第23話 文化祭7
「演舞すごかったね」
「ああ、同じ学生とは思えねークオリティだった」
クロエとモームはそう話しながら体育館を出る。二人の脳裏には先程の演舞が再生されている。
次はどこに行こうか、と傍目から見たらカップルにしか見えない会話をしながら二人は計画立てをする。
「シーフワイトんとこはもう行ったしなー。クロエ、どこ行きたい?」
「特に無いんだよなー。もう各寮のブース順番に回ってく?」
行く先も決まり、二人は動き出す。次なる目的地”プラムディア”のブースを目指して歩きだし、そして、
「あ」
「おまっ」
演舞を終えたばかりのロキとエンギルに遭遇した。
ロキとエンギルはまだ上半身裸で、演舞によって体が火照っている。要するに、むちゃくちゃエロい状態だった。
「おっっふ…」
クロエがなんとも言えない声を漏らし、そっと手で目を覆う。その様子に気づいたモームはクロエの前に立ち、なるべく二人が見えないようにした。
「ロキ先輩とエンギル先輩、でしたっけ。上の服着てくれません?こっちには女子がいるんですけど」
そう二人に文句を言うと、ロキの方に反応があった。
「…お、まえは確か、うちの寮を壊そうとした奴だよな」
モームを、正確にはモームの後ろにいるクロエを指さし、苦々しげに言う。”え、そうなの”とモームはクロエの方を振り返るが、クロエは顔を手で覆ったままだった。
「……ぅ」
蚊の鳴くような声でクロエは呟くが、もちろんモームは聞き取れない。もう一度、と要求すると、クロエは顔を背けながら、なるべくロキとエンギルを見ないようにしながら、顔から手を話して言った。
「ち、がう…。寮は、壊してなぃ…」
兎みたい。
モームは真顔でそう思った。
「確かに、寮は壊してねえよ。ロキ、濡れ衣着せんな」
エンギルは我に返った後、ロキに言う。彼の言う通り、”殴り愛”のときにウルフシンの寮は壊されていない。壊されたのは、彼の体だ。
「…そうだったか?まあ良い。アシラルド、だったか。お前、この後時間空いてるか?空いてるなら、この後俺たちと__」
「それじゃ、オレたちはこれで。早く服着てくださいね!」
気を取り直すようにロキが何かを言いかけるが、モームが遮ってクロエを抱える。そして、すたこらさっさとその場を後にした。
体育館前に残ったのは、あっけにとられているロキと、どこかボーッとしているエンギルだけ。
「__ははっ、フラれたな、ロキ」
「楽しそうに言うなァ、エンギル。安心したんだろ、お前」
二人の目は、獲物を狙う肉食獣の目をしていた。
「モームありがと。あのままじゃ私変態に成り下がってた」
「クロエは筋肉好きだもんなー。オレがその事知ってたことに感謝しろよ?」
「するに決まってる」
__あぁ、本当に良かった。直視していたら、確実に変態になってた。よだれ垂らす、もしくは体をジロジロ見てたトコだった。
ロキとエンギルと別れた後の、クロエの心情である。
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