第58話 冷静
公園で話し始めてから
蓮は、いつも以上に話していた。
若葉も流石に気付いていたが、
何も言わずに聞くことにした。
辺りも暗くなったので、
帰ることにしたのだが
「来週一緒に出掛けようよ?」
蓮が帰り際に言って来たのだ。
若葉も部活があるからと断ったのだが、
「部活が終わってからでもいいから
ちょっと出掛けようよ!」
と、いつもより強引に誘って来た。
若葉も断りづらくなってしまい
「少しだけならいいよ。」
部活が終わってから
出かけることになってしまった。
帰りは、蓮に送って行くと言われたが、
よる所があると言って断った。
別々に帰ることになり
若葉は、
家の方に向かって歩き始め、
いつもと違う道に入って行った。
よる所があったからだ。
千花と待ち合わせていたカフェに向かった。
いつも相談している時に使っているカフェだが
蓮が行かないようなカフェなので
知られる事はないはずだ。
千花が待っていたので、
急いでカフェの中に入って
「遅くなってごめん。
ごめんね付き合わせちゃって。」
若葉は、入ってすぐに謝った。
「全然大丈夫だよ。
でも白石君の勢いが凄かったね。」
若葉も同じ事を思っていたが
さすがに気疲れしてしまったのだ。
「ちょっと疲れたね。
でも、一生懸命話してくれてるのは良いんだけど
複雑な気持ち…」
若葉は、
蓮に対して失礼なことをしていると思っていた。
わかっているが、どうしようもなかった。
「これからどうしよっか?
白石君は、諦める気がなさそうだし
若葉の事を好きっていうのも
すごくわかるね。
でも若葉が自分の気持ちに気付いたのは
わかってるみたいだね。
いつもより必死にアピールしていたもんね。」
千花も、悩ましい所だ。
付き合う為の手助けをしてしまった以上は
無理やり断わらせる訳にもいかず
考え込んでしまった。
蓮も気付いているのか
千花には頼まなくなっていたのだ。
「今は、ちゃんと考えてみるよ。
蓮君にも失礼だと思うから
真剣に向き合ってみる。
大輝が好きなのは変わらないけど
今は蓮君に言われたように
ちゃんと蓮君の気持ちを受け止めて
真剣に考えてから返事してみる。」
若葉は、真剣に向き合い直す事を決意した。
「うちも出来るだけサポートはするから。
若葉も抱えすぎずにうちをちゃんと頼ってね?」
千花も若葉に託すことにした。
「ありがとう。」
そのあとも今後の事を相談しながら
話が続いていたのだ。
その頃、
蓮はどうすれば若葉の気持ちが
蓮に完全に向いてくれるのか考えていた。
自分でもどうしてここまで
若葉に執着するかわからないくらい
若葉を好きになっていたのだ。
「若葉が大輝に会わなくなれば
大輝への気持ちが薄れて行くんじゃないかな?」
思いたったら即行動
蓮は焦っているので
判断力が鈍っていたのだ。
「大輝にお願いがあるんだけどいいか?
若葉と付き合い始めたから
ちょっと心配で、
だから大輝も若葉と会ったり
連絡のやり取りを控えて欲しいんだ!
俺がヤキモチ焼きで
不安になっちゃうからごめんな。」
と、嘘の内容のメッセージを送った。
すぐには返って来なかったが、
しばらくしてから
「わかったよ!」
とだけ、返信があった。
蓮は、
これで若葉から大輝を
遠ざける事が出来ると思い
安心したが、
罪悪感も同時に感じていた。
だが、今の蓮にとっては、
どんな事をしても
若葉に好きなってもらいたかった。
冷静に考えれば、好かれるわけがないのだ。
若葉が嫌がる事しかしていないのだから。
蓮の気持ちばかり優先して
若葉の気持ちを考えていないのだから。
若葉と蓮のそれからの日常は、
前とは違うものになって行った。
蓮は今まで以上に積極的になり
若葉と常に一緒にいるようにしていた。
若葉も自分の気持ちには
正直になっていたが
蓮に対しても真剣に向き合っていた。
二人の距離感が微妙にずれていることには
周りのみんなは気づいていない。
仲が良くなったようにさえ見えていたのだ。
千花だけは、
危うさを感じていた。
若葉に対してもだが
蓮が、どんどん焦っているように見えた。
「このまま何もなければいいけど…」
心配だが、どうしようもない。
何かあった時に若葉を守る事だけは
常に意識していた。
千花は、大輝にも連絡しようと思ってはいるのだが
なんと連絡すれば良いのかわからなくなっていた。
とりあえず伝えられることは伝えようと思い
まずは大輝に簡単なメッセージを入れたのだが
返事が返ってこない。
次の日に返ってきたが、
「今は忙しいくてあんまり返せないからごめん。」
と、千花も避けられてしまっていた。
その後も同じようなことが続き
メッセージで今の現状を簡単に送ったのだが
「白石に聞いたからもう大丈夫だよ!」
と、最後は言われてしまった。
蓮がなんと言ったのかはわからなかったが
大輝にも上手く伝えられずに
千花は更に悩んでしまった。
若葉は、蓮と真剣に向き合うと決めてから
蓮をしっかり見るようになった。
確かに千花が言うように
前みたいな余裕が感じられず
常に焦ってみえる。
若葉に近くから決して離れないように
どこに行くにもついて来ていた。
学校では、
千花がなるべく一緒にいてくれたが
放課後などは、
蓮が待っていて二人きりの事がある。
怖いと感じてしまう事が増えて来たのだ。
千花にも相談して
なるべく二人きりにならないように
みんなと一緒に過ごすよう言われた。
部活が終わったあとに出かけた時も
蓮が、人がいない所ばかりに行こうとする。
人が周りにいなかったら何をするのか、
流石に若葉でもわかったので
必死に人がいるところにいるようにした。
蓮が、
この一週間で焦っているのは
目に見えてわかった。
これに耐えられるのかと思う程
蓮が積極的になっていったのだ。
若葉は、
あれから大輝に
一回だけ連絡を入れた。
だが、
「白石に疑われちゃうから
連絡はしなくて大丈夫だよ!」
と、言われてしまった。
大輝に嫌われてしまった。
そう思った若葉は、
ショックで耐えられそうになかったが
若葉自身が悪いので
今は、ちゃんと向き合って答えを出して
それから大輝に気持ちを伝えようと思ったのだ。
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