第4章 夏季休暇

第37話 夏季休暇 side.Cloe

 ”宝探し”から一週間後、ノルンは夏季休暇に入った。なんとノルン校、夏季休暇が二ヶ月もあるという。最高すぎる。

 …もちろん、課題は出されたけど。しかもたくさん。

 とりあえず、夏季休暇中生徒は寮に泊まれないらしいので、現在私は実家に帰ってきていた。

 机に積まれた課題をなるべく見ないようにして、パジャマから着替える。

 「朝ごはんできたよー」

 「はーい今降りるー」

 タイミングよく母さんから呼ばれたので、返事をして二階から降りた。

 一階のリビングに入ると、卵のいい匂いが広がっている。数カ月ぶりの実家ご飯だ。

 「おはよう、クロエ。パンに卵のせる?」

 「おはよう母さん、お願いします。…あれ、母さん。父さんは仕事?」

 「まだ寝てる。昨日の仕事が長引いたって」

 「そっか。…いただきまーす」

 そんな他愛のない会話をして朝ごはんを食べる。寮のご飯も美味しかったが、やっぱり母さんのご飯も美味しい。

 「うまうま」

 「当たり前でしょ、だって母さんのご飯だもの。…ああ、そうだクロエ。今日、魔法師団に行くんだけど一緒に来る?」

 「うん」

 ノルン校の本部、魔法師団に行くことになりました。


 「じゃあ好きなように見学して来なさい。連絡するから」

 「はーい」

 母さんにそう言って、魔法師団の建物内に繰り出す。全世界の魔法師を統括する組織の本部なので、やはり敷地が広い。めっちゃ広い。一つの街ぐらい広い。

 「…あ、図書館」

 建物を好きなように歩いていると、図書館を発見した。一般開放されている時間帯なので、遠慮なく中に入る。

 「すご…」

 入った瞬間、空気が変わった。数え切れないほどの本、本、本。長年染み付いた、古びた紙とインクの匂い。

 ああ、大好きな匂いだ。

 「神話はコッチかな〜。…うん、有った」

 神話などが集まっているコーナーを勘で見つけ出し、一番古そうな本を手に取る。後ろのページを見ると、初版が500年前と記してある。やばいぐらい昔の本だった。

 とりあえずその本を持って図書館内を移動する。他にも面白そうな神話の本や学術書が有ったので、何冊か積んで持ち運んだ。

 「ふぃ〜重いぜ!」

 丁度図書館の奥にある読書スペースが空いていたので、積んだ本が崩れないように置きながらそばのソファに座る。意外にもソファは柔らかく、座り心地が良かった。

 ソファに身を任せ、最初に手に取った神話の本を読み始める。…結構面白いな、この話。


 一冊目は二時間で読破。

 二冊目は一時間で読破。

 三冊目に入って、半分ほど読み進めた頃。


 「ヨ、お嬢ちゃん。一人なのかい?」


 人生で初めてのナンパを受けた。

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