第38話 夏季休暇2 side.Cloe

 「嬢ちゃん、親は?」

 ニコニコと笑いかけながらその人は尋ねてくる。…どうしよ、無視したいけどこの人めっちゃタイプだ。

 「…自分がアヤシイってか?はは、そりゃそうだよな。自分は魔法師団ココの職員だ」

 私の無言の返答に、その人はまた笑いながら答える。やっべえ、マジ好み。私のタイプど真ん中を貫いてきやがる。

 「…これでも言ってくれないのか?」

 とうとうその人は眉を下げ、しょげるような表情をしてきやがったので、耐えられず答えてしまった。

 「…三つ編のおじさんはロクな人が居ないって教わったんで」

 その人は、三つ編のおじさんだった。ワードだけ聞くと怪しさマックスハートだが、実物を見てほしい。まず、顔がいい。とてつもなく顔がいい。若々しいイケメンと言うよりはイケオジよりの顔立ちである。次に、体格が良い。筋肉ヤバい。私の好きな筋肉の付き方をしている。最後に、服装が解釈一致すぎて困る。その顔にこの服装は解釈が一致しすぎてもう逆に怖い。何この人私を殺そうとしに来てんの?三つ編ってセンスも良すぎるし。

 結論。存在が推し。もうこの人は一生で推すって決めた。

 「じゃあそれ言ってくれた人正しいな。おじさん、ロクな人じゃないから」

 何その返し。優しすぎるでしょ。

 「おじさんの名前はアヌム=アンシャルだ。好きなように呼ぶといいサ」

 「じゃあおじさんのままで。おじさんは本当に魔法師団の職員なの?」

 「まだ疑ってたのか。さては嬢ちゃん、”シャドウラフ”の子だろ」

 うわ〜察しもいい。頭も良いとかもう最強だ、私の推し(最新)。

 「沈黙は是と受け取るからな。マ、逆に嬢ちゃんほど情報に警戒するとなると”シャドウラフ”以外ありえないんだよ」

 モロバレしてるわ。身元バレてるわ。流石推し。

 「…そうだよ。私は”シャドウラフ”に居る。おじさん、情報関連の職場なの?」

 「ああ、国際情報部署の部署長を任させてもらってる。嬢ちゃんは…寮長候補か?」

 ああっ、ちょっと勘違いしてる!それすらも良い、さすが推し。ギャップ萌えも完備とか最高すぎだろ!

 「いいや、私はそんなんじゃないよ。寮長には成れないんじゃないかな」

 おじさんがあまりにも素晴らしすぎる推しなので、ニヤつく顔を必死に抑えながら答える。少し表情はおかしくなってしまうが、致し方ない。

 「…そう、か。マ、仲良くしようぜ、嬢ちゃん」

 おじさんはそう言って手を差し出してくる。私は迷いなく、おじさんの手を掴んだ。

 「うん。よろしく、おじさん」

 連絡先くださいね、おじさん。

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