第31話 今年はもう…

大輝は、部屋の中に入り

俯きながら考えていたが、

大輝の中では、

若葉を応援しなきゃいけない

と、思う気持ちと

若葉を応援したくない

と、思う気持ちでごちゃごちゃだった。

でも、大輝の中では

今日見た光景がずっと流れていた。

応援しなくちゃいけない気持ちが

強くなっていった。

徐々に、気持ちも落ち着いていき

若葉を応援しようと

無理やりにでも思い込もうと考え始めた。

それからも、ずっと考えていたが、


「デートしていたんだから

応援するしかないよね。」


と、一人で勝手に決めてしまったのだ。


若葉に最初から聞いていれば

すれ違がう事もなかったが

嫌われたくない

傷付きたくない

間違いたくない

と、思うと本人には、聞けなくなってしまう。

防衛本能が働いてしまうのだ。

本人に相談する事は、

きっと他人が思うより

ずっと難しいのかもしれない。


気持ちを無理やり切り替えた大輝は、

シャワーを浴びて

スッキリする事にした。

母親が心配していたが


「大丈夫だよ!」


と、いつものように明るく答えた。


無理やり切り替える事で

気持ちも落ち着いて

感情をコントロールする事が

出来ていた。


部屋に戻り、携帯をチェックすると

若葉からメッセージが来ていた。

メッセージを見ても

落ち着いていられた。

返信をしてから眠る事にした。


明日は、母親と東郷さんと一緒に

一日過ごす予定だったので

今年の最後も若葉に会う事はない。

大輝にとっては、

ちょうど良かったのかも知れない。


なんとなく節目が欲しかった。

年越しに合わせて

自分の気持ちを偽る為の。


「年が明けたらしっかりと応援していこう!」



若葉は、家に入ってから

大輝の言葉ばかり思い出していた。

すぐにメッセージを送ろうと思ったが、

なんて送れば良いかわからなかった。

しばらく考え込んでいた。

考えれば考えるほど

わからなくなっていった。

考えていると

蓮からメッセージが届いた。


「今日は、楽しかったよ!

デートしてくれてありがとう!

また、一緒に出掛けよう!」


と、入ってきた。

やはり蓮は、

デートだと思っていたんだと思った。

若葉は、

友達と出掛けたくらいにしか

思っていなかったが

若葉以外の人から見たら

デートだったのかも知れない。

ここで、初めて気が付いたのだ。

若葉は、デートだったのだと

認識てしまったのだ。

大輝に、すぐにでも

デートじゃなかったと

言いたかったが

蓮が認めてしまっていた。

早く連絡をしなきゃと思いながらも

結局、クリスマスプレゼントの事だけを

連絡する事にしたのだ。

デートじゃないと思っていたのは、

若葉だけで

蓮は、デートだと思っていた。

否定するのも蓮に、

悪いと思ってしまった。

それに、弟のように思っている大輝に

デートじゃないと否定する理由も、

思い当たらなかったからだ。

気にしないように

無理やり思い込もうとしていたのだ。


「クリスマスプレゼント

渡したいんだけど会えるかな?」


と、だけメッセージを送った。

返信が来るまでに

お風呂に入って

急いで夕食を食べて

部屋に戻った。


「まだ今日なら渡せる!」


と、若葉は思っていた。

しかし返信が来たのは、

遅い時間だった。


「明日は、東郷さんが来るから

年明けでいいよ!おやすみ!」


と、だけメッセージが入っていた。

クリスマスプレゼントは

年明けでいいと言われてしまった。

若葉は、焦って返信を返した。


「明日、少しだけ行ってもいい?

渡すだけだから?」


と、送ったがその後に

返信が返ってくる事はなかった。

若葉は、


「せっかく家族になる前なのに

邪魔しちゃいけないよね…」


と、思い


「やっぱり年明けに渡すね!

明日は、三人で楽しんでね!」


と、メッセージを送った。


大輝から貰ったぬいぐるみを

抱き締めながら


「今年は、

もう大輝に渡せなくなっちゃったな…」


と、大輝にあげる

クリスマスプレゼントを見つめながら

寂しさに押し潰せれそうになっていた。



この一年で、

徐々に

すれ違いを

大きくしていったのだ。


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