そうに返す。

 「…オイ、妖精ども。そこにいんだろ、力を貸せ」

 そして、どこか諦めた様子で、空中に手を差し伸べた。

 少しの静寂のあと、キラキラと光る粒子がレンの手に纏わりつく。どこからか軽やかな笑い声も響き、眩しい光が現れた。

 「おっせえんだよ、喚んだらとっとと出てこい」

 ”仕方がないじゃない、貴方の側にコチラ側のモノが居るんだもの”

 光がおさまり、目を開くとそこにはレンの妖精が顕現していた。

 「ひどいな、ボクはただ側にいただけだよ。そんなに怖がられると、傷ついてしまうね」

 「おまえはそんなガラじゃねえだろ。…もう用がねえならとっととどっかいけ。邪魔だ」

 ”そーよそーよ、早くいきなさい!”

 フタリに言われちゃしょうがない。ボクは、

 「「二度と戻ってくんな(来ないでね)!!」」

 という言葉を背に、その場を後にした。

 __さあ、次はどこで客引きをしようかな。


 「ここにいたのか、イリヤ・シュレ・オルタナティブ。今日こそ、私と付き合ってもらうぞ」


 ……うげ。

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