第35話 宝探し7 side.Kai

 「カイ、クー、”飛ばす”ぞ」

 いきなり副寮長が現れたかと思えば、次の瞬間には知らん場所にいた。

 「???」

 クーも何が起きたのか理解できておらず、俺と同じようにはてなを飛ばしている。とりあえず状況を理解したいので、副寮長に尋ねてみた。

 「…ここは”宝”がある場所だ。僕はイリヤに任されて二人を連れてきた。いいか、カイ、クー。何がなんでも、コレを守れ」

 そう言って副寮長が指したのは、何十にも重ねられたモニターの塊。

 よく見ると、寮長の魔法だと分かった。

 「分かりました。でも、どうやって守れば良いんですか?」

 心得たのか、クーがキリッとした表情になり、珍しく真面目に副寮長に聞く。クーお前、ちゃんと喋れるんだな。

 「今からココめがけて各寮の猛者どもが襲ってくる。二人は、何が何でも守れ。間に合ったら、僕かクロエ・モームが応戦に来るから」

 それまでは実働と、二人で頑張れ。

 「うそやん」

 副寮長の話を聞いて、最初に出た言葉だ。

 嘘だろ、各寮の猛者って狼の奴等みたいなやつがたくさん来るってことだろ!?俺とクーだけじゃ無理だっつの!”実働”も手伝ってくれるらしいけど、それでも何人かココに来るんだろ!?

 「副寮長」

 俺は副寮長の方を掴んで言った。

 「絶対に、援軍呼んでください」


 と言った俺の判断は間違ってなかったと思う。

 ____ゴウッ!____ヒュウッ!

 「嘘だろ嘘だろ嘘だろ!?こっち来んなヤメローッ!!」

 「もうヤダ拙者雲隠れしたい」

 副寮長が居なくなって数分後、副寮長が言ったとおり各寮のヤバい人たちが襲ってきた。全員が全員というわけではないが、バトルジャンキーな方も混じっているのでかなり苦戦している。

 「なあまだ?援軍まだ?」

 「早く来とくれモーム達…!」

 大体20〜30の人を相手にしている訳なので、泣き言を言うのは許してほしい。と言うか、相手の魔法で前髪を少し焼かれたんだから泣き言を言うのは当然だ。

 時間が過ぎれば過ぎる程相手の数は増える一方なので、このまま行けば押し負けてしまうことは明白だった。

 「__ 面白いことになってんじゃねえか、”影”」

 ほらまた一人増えた!狼の人が増えた!なんか背中に修羅背負ってんですけど!

 「…ちょいクー、あそこに修羅が居ねぇか」

 「居るね、間違いなく居るね。我ら、間違いなくボコボコにされるど」

 次々に襲い掛かってくる魔法をいなしつつ、クーと地獄の再確認をする。あの人相手にはもうクーの魔法がバレてしまっているので、俺の魔法を使うか地力で抑えるしか取れる手段がなかった。

 そうこうしている間にも攻撃の激しさは増していく。

 「 ___ったぁ!えいった!痛い!やめてよ拙者傷つきたくないって!」

 あまりの激しさに反応が遅れてしまったクーを狙って、シーフワイトが風の刃を飛ばした。俺もクーも反応できず、クーは負傷してしまう。

 「待って待って傷を中心に狙わないで!人の心がないんか!?負傷者を重点的に狙うな!」

 元気そうなので、クーは放っておこう。

 それにしても数が多い。特に狼の人達はめんどくさい。こいつらバトルジャンキーしか居ねぇ。


 「…へるぷみクロエ」

 うんざりしながらそういった俺の前に現れたのは、

 「はいどうも、最後の”嫌がらせ”に来ましたよっと。宝は取らせませんよ」

 「どうも皆さんの嫌いな”影”で〜す w」

 ニヤニヤ笑っているクロエとモームだった。

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